現在、着実に景気が回復しているアメリカを除き、各国は景気浮揚のために積極的に金融緩和を行っています。
金融緩和が行われれば金融機関、特に銀行にマネーがあふれることになりますので、積極的に貸し出しが進められることが期待されます。銀行の貸し出しが増えれば市中にお金が流れ、経済活動が活性化されていくというわけですね。
加えて金融緩和は主に金利を引き下げることで実現されますので、貸し出し金利が低下する効果があります。つまり金融緩和とは、「銀行の積極的な貸し出し姿勢」+「金利低下」のWパワーで実体経済に資金を供給し、景気を底上げしていく金融政策だと言えます。
ただ日本やヨーロッパのように経済が成熟しつつある国・地域では、そもそも資金需要自体が成熟しつつあるため、いくら絶好の借り入れ条件であっても、企業がどんどん借入を増やしていく状況にはありません。
つまりはこれまでのシンプルな金融緩和政策が徐々に効きづらくなっており、それが日本やヨーロッパで、これまでにない「異次元」の金融緩和を生み出す背景となっています。
日本の「異次元緩和」は特にその規模において空前絶後であるわけですが、一方のヨーロッパでは金利水準が異次元となっています。具体的には一部の金利が何とマイナスになっているのですね!つまり金利を引き下げすぎて、ついにマイナス金利が発生してしまっている、というわけです。
金利をどんどん下げていったらマイナスになってしまった、という事態はモノサシを思い浮かべれば容易に理解できます。ゼロを下回ればマイナスですからね。
一方、預金者の立場から具体的な預金利息を思い浮かべると途端にわけがわからなくなってしまいます。プラス金利は利息を「もらえる」。金利がゼロになれば利息を「もらえない」。そして金利がマイナスになるということは・・・利息を「払わないといけない」ということ!?
何か騙されているのではないかと思って当然ですが、実際のところ上記の考え方は正しく、マイナス金利とは「預金者が利息を払わないといけない」、「ローン利用者が利息をもらえる」というアベコベの世界となることを意味します。
もし本当にそうした、定期預金金利やローン金利がマイナスという事態になればどうなるでしょうか?
当然のことながら預金者はみんな銀行から資金を引き出して、銀行の貸金庫に入れるかゴールドにでも換えておきますよね。また、借り入れれば借り入れるほど利息という不労所得が増えるわけですから、みんな一斉にローンを申し込むことになります。
そんな経済状態が持続可能かと言われれば・・・もちろん不可能ですね。
預金が大量に流出すれば銀行の顧客基盤が大きく損なわれ、今、銀行のメインの収益となりつつある手数料ビジネスにも壊滅的な影響を与えますし、他方、積極的に借り入れを行った人もリスクを取る必要は一切ないので、借り入れ資金を放置します。そうなると実体経済の資金の流れも止まってしまいますね。
つまりマイナス金利とはこれまでの資金の流れを逆回転させるもので、持続不可能であるばかりか景気に対しても悪影響を与えることは間違いなさそうです。大量に借り入れた人の中では多少、「浪費」が増えるかもしれませんが・・・。
そうしたわけで定期預金金利やローン金利、銀行の貸し出し金利が全面的にマイナスになることは永遠にないと思いますが、ではヨーロッパのマイナス金利はどのような形で実現されているのでしょうか?
これは実際のところ「銀行と預金者」との間の金利がマイナスになっている、ということではなく、「中央銀行と民間銀行」との間の金利がマイナスになり始めている、ということですね。
冒頭ご案内したように金融緩和とは銀行にマネーをあふれさせることですが、民間銀行は大量の資金を中央銀行に預けています。特に金融緩和が実施されればその「民間銀行が持つ中央銀行に預けているお金」が大きく増加します。しかしそうした資金が中央銀行内にとどまっている限り、景気に対する影響は限定的です。
中央銀行からすればそうした資金を使って、民間銀行がばんばん貸し出しを推進することを期待するわけですが、その究極の「追い出し方」がマイナス金利ということですね。つまり中央銀行の預金金利をマイナスにすることで、民間銀行が中央銀行に預けていても損をする状態を作り、民間銀行が中央銀行から資金を引き出し、より積極的に運用=貸し出しする効果を期待しているわけです。
ちなみに中央銀行は自分自身でお金を刷れますので、いくら預金が引き出されても全く問題ありません。
ということで「マイナス金利」とはあくまで銀行同士の金利の話であり、市民生活に悪影響を与えそうな、定期預金金利がマイナスになったり、ローン金利がマイナスになる、というようなことは起こりえないということですね。
ただし民間銀行からすればますます「もうお金はいらない」状態になってきますので、定期預金金利がゼロになることはあるかもしれません。また、大口預金者に限って金利をマイナスにする、預金が1億円を超えると手数料がかかる、といった可能性はありそうです。
一方、絶対ないのが後者のローン金利(銀行から見れば貸し出し金利)がマイナスになるという事態です。持続性がないということはすでにご案内しておりますが、現実的に銀行の採算という面でも貸し出しには当然審査などのコストがかかりますし、金利がマイナスとなってくれば預金では絶対稼げませんから、手数料と貸し出しで稼ぐしかありません。とすると「借りてくれた人にお金を払う」など論外です。
そう考えるとマイナス金利となっても個人顧客のメリットはそう多くなさそうですね。日本でもそのうち、金融政策の一環としてこうした「マイナス金利」が議論されることになると思いますが、実際の影響ははたしてどうなるのでしょうか・・・歓迎すべきことではありませんが、興味は尽きません。要するに「怖いもの見たさ」ということですね。
参考になれば幸いです。
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