定期預金の金利について、「高ければ高いほどいい」という考え方に異論を唱える方は少ないと思います。
もちろん現実的には、高すぎる金利の裏側にはなんらかのリスクが隠れていると考えるのが大人の分別とは言えますが、しかし定期預金に限って言えば1,000万円とその利息は預金保険によって完全に守られています。
つまり完全にリスクがゼロなわけで、リスクがゼロなのであれば上記の通り、定期預金の金利は高ければ高いほどいいという考え方は正しいですね。0.1%より0.2%、1.0%より2.0%の方が有利なのはもう小学生でもわかる!と思われるかもしれません。
ただし。
もちろん正しい場合が多いのは事実ですが、実は時には正しくない場合があります。つまり定期預金の金利が0.2%より0.1%、2.0%より1.0%の方が有利な場合があるのですね。ではそれは一体、どんな場合でしょうか?
こ れは、それぞれでインフレ率が異なる場合ですね。
インフレについてはこちらの記事でも触れましたが、物価の上昇率のことです。
>>>インフレ、デフレ。定期預金金利はどちらがお得?
たとえば1年に1%ずつ物価が上昇しているような場合は、物価上昇率=インフレ率:1%と表現されますが、これは裏返せば、1年に1%ずつお金の価値が失われていることを意味します。
牛丼を例にとると、今年は300円だった並盛りが、1年後には303円になっているイメージですね。物(牛丼)の値段がまさに1%上昇したわけですが、同じ300円で買えなくなったということは、言い換えればそれだけお金の価値が下がった、ということなのです。
これを定期預金金利に当てはめると、仮に1.0%の金利がついたとしても、インフレ率が1.0%なら同時に元本1%分の価値が失われているわけで、差し引きゼロ。実質的に元本は全く増えていないことになってしまいます。
牛丼で説明すると、300円を定期預金に預けて1年後に303円になったけれども、牛丼も303円に値上げされていたので、やっぱりちょうど一杯分しか買えなかった、というようなシチュエーションですね。
つまり。
定期預金の金利のお得度を計る上では、ベースとなるインフレ率を考慮にいれた「実質金利」を計算してあげる必要がある、ということなのです。
具体的にはこういうことですね。
・実質金利 = 表面金利 − インフレ率
日常生活においては「A銀行の方がいいか、B銀行の方がいいか」と比べるようなケースが多いと思いますが、そうした場合はベースとなるインフレ率は全く同じなので、こうした実質金利を意識する必要はありません。
しかしながら異なる時期の定期預金のお得具合を比較するならこうしたインフレ率を考慮に入れる必要がありますね。
たとえば以下のようなケースが考えられます。
・インフレ時 : 表面金利6%、インフレ率5%
・デフレ時 : 表面金利1%、インフレ率−1%
パっと見れば「6%の方が断然有利」に映りますが、実質金利を計算してみると、前者が「1%」なのに対して、後者は「2%」となり、むしろ「6%より1%の方が有利」という結果になるのですね。
実際のところ最近のデフレ経済の下では、定期預金の実質金利がバブル期よりも有利なタイミングがそれなりにあったのではないでしょうか。
そして現実的には、こうした「実質金利を比較する」という姿勢がより重要になってくるのが外貨預金の場合です。
外貨預金はもちろん、外国の通貨を購入して預ける預金ですが、外国の通貨は通貨ごとにインフレ率が異なります。
「高金利通貨」と言われると、オーストラリアドルやニュージーランドドル、ブラジルレアル等をイメージする方は多いと思いますが、実はこうした「高金利通貨」のほとんどが「高インフレ通貨」でもあります。
つまり、見た目ほど実質金利は高くない場合が多い、ということですね。具体的なイメージはこのような感じです。
・高金利通貨 : 表面金利5%、インフレ率4%
・低金利通貨 : 表面金利0.5%、インフレ率−0.5%
言わずもがなですが、どちらもインフレ率を引いた「実質金利」は同じ1%となります。そして実際に通貨ごとに実質金利を計算してみると、それほど大きな差がないことに気がつきます。
表面金利が高くても意味がなく、大切なのは実質金利がどうなのか、という点ですね。
投資や資産運用の世界では、こうした「表面利回りはいいけれど、実質利回りはそれほどでもない」というケースが山のようにあります。常に「実質的な金利はどうなんだろう?」と疑問に思う姿勢と、もし実質的な金利がわからなければ手を出さないという慎重なスタンスの2つが重要と言えます。
参考になさってください。
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