前回のこちらのコラムでは、金利の有利さを比較する場合には常にインフレ率を考慮しないといけない、という点をご案内しました。
>>>表面金利が高くても意味がない!?定期預金の実質金利に注意
たとえば1年に1%ずつ物価が上昇しているような場合は、物価上昇率=インフレ率:1%と表現されますが、これは裏返せば、1年に1%ずつお金の価値が失われていることを意味します。
つまり、定期預金の金利のお得度を計る上では、ベースとなるインフレ率を考慮にいれた「実質金利」を計算してあげる必要がある、ということなのです。具体的にはこういうことですね。
・実質金利 = 表面金利 − インフレ率
現実的に、こうした視点が特に重要になってくるのが外貨預金の場合です。
「高金利通貨」と言われると、オーストラリアドルやニュージーランドドル、ブラジルレアル等をイメージする方は多いと思いますが、実はこうした「高金利通貨」のほとんどが「高インフレ通貨」でもあります。
つまり、見た目ほど実質金利は高くない場合が多い、ということですね。具体的なイメージはこのような感じです。
・高金利通貨 : 表面金利5%、インフレ率4%
言わずもがなですが、インフレ率を引いた「実質金利」は1%となります。日本の金利とそれほど大きな差はないですね。表面金利が高くても意味がなく、大切なのはインフレ率を考慮した実質金利が高いかどうか、という点なのです。
今回のこちらのコラムでは「定期預金と外貨預金、どっちが有利?」というものですが、上記の通りすでにこの段階で、外貨預金の雲行きが少し怪しくなってきているのが分かるかと思います。
世界的に金利の低下が進む現状でも金利が2〜3%となる外貨預金はありますが、そうした国のインフレ率はやはり1〜2%はあるわけで、インフレ率を控除した実質金利はこの場合は1%程度ということになり、少なくとも表面金利ほどの旨みはない、ということになりますね。
一方、日本の場合、下手をすればインフレどころかデフレの場合もあり、仮にデフレが年−1%となら、仮に定期預金の金利が0.30%でも、実質的な金利は1.3%になるわけで、それなら日本の定期預金の方が有利、というちょっと笑えないようなことが容易に起こりえます。ご注意ください。
さらに。
外貨預金を検討の際、そのようなインフレ・デフレといった物価の動向に加えて、考慮しないといけない点が少なくとも、あと2つあります。
1つ目は、為替相場=為替レートの動きです。
外貨預金の損得を考える場合、利率の多寡よりも為替レートの動きの方がはるかに重要です。為替相場はたった1日で1%以上動く場合がよくあります。
つまり、外貨預金でいくらコツコツ利息を蓄えてみても、ちょっと円高になればそうした利息は為替差損によって簡単に吹き飛んでしまうのです。したがって短期的にも中長期的にも為替の動きを予測しておくことが重要です。
では為替相場はどのようなメカニズムで動いているのでしょうか?
これは実はなかなか難しい質問で、需要と供給に基づいた実需もあれば、各国の金融・為替政策の影響、はたまた機関投資家の投資スタンスや、ヘッジファンドやFX取引などの投機的な動きなど、いろいろな要因がからまりあっていますので、一概に答えることができません。
ただその中でも、最も普遍的なメカニズムは、ここでも出てくるのですが、インフレの影響で、つまり中長期的に見れば、
・インフレの通貨は下落し、デフレの通貨は上昇する
ということなのです。 これは日本円と米ドルの関係を思い出せばすんなりイメージがわくと思いますが、1ドル=360円の時代から2012年の80円を超える円高まで、概ね一貫して円高が進んできたわけですが、この間、同じく一貫して日本円は金利が低下し、デフレ経済へと沈み込んでいったのですね。
インフレというのは冒頭ご案内したように徐々にお金の価値が失われていく状態を指し、インフレ率が高い通貨ほどお金の価値の目減りが早いわけですから、そうした通貨の為替レートも同時に下落するのは当然といえば当然です。
そして日本円といえば目下のところ最強のデフレ通貨なわけですから、インフレに転換しない限り、短期的にはともかく中長期的に見れば、上昇する=円高となるのもまた当然なのですね。
つまり、高金利に引かれて外貨預金を利用したとしても、まずインフレによって実質金利がかなり減少してしまうことに加え、中長期的には円高により為替差損まで発生してしまうためにダブルで利益を出しにくい構造になっているといえます。
2つ目は為替手数料ですね。
上記の通りインフレ率や円高によりただでさえ実質的なリターンが目減りしやすいことに加え、往復で元本の2〜5%の為替手数料を取られてしまうと、儲けを出すことが極めて難しくなります。
実際のところ外貨預金の運用がうまく行ってお金持ちになった人の話など聞いたことがありません。
やはり日本円のような極端なデフレ通貨が母国通貨の場合は、外貨預金で利益を出すのはなかなか難しい、ということですね。
とはいえもちろん、外貨預金で運用するメリットがないわけではありません。
外貨預金を利用するなら、儲かるか儲からないかと言った投機的な視点で見るのではなく、あくまで分散投資や資産防衛といった観点から、リスクに強い資産構成にするための手段の1つとして、ご検討いただければ良いのではないかと思います。
参考になさってください。
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