資産運用を始めようと思う方に選択肢の1つとなるのが投資信託です。投資信託はプロが運用するわけですから一定の安心感がありますし、自分で運用判断しなければいけない株式投資やFXと違い、「任せっぱなし」「ほったらかし」運用も可能です。とすると初心者には敷居が低いですね。
実際のところ投資信託の残高は堅調に増加しているわけですが、ただこれには上記のような投資信託の利点を理解した上で積極的・能動的に活用している人もいれば、証券会社や銀行などで勧められるままに購入してしまっている人もおられるのではないかと思います。
もちろん多くの方は金融商品や資産運用に関して豊富な知識を持っているわけではないでしょうから、そのように勧められて購入することが悪いことだとは思いませんが、問題となってくるのは「商品の意味をよく知らないまま購入してしまう」ケースですね。
いくら「任せっぱなし」にすることが可能である商品としても、その内容について最低限の理解が必要なのは言うまでもありません。
では投資信託に関して最も大きな誤解は何かと言えば・・・やはり「毎月分配の仕組み」ということではないでしょうか?
投資信託には毎年1回決算するもの、毎年2回決算するもの、毎月決算するものといろいろあるわけですが、中でも人気なのが毎月決算し、そのたびに分配するファンドですね。実際、日本で最も残高の多いファンドの上位はすべてこの「毎月分配ファンド」で占められています。
確かにいくら運用がうまくいき、時価が増えていてもなかなか儲かっていることが実感できません。だとすれば毎月いくらかでも運用益が銀行口座に振り込まれれば儲けを実感できますし、預金金利が低くなかなか運用で増えない金利環境を勘案すればなおさら魅力的に感じますね。
年金の足しになるのでは?と夢が膨らみます。
では実際にどれくらいの金額が毎月分配されているかと言えば残高トップの「新光US−REITオープン/愛称 : ゼウス」の場合、毎月75円が分配されています。足元の基準価額が約4,000円ですので、年間の分配金額=75円×12ヶ月=900円とすると分配率は実に22.5%に達しますね!
0.0●%の定期預金との差は明らかです・・・もしこれが「運用利回り」なのであれば。
そう、つまりこの「分配率」は利回りでも何でもないのですね。では何かと言えば単純に「元本と利益を毎月どれくらい取り崩しているか」の指標でしかありません。
たとえばいくら分配金を毎年合計900円支払っていたとしても、元本が1年で1,000円減ってしまえば結局は年間で「−100円損した」ことに他ならない、というわけです。
そもそも基準価額が4,000円ということはすでに当初の投資元本の6割を失っているということですからね。投資信託の基準価額は1万円からスタートしますので。
もちろんこの期間中に6,000円以上分配していればトータルではプラスということですから及第点ですが、しかしそれでも「22.5%」という響きからイメージされる実績とは大きく乖離しますので注意が必要です。
そうしたわけでこの「新光US−REITオープン/愛称 : ゼウス」 の過去のリターンをチェックするとこうなっています。
・1ヶ月:−0.17%
・1年 : 0.93%
・5年 :17.71%(年率)
・10年: 5.50%(年率)
期間によってそのリターン率は本当に様々ですが、共通して言えることはどの期間も「22.5%」の分配率を上回るリターンを出せていないということですね。つまりは投資家は相当「有利誤認」している可能性が高いと言えますし、現状の分配率が続けばどんどん「元本」が減っていくのは確実と言えます。
だからこそ基準価額が1万円から4,000円にまで減少しているわけですが。
それでも期間10年で見れば年率5.5%で運用できているわけで、単純計算すれば55%以上リターンが出ているわけだからよしとする、という考え方もあるかもしれません。
しかしここで忘れてはいけないのは、過去10年でドル円の為替レートは80円から120円まで実に1.5倍程度の円安が進んでいるという点です。つまりこの期間に海外に投資していれば、単純に為替差益だけで50%近いリターンを得られたというわけですね。
要するに10年で55%のリターンと言ってもその内の50%は単なる為替差益であり、運用がうまく行った部分はわずかに「残り5%」ということです。
その5%を10年で割れば1年あたりは0.5%ですから、わざわざリスクをとって投資したとしても定期預金との差は見た目ほど大きいものではありません。
さらに今のところ円安が維持されているから良いものの、専門家が指摘するように一定の円安バブルが維持されているのだとすれば、仮に弾けた場合には円高が大きく進むわけで、取り返しのつかない損失となる可能性は十分あります。
そのように考えると、決して「定期預金より毎月分配型ファンドの方がいい」と断言できません。
実際、リーマンショック直後はどのファンドも大幅な赤字でしたからね。その時点で比較すれば損失が発生していない分、「定期預金の圧勝」でした。
もちろん投資は結果がすべてですから、それでも毎月分配型ファンドの実質的なリターンが定期預金の利息より大きいのであれば、「毎月分配型ファンドの方がいい」と言えるわけですが、大切なことは、毎月分配されようとされまいと投資信託を購入するということは、リスクのある資産への投資であることには変わりはなく、本質的なリターン率を見極めることが重要ということです。
その点では本質的なリターンに何も関係ない毎月分配の仕組みなど「ない方がよい」と言えるのかもしれませんね。
金融機関の店頭で今でもこうした「分配金をエサにした勧誘」が行われているかどうかは分かりませんが、確実に儲かる投資など存在しないということはしっかり覚えておいていただければと思います。
言い換えれば「毎月分配ファンド」にも損失が発生する可能性は十分あり、逆に言えば定期預金の「絶対減らない」というメリットは実はかなり魅力的だ、ということですね。
参考にしていただければ幸いです。
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