本日、何ともなしに投資関連のニュースをチェックしていると、「多額の出資金だまし取った疑い 投資関連会社社長を逮捕」という記事を見かけました。NHKニュースから引用するとこういうことのようです。
・東京の投資関連会社の社長が「自動売買システムを使うので、リスクはほとんどない」などと言って自社のファンドに出資させ、3億7000万円をだまし取ったなどとして逮捕されました。この会社は同様の手口で去年までの6年間に100億円以上を集めていたということで、警視庁は巨額詐欺事件と見て全容解明を進める方針です。
別のニュースによれば被害額は113億円にも上るようですね。なんともやるせない話です。
しかも、やりようによってはそれくらい「稼げる」のだとすれば、投資詐欺が無くならないわけですね。もちろん、そうした詐欺を働いて逃げ切れるわけではありませんが、しかし欲に目がくらんで出来心が生まれてしまう可能性というのは記者も含め全くのゼロ%ということではないと思います。
預金者1人1人の高い防犯意識が重要ですね。要するに決してうまい話には乗らない、ということです。
そうした点からもこの投資会社である 「クエストキャピタルマネージメント」の詐欺被害から学ぶべき点はありそうですが、まず宣伝文句としてはこういうことだったようです。
・商品の一時的な価格差を利用した売買で利益を得る手法=アービトラージを行うので、リスクはほとんどない
・自動売買システムを使うので、リスクはほとんどない
「○○なのでリスクはほとんどない」というのは、こうした投資詐欺の基本的なフォーマットのようですが、見破るのは簡単ですね。仮にリスクがほとんどないのであれば、リターンもほとんどないはずです。
リスクとリターンは比例しており、リターンの源泉はリスクですからね。もし「リスクは少ないけれど、リターンは多い」と言うなら間違いなく詐欺です。そんな投資はありませんし、仮にあったとしても自己資金で十分な利益を得ることができます。
個人投資家からお金を集めて、高利の配当を返す必要など一切ありません。
では次にこの「クエストキャピタルマネージメント」 に対する当局の対応ですが、実はきちんとアラートを出しておりまして、1年半以上前に証券取引等監視委員会が以下のように発表しております。
・当社は出資金について、投資対象事業による運用をほとんど行っておらず、したがって、運用収益が発生していないため、契約上は分配を行わないものとされているにもかかわらず、出資金を原資として、配当金を定期的に支払っているほか、他のファンドの配当金及び償還金に出資金を流用している。
運用をほとんど行っておらず他のファンドに流用している、というのはなかなか衝撃的ですが、完全に「投資詐欺」だったということですね。
こうした金融庁の調査が今回の逮捕につながったものと思われますが、しかしここで大きな疑問を持つかもしれません。
それは、2015年3月に明るみに出た「投資詐欺」による逮捕が、なぜ2016年8月までかかったのか、ということですね。繰り返しになりますが1年半以上経過しているわけで、明らかに「遅すぎ」です。
それだけ時間があれば詐取したお金を隠したり、第三者に譲ったり、高飛びしたり、姿を隠すこともできそうです。
また、別の投資詐欺を起こすことも可能だったかもしれません。
そうした恐れがないからこそ、ここまで時間がかかったのかもしれませんが、もし一般的に投資詐欺の立件に長い長い時間がかかるとすれば、投資資金が棄損する可能性は格段に高まることになります。
要するに警察はすぐには助けてくれないのだとすると、やはり自分のお金を守るのは自分だけ、ということですね。肝に銘じておきたいものです。
なお、このクエストキャピタルに関するネット上の記事を読み進めていくうちに以下のような興味深いコメントを目にしました。引用するとこういうことですね。
・警察が事件性を疑う要素として以下4点があります。
1.無資格(無免許無登録)
2.元本保証
3.約束配当(利益は必ず出る)
4.偽装運用(捜査が必要なため初期発見は難しい)
組み合わせとしては、
1.有資格+無保証+実績配当で資金がなくなった場合 : 警察はまったく相手にしてくれません。
2.有資格+元本保証+約束配当 : 話は聞いてくれます。つまり偽装の疑いまで考慮してくれます。
3.無資格+元本保証+約束配当 : かなり話を聞いてくれるはずです。こんな連中はほぼ偽装運用の疑いがあるからです。4点揃うと警察は立件が視野に入ります。
では、4.無資格+無保証+実績配当では?
このケースは意外に多いのですが、スキームが正常であれば金融商品取引業違反のみですので、これも、相談には乗ってくれますが、あまり前向きではない感じです。
ただ、一つ言えることは、被害が甚大で社会性に富んでいる場合は、警察介入の確率は高まります。
また、一方(逆)で、投資案件を謳った1件の被害だけでも確定的要素があれば、立件されます。
どのような判断をするのかは警察次第で、管轄や担当、抱えている事件(忙しさの度合い)などで警察の対応は特定できません。
私が知る限り、被害者の会を作り、民事訴訟も含め、報道騒ぎになればほぼ確実に警察は動きます。
警察に行く場合は、
1.投資資金を振込んだ銀行の所在地を管轄する警察署へ
2.関係者に手渡ししたなら手渡しした時の場所を管轄する警察署へ
3.投資先に持参したならばその業者の住所地がある警察署へ
最寄りでは、相手にしてくれませんよ。
法曹関係者、もしくは警察関係者かと思わせるかなり具体的な見解ですね!とても参考になります。
ポイントとしては冒頭の「無資格かどうか」「元本保証かどうか」「配当を約束しているかどうか」の3点ですね。
その点で言うと、これまで当サイトが扱った怪しい投資案件は投稿者の方も指摘されているように、おおむね「無資格+無保証+実績配当」が多かったような気がします。
つまり、
・(元本保証ではないけれど)これまで一度も損失をしたことがありませんよ。
・(配当を約束するものではないけれど)これまで○%の配当を出していますよ。
ということですね。だとすると警察はほとんど動かない、ということになりそうです。
こうした宣伝文句の中で特に問題なのは「○%の配当」という部分で、多くのケースで実質的に虚偽と思われますが、しかし上記の通り偽装運用は初期発見が難しいとなるとやはり警察は動きません。
投資詐欺立案者は実にうまく立ち回っているということですね!
ほめている場合ではありませんが・・・。
さらに被害額が少ないとなると尚更ですね。上手な投資詐欺の方法としては3億円〜5億円くらい集まるとクローズして次の投資詐欺を立ち上げる、というのがよさそうです。今般のクエストキャピタルも100億円以上「集めてしまった」ために立件された、と言えるのかもしれません。
・・・と、何だか投資詐欺を指南する形になっておりますが、しかしまずは敵を知ることですね。知識はとても大切です。
いずれにしても「思ったほど警察はあてにならない」というのは間違いなさそうです。職務怠慢というわけではなく、他の生命の危険があるような事件の捜査に忙しいということなのでしょう。
繰り返しになりますが、「自分のお金は自分で守る」という強い気持ちが大切と言えそうです。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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