毎年恒例となっている、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」の2017年版が発表されていますので、早速その中身をチェックしていきたいと思います。
まず気になる金融資産保有額(金融資産保有世帯)は昨年比でこうなっています。
・1,615万円→1,729万円
順調に増加しているということですね。
金利は低く、さらに老後への不安が増していると言われる中でこのように金融資産が増えていることに多少の違和感を感じなくもないですが、これはあくまで平均ですからね。
つまり、たとえば9人が残高を減らしていても、残りの1人がそれ以上に残高を増やしていれば平均値は増加するということです。より正確な実態を把握するためには「全体の分布」という視点も必要になってくるのでしょうね。実際、上記の通り「金融資産保有世帯」の数値ですし。
というわけで「金融資産の有無」について見てみると結果はこのようになっています。
・保有している : 68.8%
・保有していない : 31.2%
3割超の世帯が「金融資産ゼロ」ということですね!金融資産には預貯金のほか、生命保険なども含まれますので「大丈夫ですか!?」という感じがしますが、若年層や住宅ローン世帯がこの数値を押し上げていると信じたいと思います。
住宅ローン世帯でもさすがに預貯金がゼロであったり、生命保険がゼロということはないと思いますが・・・。
ただ一方で、「昔からこんなもの」ということであれば、過度な心配はいらないかもしれません。というわけでこの調査がさかのぼれる1963年からのデータをチェックしてみると、「金融資産の有無」はこのように推移しています。
70年代・80年代を底にして、この「金融資産ゼロ」世帯の割合が急増してきていることが分かります。ここ5年ほどは30%程度で安定しているようですが、気になる動きですね・・・。
というわけで、この「金融資産ゼロ」世帯の年齢別の分布をチェックしてみるとこうなっているようです。
2017年の数字を抜き出すとこうなります。
・20代 : 35.6%
・30代 : 33.7%
・40代 : 33.7%
・50代 : 31.8%
・60代 : 29.4%
・70代 : 28.3%
20代で金融資産ゼロというのはあり得ますし、また、老後の生活設計がうまく行かず70代で金融資産ゼロになってしまう方がおられるのは何となく理解できます。また30代・40代も「住宅ローン世代」かつ「子育て世代」であることを踏まえれば、百歩譲ってこれもアリとします。
とすると問題は、50代・60代に約3割おられる「金融資産ゼロ」世帯の存在ですね。ここで資産形成に失敗すると老後の生活はかなり不安定になります。
繰り返しになりますが昔からこういった宵越しのお金を持たない「江戸っ子」がそれなりにいるということであれば心配はいりませんが、実際には90年代以降、急激に増えているわけですからね。心配になります。
次にこの「金融資産ゼロ」世帯について、年収別の分布を見るとこうなります。
こちらも2017年の数字を抜き出すとこうなります。
・年収ゼロ : 60.7%
・年収300万円未満 : 39.1%
・年収300万円〜500万円未満 : 29.6%
・年収500万円〜750万円未満 : 24.3%
・年収750万円〜1000万円未満 : 16.7%
・年収1000万円〜1200万円未満 : 11.5%
・年収1200万円以上 : 9.9%
当然、年収が低い方ほど割合が高くなっているわけですが、ただ年収が高くてもそれなりの割合で「金融資産ゼロ」世帯があるということですね!年収750万円以上を比較的「裕福」とするのであれば、このセグメントはライフスタイルや価値観の問題ということでしょうからさほど心配はいらなそうです。
問題はそれより下、特に年収300万円未満の層ということになるでしょうか。ちなみに回答者全体の就労状況はこのようになっているようです。
・世帯主が就労 : 20.5%
・配偶者が就労 : 2.4%
・共働き : 33.0%
・世帯主、配偶者以外も就労 : 25.8%
・就業者なし : 14.0%
回答者全体の9割近くの世帯でしっかり働いており、さらに3割は共働き、3割は家族も働いているということで、かなり勤勉な様子がうかがえます。とするとこの約3割の「金融資産ゼロ」世帯の過半が「きちんと働いているのに余裕がない」ということでしょうから悩ましいですね。
もちろん「お金があるから幸せ」というわけではありませんが、「お金がないと不幸せ」であるのはおそらく間違いないのでしょうから、こうした構造的な変化についてきちんとしたデータを基に社会全体で考えていくべきなのかもしれません。
とは言いつつ妙案は思いつきませんが、少なくとも「頑張れば報われる」社会になっているのかどうかという点と、介護や育児、ハンディキャップ、シングルなどの理由で貧困に陥っている世帯へのケアは必要なのでしょうね。通り一遍のコメントで恐縮ですが・・・。
野党がよく「格差が広がっている」と声高に叫んでいるわけですが、今一つピンと来なかった記者もこういう数字を見れば納得できます。
ちなみに政治関連で思い出しましたが、「小泉改革によって格差が広がった」という指摘がありましたが、上記グラフを見る限りそれはなさそうです。やはりデータなしに語っても意味がないですね・・・。
というわけで今回は流れで「金融資産ゼロ」世帯の話に終始してしまいましたが、この調査が注目を浴びるのは冒頭ご案内したように保有金融資産の方ですね。今年は1,729万円だったわけですが、こちらも過去の推移をチェックするとこうなります。
確かに順調すぎるこのグラフを見れば、「格差が広がっている」という認識を持つのは難しいですね・・・。この数値は「保有金融資産あり」世帯の数値ですからなおさらです。
ただもちろん、すでに預貯金をお持ちの方は目標を低く持つ必要は全くありませんので、まずは実感に近いと言われる「中央値」、そして「平均値」を目指して貯金していっていただければと思います。
老後に必要な資金と言われる「3,000万円」からすれば、この金額でも足りないわけですからね。参考にしていただければ幸いです。
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