「もともと収入が超不安定ですから、印税もできるだけ貯金したので、暮らしぶりはちっとも変わりません。夫はSF作家なんですが、5年間、本が1冊も出ないこともありました。私の仕事も不安定で、世帯年収が300万円の年もあれば、ほぼゼロという年もありました」
毎月の食費は約1万円。パンの耳のほか、魚のアラや大根の葉など格安食材をフルに活用する。ときにはケーキも焼く。自宅で作れば費用は数十円。手間をかけた手作り料理はどれも美味しそうだ。
電気・ガス・水道代はあわせて約9000円。早寝早起きで室内灯をつける時間を減らし、調理では圧力鍋を活用。冷暖房は極力使わず、節約のため風呂には家族3人で一緒に入る。
さらに驚くことに、森川さんも旦那さんも、携帯電話は持っていない。「あれば便利だろうとは思いますが、家にいることが多く、絶対に必要ではありません。外に出ればお金を使う機会も増えます。それに携帯電話代のために働くというのは、本末転倒な気がするんです」
■都市部で暮らせばクルマは要らない
家賃は6万円。住まいは大阪市内で、JR大阪環状線の駅まで徒歩数分という便利なところにある。郊外に出ればより安い物件もあるはずだが、生活には自動車が欠かせなくなる。大阪市内で暮らせば、移動手段は電車と自転車で事足りる。
「文化的活動」にも妥協はみられない。まずは図書館だ。都市部の図書館では、本や雑誌だけでなく、映画や音楽も充実している。森川さんは「作家活動で収入を得ているので抵抗はある」と話すが、便利なものは使わないほうが損だろう。
大阪市内で暮らせば、フリーマーケットにも気軽に出かけられる。森川さんも50円のダウンコートや700円のエスプレッソマシーンなどを手に入れてきた。「2000円を持っていけば、びっくりするほど買い物できる」という。
化粧品などは、懸賞で狙う。企業のメールマガジンを多数購読し、競争率の低そうな懸賞を探してアンケートに答え、ハガキを送る。多い月には1万円以上の高額商品が3つ当たったこともある。
「化粧品のサンプルは当選者の数が多いので、応募すればたいがい当たります。試供品の小さなものでも数が集まればそれで十分です。ヘアカットは理容専門学校の実習モニターに登録しているので、無料で切ってもらっています」
節約を重ねたご褒美は年1回の海外旅行だ。2005年のフランス旅行では15泊で飛行機代を含め約39万円を使った。アジア圏では20万円程度に抑えられるという。ただし、読者の一部からは「海外旅行をするぐらいなら貯金にまわすべきだ」という指摘も受けた。
他人の暮らしぶりを注意するとはお節介にすぎるが、懸念事項はゼロではない。ひとつは教育費。06年度の文部科学省の調査によると、公立でも、小学校で年間33万円、中学校で47万円、高校で52万円にのぼる。森川家にも小学校1年生の女の子がいる。だが、森川さんの回答はシンプルだ。
「高校までは行かせます。しかし大学は本人の意思次第。学資に不安があれば、アルバイトや奨学金という手もある。私自身は、大学へ行くことが重要だとは全く思っていません」
「老後」についてはどうだろう。年金はアテにならない。森川家でも貯金はしている。だが、「節約が染みついている」ので、家計簿はつけていない。
「執筆のために家計簿をつくりましたが、普段は大きな出費もないので必要ない。黒字があったときに少しずつ貯めています。夫が歯磨きに使うフロスの長さまで気になるのは、自分でもいきすぎだと思いますが……。貯金を残して死んじゃったら意味がないので、少しは有意義に使うことも考えたいと思っています」
森川さんは、「これまでの収入がいつまでも続くという前提が信じられない」として借金をしない。これまでの日本では、ローンで家や車を買う「出世払い」が普通だった。一方で、カネをかけずとも豊かに暮らす方法もある。危機の時代に強いのは、どちらだろうか。
先日来、何度か家計診断のコラムを取り上げましたが、いずれの家庭も月々の支出が20万円台〜でありまして、いわゆる「中流」的な家庭のイメージでありました。
大雑把に言えば、収入にもよりますが、月々の出費が30万円未満に抑えられていれば黒字で、30万円以上であれば赤字、というのがボーダーラインになっているように感じました。もちろん、あくまで数世帯のサンプルですので、統計的に調査すればまた変わってくるとは思いますが、世の中の平均年収が400万円前後ということですから、当らずとも遠からず、なのではないでしょうか。
仮にそうだとすると、年収が300万円以下であれば、夢も希望もなく、家庭も持てないのか、と言うことになりますが、どうやらそういうことではないようです。
上記コラムで紹介されている森川家は、世帯あたりの年収が約150万円ということながら、娘が1人いる3人家族で、さらに何と年に1回は2週間以上、海外旅行に行くというのですから、ものすごいやりくりですね・・・。
実際、1ヶ月の支出の内訳も紹介されていますが、こういうことになっております。
何と月々の支出は約13万円です・・・。記録的な小額ですね。そのため内訳も極めて具体的なものになっています。「整骨院」はともかくとして「フリマ」、「マクドナルド」、「落語会」、「タップダンス教室」というのは・・・赤裸々でありますね。
逆に言えばそれだけ支出が少なくシンプルである、ということですが、気になる節約術を抜粋するとこうなります。
・パンの耳のほか、魚のアラや大根の葉など格安食材をフルに活用する。
・早寝早起きで室内灯をつける時間を減らし、調理では圧力鍋を活用。
・冷暖房は極力使わず、節約のため風呂には家族3人で一緒に入る。
・携帯電話は持たない。
・移動手段は電車と自転車。
・図書館を活用。
・フリーマーケットを活用。
・化粧品などは、懸賞で狙う。
・ヘアカットは理容専門学校の実習モニターとして無料で切ってもらう。
ここで終えると、まさに世捨て人のような生き様でありますが、このご家庭のユニークなところはなんと言っても、上記の通りでありますが、年1回、2週間以上、海外旅行に出かけるという点ですね。
節約はメリハリが大事と言いますが、この森川家の場合はメリとハリの差が大きすぎて、どちらも凡人である記者には正直ついていけそうにありません・・・。
ちなみに先日取り上げた「赤字家計」の支出はこのようなものでした。
◆「はま〜さん」の場合:毎月の支出39万3,000円
◆「ケンチャナヨさん」の場合:毎月の支出:毎月の支出59万円
どちらも食費だけで12万円ですからね。これだけで森川家の毎月の支出に並びます。
いずれも極端な例だと思いますので、「正解」はこの中間にあるのだと思いますが、ピンとくるところがあれば参考になさってください。
ちなみに記者がふと考えてしまうのは、森川家の毎月の支出15万円に対し、「はま〜さん」家や「ケンチャヨナさん」家の毎月の出費は3倍〜4倍あるわけですが、ではそれぞれのご家庭が森川家の3倍〜4倍幸せかと言うと、恐らくそうではないだろうという点です。
場合によっては森川家の方が幸せ度が高いかもしれない。
思い起こせば一昔前までは、携帯もなければ、冷暖房も不完全、クルマは高嶺の花、というような時代だったわけですが、おそらく庶民の幸せ度合いは今とそれほど変わらないのではないかと思います。
支出を見直すときも、そういった自分の幸せ度に直結するものは残し、意外に幸せ度に直結していないものは捨てる、というような切り口でリストラしてみるのも面白いかもしれませんね。
どうせお金を使うなら、生活の幸せ感が上がるような使い方をしたいものです。
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