ちょうど総務省家計調査で「2人以上世帯、貯蓄・負債平均」の2016年平均が発表されていましたので取り上げてみたいと思います。まず過去5年の貯蓄額の推移はこういうことですね。
・2012年 : 1,658万円
・2013年 : 1,739万円
・2014年 : 1,798万円
・2015年 : 1,805万円
・2016年 : 1,820万円
アベノミクス効果の追い風もあるのかもしれませんが、順調に増加していますね!すばらしい。
一方、年間の収入は過去5年間でこのように推移しています。
・2012年 : 606万円
・2013年 : 616万円
・2014年 : 614万円
・2015年 : 616万円
・2016年 : 614万円
この5年間でほとんど全く増えていないことが分かります。上記貯蓄額の増加は増えない収入をやりくりしながら貯めたもの、というわけですね。であるのであればやはりすばらしいと言えるのではないでしょうか。
そうしたわけで、読者のみなさま、余裕がないことを言い訳にせず、せめて平均である1,820万円を目指してしっかり貯蓄に励んでください・・・と自分のことを棚に上げて、上から目線で締めくくってもいいのですが、さすがにそれでは芸がなさすぎるのでもう少し深堀してみます。
多くの方は「こんなに貯蓄がない!」と思われるのではないかと思いますが、そう思ってしまうカラクリは2つあります。
まず1つ目は、こうした「お金」にまつわる平均値というのは下限がある一方で上限はありませんので実態より高く出てしまうことが多いのですね。それを補正するのが「中間値」という考え方で、これは「端から数えてちょうど真ん中の順番の人の値」という意味ですが、この中間値の方が実感に近いと言われています。
では「貯蓄保有世帯」の貯蓄の中間値はどうかと言うとこのように推移しています。
・2012年 : 1,001万円
・2013年 : 1,023万円
・2014年 : 1,052万円
・2015年 : 1,054万円
・2016年 : 1,064万円
こちらも堅調に増加しているものの、平均値と比べればいきなりほぼ半減していることが分かります。これならまだ現実感があるでしょうか?
次に 「こんなに貯蓄がない!」と思ってしまうカラクリの2つ目は、この「貯蓄」の中には普通預金や定期預金以外にもいろいろな資産が含まれているのですね。たとえば2016年の平均値=1,820万円を例にとるとこのような内訳となります。
・普通預金 : 412万円(22.6%)
・定期預金 : 727万円(39.9%)
・生命保険 : 378万円(20.8%)
・有価証券 : 265万円(14.6%)
・その他 : 38万円(2.1%)
貯蓄と言われて真っ先に思いつく、普通預金や定期預金は合わせて6割くらいのシェアしかないことになります。これまた実感としては「半減」ということですね。
この2つの数字を合成してみるとより実態に近い「中間値=1,064万円」の内訳はこのようになります。
・普通預金 : 240万円(22.6%)
・定期預金 : 425万円(39.9%)
・生命保険 : 221万円(20.8%)
・有価証券 : 155万円(14.6%)
・その他 : 22万円(2.1%)
預金額は普通預金+定期預金で合わせて「670万円」ということですね。さらに実感に近いでしょうか?
なおもう一歩踏み込むと「勤労者世帯だけ」の数字をチェックすることができます。その貯蓄額はこのように推移しています。
・2012年 : 1,233万円
・2013年 : 1,244万円
・2014年 : 1,290万円
・2015年 : 1,309万円
・2016年 : 1,299万円
この2016年の数字=1,299万円から「勤労者かつ貯蓄あり世帯」の「中間値」を推定すると、全体の中間値を参考にすれば、「759万円」ということになります。その内訳はこのようになる計算ですね。
・普通預金 : 172万円(22.6%)
・定期預金 : 303万円(39.9%)
・生命保険 : 158万円(20.8%)
・有価証券 : 111万円(14.6%)
・その他 : 16万円(2.1%)
仮説に仮説を積み上げておりますので信憑性は相応に低下してしまっておりますが、この場合の預金額は普通預金+定期預金で「475万円」ということになります。いきなり出てきた「1,820万円」からはかなり減ってしまいましたが上記の通り「勤労者かつ貯蓄あり世帯」の預金残高としては納得感がありそうですね。いかがでしょう・・・。
ただもちろん、こうした貯金に対する目標は高いに越したことはありません。
その点では475万円ではなく759万円、759万円ではなく1,299万円、1,299万円ではなく1,820万円を目標に着実にお金を貯めていっていただければと思います。
お金がなくて困ることはあっても、お金があって困ることはほとんどない・・・でしょうからね。
参考にしていただければ幸いです。
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