利便性という観点からも、金利の面でもインターネットバンキングが魅力的であるということに異論をはさむ人は少ないと思います。
実際、 各種の顧客満足度調査では概ねインターネット専業銀行が1位となっています。旧来の店舗型銀行のサービスがいまひとつというのはあると思いますが、それ以上にインターネットバンキングのベネフィットが大きいということでしょうね。
確かにインターネット専業銀行なら店舗がないために、人件費や店舗費が大幅に圧縮できます。利便性や金利が高まるのも当然と言えるのかもしれませんね。
その証拠に住信SBIネット銀行などを筆頭にどのインターネット専業銀行も順調に預金量を増やしています。ネット証券ほどではないにせよ銀行業界でも、旧来の銀行からネット銀行への世代交代が静かに進んでいる、ということになります。
そんなインターネットバンキングですが、あえてネックを述べれば、たとえばパソコンが使いこなせないと利用しづらいといった点や、クリック1つなので実感がわかない、取引は基本的に自己責任となるので利用者の責任が相対的に重い、といった点が挙げられますが、最近の動きで言えば「不正送金」が怖い、というのも付け加えていいかもしれません。
不正送金とは、分かりやすそうでちょっと分かりにくい言葉ですが、要するに、何らかの方法で犯人側が銀行利用者の口座番号、暗証番号、それに乱数表の番号を入手して、本来の預金者に代わり、自分が管理する口座に勝手に、不正に送金してしまうことですね。
不正に送金されたお金は「出し子」と呼ばれる犯人グループの末端のメンバーに出金されてしまうのが通例で、最終的には口座から引き出されて盗まれてしまう、ということです。
しかしよく考えると不思議なのは、どうやって乱数表の番号を犯人が知りえるのか、という点です。というのも乱数表のカードは預金者の手元にあるので情報を盗みようがないからです。
この情報の盗み方は結構アナログで、通常は
・銀行を装ったメールが届くか(=フィッシングメール)
・銀行を装った画面が表示されるか(=不正ポップアップ画面)
の2種類で、いずれにせよそこには
・キャッシュカードの再発行が必要なのでログインしてください
・口座認証が必要なので必要情報を入力してください
・あなたの口座に不正アクセスがあったので至急、口座情報をチェックしてください
といったような内容が言葉巧みに記載されており、そこからアクセスすると本物ではない偽のログイン画面が表示され、ログインしようとすると最終的には「乱数表の全マス」を入力するよう促してきます。
ダラダラ書きましたが、大事なポイントは最後の「乱数表の全マスを入力するよう促してくる」、という点ですね。
いくらウイルスでパソコンを乗っ取られても、パソコンには目も手も足もないわけで、そのままでは預金者の手元にある乱数表の情報を奪うことは物理的に不可能です。
結局は預金者自身を騙して、乱数表情報を入力してもらうしかないわけで、何があっても「乱数表の全マスを入力しない」と強く誓うことがこうした不正送金を防ぐ、最も基本的かつ、最も効果的な防衛方法となります。
それ以外にも、預金者のパソコンと銀行のサーバとの間に入って預金者がログイン中に不正送金してしまうという、より高度な手法が解説されていることもありますが、あまり報道されていないところを見るとそれほど脅威ではなさそうです。
もちろんそうした場合でも送金時に乱数表の入力が必要な仕組みの場合にはやはりそこでブロックされてしまいますからね。
事実、上記記事によれば、2013年4月から12月の9ヶ月の間で発生した不正送金の規模は593件/6億81百万円となっており、インターネットバンキング契約の総数は少なくとものべ2,000万〜3,000万口座くらいはあるでしょうから、そこから比べれば天文学的な少なさです。
最悪期には100億円を超えた「オレオレ詐欺」と比較しても2ケタ少ないわけで、やはりそれほど恐れすぎる必要はなさそうです。
とは言いつつここ最近、件数が急増しているのも事実で、年度ベースで言うとこのような推移となっています。
・2009年度 : 18件
・2010年度 : 35件
・2011年度 : 87件
・2012年度 : 106件
・2013年度 : 593件
つまり倍々ゲームで増えているわけですね。2007年度に159件と悪化したこともあったようですが、今年度はそれを大きく上回る最悪ペースです。
これはおそらく中国などにいると思われる犯人グループが日本を狙い始めたという、犯人側の動きが大きいと思いますが、最新のセキュリティソフトをインストールする、最新のOSに更新する、といった機械側の対策に加え、やはり上記の通り「乱数表の全マスを入力しない」という自衛意識・防犯意識が重要ですね。
ただし。
今のところ、仮に被害にあったとしてもこうした不正送金が実はそれほど怖くはない理由が1つあります。
それは銀行が積極的に救済し、被害額を補償してくれているからですね。
上記記事にあるとおり、2013年10月〜12月期における不正送金件数223件のうち、銀行側の対応が決定したものが92件あるわけですが、その中で預金者の被害額を補償したケースは92件、つまり100%補償されているのですね!
こうした点は銀行のルール重視・前例重視・横並び重視の姿勢が預金者に有利に働いた結果と言えそうです。もちろんメガバンク1行だけで数千億円ともなる銀行の利益水準からすれば、全体で数億円の被害の補償など何の問題もない、という現実的な計算もあるとは思いますが。
そんなわけで、今のところは不正送金被害の発生確率がそもそも天文学的に低い上に、被害額をほぼ銀行が補償してくれており過度に恐れる必要はありません。
しかしながら、それはあくまで被害者に重大な過失がない場合ですね。たとえば・・・
・セキュリティソフトがインストールされていない
・OSが更新されていない
・安易な暗証番号を利用している
・乱数表をパソコン内に保存していた
といったケースでは今後は救済されないことも考えられます。あくまで推測ではありますが。
そんなわけで、他力本願ではなく、まずは預金者自身が被害に遭わない努力をすることが重要ですね。もちろん、そうした努力に見合うだけの定期預金金利や利便性の魅力がインターネットバンキングにはあると思います。参考になさってください。
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