長らく低金利が続き、最近でこそ落ち着きましたが、大手銀行がバンバン破綻していた90年代後半から、新聞やメディアなどで取り上げられるようになった言葉が「タンス預金」です。
タンス預金と言ってももちろん満期になればタンスが届く、といった類のものではなく、文字通りタンスの中で預けておくお金、つまり「銀行に預けずに家の中で現金で持っている資金」という意味ですね。
なぜ「おうち預金」や「引き出し預金」ではなく、「タンス」なのかは気になるところですが、そこにはあえて踏み込みませんので、ご興味がある方はぜひ調べてみてください。
さてそのタンス預金ですが、メリットはシンプルですね。銀行に預けておくと、その銀行がつぶれてしまえば、簡単に下ろせないばかりか、預金保険の上限である1,000万円超の部分については、毀損してしまう可能性が極めて高いからです。
要するに銀行預金だと、銀行が破綻した場合に残高1,000万円超だと全額戻ってこない可能性が高いので、そうしたリスクを取るくらいなら、自宅に保管してしまおう、ということですね。
特に過去、取り付け騒ぎにより、銀行が次々破綻した体験を持つシニアな方々はこうしたタンス預金を好む傾向があると言われています。
とは言いつつ、もちろんこうしたタンス預金にはデメリットもあり、まず1つ目は利息がつかないということですね。定期預金などにしておけば、いくらかの利息が定期的に支払われるわけですが、タンス預金の場合は1円たりとも増えません。
ただし、上記の通り低金利が続き、金利の前にゼロがたくさん並んでいる状況では、そもそも大した利息はつかないわけで、実際に計算してみるとデメリットというほどの不利益はない、と考える人は少なくなさそうです。
2つ目のデメリットは「防犯に弱い」という点です。タンス預金だからといって、実際に「タンス」に預けている人は少数派だと思いますが、金庫にしまうにせよ、床下に隠すにせよ、現金が物理的に家にある以上、銀行で大切に保管されている資金(実際に銀行内にキャッシュで保管されているわけではありませんが)に比べれば、格段に盗みやすくなります。
お金に色はついていませんので、盗まれたが最後、それを取り戻すのはかなり困難です。
ちなみにここ10年以上、銀行強盗事件を聞いたことがありませんね。世の中平和になったのか、銀行のセキュリティが堅くなったのかは分かりませんが、良い傾向だと思います。
さて3つ目のデメリットとしては「災害に弱い」という点が挙げられるかもしれません。
もちろん現金の方が、いざという時に下ろせないかもしれない銀行預金より便利であり、災害に強いという考えもあるかもしれません。ある意味、それは正しいのですが、ここで言う「災害」とは、津波や地震、土砂災害、火災などによって「タンス」ごと流されたり、埋まったり、燃えてしまうケースですね。
いくら所有権は維持されても、遠くの海を漂っていたり、土深く埋もれてしまえば、使うことはできません。
実際、東日本大震災では、持ち主の分からない現金や金庫が結構な量、流されてしまったようですね。こうした教訓は記憶にとどめておくべきかと思います。
そうやって書いていくと、やはりタンス預金はデメリットが大きく、銀行の破綻が落ち着いた今、そのメリットが相対的に薄まっていることを勘案すれば、銀行預金の方がはるかに良いと感じるかもしれません。
実際のところ、記者もその通りではないかと思いますが、タンス預金のメリットを敢えてもう1つ付け加えるなら、「キプロス型の金融救済スキームではタンス預金が有効だった」という点ですね。
ユーロ危機の煽りをうけて金融危機に陥ったキプロスに対して示された救済スキームは「預金の一律カット」という壮絶なものでした。
結局、対象は10万ユーロ以上(約1,300万円以上)の預金に落ち着き、そのカット率も47.5%と、当初想定されていたものよりはマイルドなものとなりましたが、それでもあっさり高額預金の残高の半分が実質的に召し上げられたわけですから過激なスキームだったのは間違いありません。
もちろんそれを、遠くの体力の弱い小国の話と片付けるのは簡単ですが、日本にはそれを他人事とできない莫大な国の借金があります。当然、キプロスよりもはるかに多い借金があります。
もし仮に日本が財政破綻をし、キプロス型の救済スキームが策定されるのであれば、同じ様に高額の定期預金の相応の部分を国の借金返済のために召し上げられる可能性は十分あります。
銀行が破綻しなくても、国が破綻してしまえば、ペイオフのような状態になる可能性がある、ということですね。
そんなことにならないよう、そして、わざわざ犯罪や災害のリスクを取ってまで、タンスに現金を保管しなくてすむよう、国はしっかり借金返済の道筋をつけてほしいと思います。
もちろん、政治をそういった方向性に持っていくことができるのは、他の誰でもない、われわれ国民自身であるのですが。
参考になさってください。
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