当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはLCレンディングですね。「ソーシャルレンディング」を謳っておりますが、上記の通り運用利回りは5%〜8%ということでなかなか魅力的です・・・本当であれば。
記者の心の中ではすでにこの「高すぎる運用利回り」を見て警報が鳴り始めておりますが、とは言いつつこのLCレンディングが他の怪しげなクラウドファンディングと一線を画す点が2つあります。
1つ目は、日本初のソーシャルレンディングサービスであり、最大手でもあるmaneo社が推奨している点ですね。実際にこのLCレンディングのHP下部にはこのような注意書きがあります。
取得勧誘はmaneoマーケット社が行うとはっきり記載されております。
2つ目はこの投資ファンドを実質的に運営しているのがロジコム社であり、同社はJASDAQに上場している上場企業であるという点ですね!
この2社の組み合わせは確かにそれ以外の会社情報が全く開示されていない投資ファンドと比べれば相対的に透明性が高いのは間違いありません。
そんなわけで早速、ロジコム社の出来立てホヤホヤの2016年3月期の決算を見てみるとこのようになっています。まず連結決算は前年度と比較するとこうですね。
・売上 : 64.9億円 → 68.9億円
・営業利益 : 3.6億円 → 2.2億円
・経常利益 : 0.3億円 → −3.6億円
・当期利益 : 3.2億円 → 12.1億円
ぐは!経常利益が赤字ではないですか・・・。特別利益のおかげで当期利益はプラスを維持していますが、特別利益はあくまで「特別な利益」なのであって通常は1回こっきりです。
つまり「本業は赤字」ということですね。
さらに営業利益で黒字なのに経常利益が赤字ということは「営業外利益が赤字」ということであり、営業外利益が赤字ということは大抵、「支払利息が大きすぎる」ことを意味します。要するに「投資家から高い金利で資金を集めたために支払利息がかさんで赤字に転落した」と第一印象では感じるわけですが、先を急がず、次に単体決算をチェックしてみることにします。単体決算にはこのLCレンディングの決算は含まれていないと理解しています。
・売上 : 50.9億円 → 49.4億円
・営業利益 : 2.4億円 → 1.3億円
・経常利益 : 1.8億円 → 0.8億円
・当期利益 : 1.1億円 → 0.8億円
こちらは一応黒字を維持していますが、それでも退潮著しいですね。少なくともLCレンディングをバックアップできるほど十分な利益が出ているようにはとても見えません。
また、上記連結決算からこの単体決算を引くと、LCレンディングを含めた子会社のみの損益状況が把握できるわけですが、こういうことですね。
・売上 : 14.0億円 → 19.5億円
・営業利益 : 1.2億円 → 0.9億円
・経常利益 : −1.5億円 → −4.4億円
・当期利益 : 2.1億円 → 11.3億円
つまり前々期も経常利益が赤字だったことに加え、前期も大幅に経常赤字が増加したことになります。もはや8,000万円程度の親会社の黒字では全く穴埋めできないレベルまで拡大している、ということですね。
ちなみに今期=2017年3月期の連結決算の経常利益は−4億円との予想であり、残念ながら連結決算で見る限り、このまま存続していくのは極めて厳しいと言えそうです。大幅なリストラが必要となるのでしょうね。
さてこの赤字の理由としては上記の通り第一印象で「投資家から高い金利で資金を集めたために支払利息がかさんで赤字に転落した」と感じたわけですが、連結決算の営業外費用の欄を見てみると主にこうなっています。
・支払利息 : 3.2億円 → 5.7億円
・資金調達費用 : 0.2億円 → 1.9億円
つまり案の定、利息が膨らんでいるわけですね!この2つだけで4.2億円もコストが膨らんでいることになります。
経常利益が0.3億円から−3.6億円の赤字に転落した理由はこれで説明できてしまう、ということです。
ちなみに負債総額はこのように推移しています。
・負債計 : 199.2億円 → 222.8億円
そして「支払利息+資金調達費用」はこのように推移しています。
・利息+費用 : 3.4億円 → 7.7億円
ものすごくざっくり計算すれば、前々期の借入利率が1.7%だったのに対して、前期は3.5%に急上昇した、ということですね。
これだけ金利が上昇すれば損益が悪化するのは当然かもしれませんが、忘れてはいけないのはLCレンディングは運用利回り5%〜8%を約束しているのですね!
つまりmaneo社が頑張り、LCレンディングが資金調達をすればするほどこの 「支払利息+資金調達費用」が増え、赤字が拡大していくことが予想されます。
そもそも資金調達コストが1.7%でギリギリ黒字を維持してきた企業グループから、「投資家に5%〜8%のリターンを払っても儲けを出せる」と言われても、説得力はないですよねぇ。
もし本当に8%を超える運用ができるなら、割高な投資マネーに頼るのではなく、「自己資金+銀行借り入れ」で賄った方がよっぽど利益が出るわけで合理的ですね。
そもそも赤字に転落している時点で、「何かが間違っている」わけですが。
結局のところ、いくらソーシャルレンディングの草分けであるmaneo社が推奨・販売していたとしても、いくらジャスダック上場企業が運営していたとしても、「運用のアヤシサ」という点では何の足しにもなりません。
と言うかmaneo社は自社が推奨・販売している商品について、一切審査をしていないということですね!ロジコム社だっていきなり赤字になったわけではなく、3ヶ月毎に決算を開示しているわけですから、おそらくこのレンディングビジネスがうまくいっていないのは誰の目から見ても明らかだったのではないかと思います。
それでも販売を継続しているわけですから、万が一のことが起きた場合にmaneo社に対しても一定の責任が問われることになるのでしょうね。レセプト債を販売した証券会社は軒並み業務停止命令などが出たと思いますが、そうならないことを祈っております・・・。
ただ個人的にはこのように財務状況を公開してくれたおかげで、クラウドファンディングの実態が垣間見えて大変勉強になりましたが。要するに「やっぱりね」ということです。
そもそも都心の一等地のオフィスビルの運用利回りでさえ、最近は3%台ですよね?さまざまな営業経費を払ってもなお、投資家に5%〜8%のリターンを残せる「わけがない」というのが正直な感覚です。
投資を検討されている方はぜひこうした財務状況を自分自身で精査した上で、リスクを判断していただければと思います。
参考になさってください。
では最後に、あくまで一般論ですが、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
定期預金に関するあなたのクチコミを教えてください。クチコミは人気銀行を中心に順次掲載いたします。 メールの場合はこちらから |