みなさんよくご存知のように定期預金は元本保証です。文字通り元本が保証されているわけですが、なぜそのように謳えるのでしょうか?
それは預金保険制度という公的な仕組みが「預金者1人あたり元本1,000万円とその利息まで」を保証すると約束しているからですね。逆に言えば元本1,000万円を超える部分については元本保証とは言えないということになります。
日本で初めてこの預金保険制度の枠組みの中で「ペイオフ」が発動されたのは日本振興銀行の破たん処理においてですが、この時でも1,000万円を超える部分は保護されない一方で、1,000万円以下の預金についてはきっちり守られました。
このように「国が守る」と裏付けされているもののみ「元本保証」を名乗ることができるわけですね。
国が保証するという点では「国債」もまた、国がその元本と利息を保証しているわけで、その信用力は預金保険制度に準ずるものと言えます。しかしそんな国債ですら「元本保証」を名乗ることはできません。と言うのも実際に国の財政が傾き返済がままならなくなった場合には、通常、「元本返済の停止」や「利下げ」の交渉が行われるからですね。
ギリシャやキプロスなど実際に財政破綻した国がよい例ですが、いずれの場合も支払負担の軽減が行われました。これは言い換えれば両国の国債を保有している債権者が譲歩したからであり、国債については常にそうした「当初の約束通りお金が返ってこない」リスクと隣り合わせということになります。高い信用力を誇りながらも「元本保証」と言えないのはこうした点からですね。
しかし一方で世の中の金融商品を眺めれば「元本保証っぽい」、いわば「元本保証モドキ」の商品がいくつもあることに気づきます。そのもっとも典型的な例が「元本確保」と謳われている商品群でしょうか。
「元本保証」と「元本確保」・・・響きはよく似ていますし、どちらも「安全そう」な感じがするわけですが中身は全く異なります。具体的に思いつくものを挙げていきたいと思います。
1.元本の大部分は国債などで運用し、限定的な割合でのみリスクを取った運用をする商品
こちらはもちろん元本の大部分が安全資産で運用される分、安全度合は相対的に高いとは言えますが、上記の通り国債ですら「元本保証」ではない以上、それより大きいリスクを抱えた商品と言えます。
2.元本の大部分に保証・保険などをつけ、万が一の場合はそちらで穴埋めできる商品
こちらも相対的には安全性が高いと言えますが、保証している会社・保険を提供している会社の信用力は完全ではありません。少なくとも国が保証する預金保険制度と比べれば大きく劣る裏付けと言えます。
3.元本の大部分に担保などの現物資産をつけ、万が一の場合はそちらの処分で穴埋めできる商品
こちらも安全性は高いですが、その現物資産を売却した場合に本当に元本がカバーできるのかどうかは事前にはわかりません。やはり元本保証とは程遠い商品です。
4.元本の一定割合は発行体が保有し、万が一損失が発生してもその発行体保有分から充当することで、顧客に損失が発生しにくい商品
安全性についてはこちらも同様ですが、しかし損失が発行体保有分の範囲内で収まるかどうかは誰にもわかりません。加えてその発行体の経営が傾いてしまうとその損失を受け止める力にも疑念がわきます。
そうしたわけでどれも安全性確保の努力やその効果は認めるものの、国が法的に保証する「元本保証」と比較すれば信用力や安全性ははるかに劣ります。注意が必要ですね。
加えてこうした仕組みがややこしければややこしいほど、本当にそうした仕組みが実装されているのか確かめにくくなります。そうすると詐欺やダマシの可能性もどんどん否定できなくなってくるわけですね。
「安全ですよ!」と言われて全く安全ではなかった、ということが起こるということです。
そのように考えていくと、預金保険制度による「元本保証」のありがたみを実感しますね。いずれにしてもこのような「元本保証もどき」の宣伝文句を見かけたら、元本保証と全く異なるものであり、十分ご注意いただければと思います。
参考になれば幸いです。
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