2015年12月にアメリカで約10年ぶりに政策金利の引き上げが行われたというニュースを目にした方もおられるのではないでしょうか。
身近ながら意外とよく分からないのが金利決定のメカニズムですが、銀行の担当者が毎月集まって「来月の金利はどうする?」と決めているわけでも、財務省から定期的に「明日からこの金利で預金集めをしなさい」というお達しがあるわけではありません。
正確に言えば、記者の理解が正しければおそらく90年代ごろまでは金利は役所を含めた「業界」内で決められておりましたので上記のような例はあながち冗談ではなく、実際にあったのかもしれませんが、金利の自由化が進んだ現在では概ね2つのメカニズムで決まる金利が基準となっています。
1つ目は国債市場などの金融市場で市場原理に基づいて決まる「市場金利」で、2つ目は日銀などの中央銀行が金融政策に基づいて決める「政策金利」ですね。
ただしこの2つは全く無関係というわけではなく、むしろお互い強く影響しあいながら金利水準が決まっているわけであり、その点では金利決定のメカニズムと言うのは「金融市場と中央銀行がお互い押し合いへし合いしながら決まっていくもの」と捉えていいのかもしれません。
そう考えると「金利の自由化が進んだ現在」と表現しましたが、実はそこまで自由化していないという意見もありそうです。
さらに日本では現在、「異次元緩和」によって日銀が大量のマネーを武器に国債市場に対して大規模な介入を続けており、よりそうした「官製金利」の色合いが強いですね。それで割を食っているのは紛れもなく我々預金者なのですが。
いずれにしても金利決定に対して中央銀行の意向が強く働くわけですが、では中央銀行はどういう時に金利を引き上げるかと言えば、預金者を助けるため・・・といった配慮は全くなく、「物価が上昇している時」と「景気が過熱している時」の2つですね。
物価の上昇時に金利を上げるのはインフレを防ぐためであり、景気が過熱している時に金利を上げるのはバブルを防ぐためですね。どちらも中央銀行の大切な役割と言えます。
逆に金利を引き下げる時というのは「物価が下落している時」と「景気が低迷している時」ということになります。
日本がかれこれ25年以上金利が低下してきているのも、まさにデフレであり、景気が停滞してきたからなのですね。
翻ってではなぜアメリカで利上げが決断されたかと言えばまさに「景気が過熱し始めているから」ということになります。また、そうでなくても景気が良いときに少しでも金利を引き上げておかないと、今度、不景気になった時に金利を引き下げられないというジレンマにはまってしまいます。その点でも中央銀行にとって「金利を上げれるときに上げておく」というのはとても大切なことだと言えます。
さてそのようにアメリカで金利が上昇してくるとなれな日本の金利、特に定期預金金利に対する影響が気になるわけですが、ではこのアメリカの利上げによって日本の定期預金金利は上昇するのでしょうか?
残念ながらそれは難しそうですね・・・。
その理由の1つ目は上記の通り現在、日本では大規模な金融緩和=異次元緩和が実施されており、日銀によって金利は超低金利に押さえつけられているからです。海外で多少金利が上昇してもその影響は限定的です。
2つ目は、期間の短い金利ほど日銀のコントロール力が強くなるからです。国債金利は10年が基本ですが、それより短い金利となるとどんどん政策金利の影響が強くなります。そして定期預金の主戦場は1年や3年、長くて5年であり、アメリカの金利が上昇したとしてもこうした短い金利が反応するとは考えにくいです。
そして3つ目は、その頼みの綱であるアメリカの利上げも、アメリカの中央銀行であるFRB自身が認めるように、仮に今後利上げを続けるとしてもそのペースは極めて緩やかなものであると予想されている点ですね。いきなり金利が2倍・3倍になるのはまだしも、1年で+1%といったペースであれば影響力は弱いと言えます。
そうしたわけで、世界の金利がどれだけ上昇したとしても、特に定期預金金利という点では、「日銀次第」ということですね。
ではどういう時に日銀が金融緩和を縮小させるかと言えばこれは簡単で、「2%の物価上昇目標を安定的に達成できた時」ということです。
したがって預金者としてチェックすべきは各国の金利動向ではなく、日本国内の物価動向と言ってよいのかもしれません。
そのインフレ率ですが0%近辺にまで低下しているほか、原油が低下している中では早期に2%まで上昇するのは難しいでしょうね。
まだまだ低金利は続くという厳しい現実認識のもとで、堅実な運用方法をご検討いただければと思います。
参考にしていただければ幸いです。
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