以前も取り上げたことのある、資産運用サービス「いつかはゆかし」ですが、ついに行政側が動き、一定期間の業務停止となるようですね。
正直言って、かなり問題のある広告をずっと垂れ流していましたので、早く指導されないかなぁ、と感じていたわけですが、早いか遅いかはともかくとして、監督官庁が適切な処分に動いたことは評価したいと思います。
さてこの「いつかはゆかし」問題ですが、上記コラムの通り、悪質な点は以下2点ですね。
・ラップ口座の営業、販売を実際に行っているにも関わらず、投資助言業だと強弁している業法違反
・「毎月5万円の積み立てで1億円を貯められる」などという不思議な広告宣伝による有利誤認
監督官庁として怒っているのはおそらく前者だと思います。法律違反、ルール違反ですからね。法律を破れば故意であろうとなかろうと、知っていようとなかろうと、捕まって罰せられるのが法治国家というものです。適切な処分を期待したいと思います。
ただし、金融商品販売業者でありながら投資助言業と偽っていたとしても、実際にそれが即、顧客の不利益にダイレクトにつながるかというとそれはないと思います。
今回、顧客の資金については実際に海外ファンドに投資されたのだと思いますし、同社が横領していたり、悪質な海外ファンドに誘導していたのでなければ、投資資金が消えてなくなることはありません。
おそらく・・・たぶん。
その点では、ほぼ運用の実態がなかったMRI事件などに代表される悪徳投資商法とは、質が異なると思います。もし顧客の資金を流用していたのであれば行政処分云々の前に、即、逮捕でしょうしね。
顧客の資産が無事運用され、期待どおりのリターンが還ってくることを祈りたいと思います。
ただし。
確かに他の投資詐欺事案と比べれば、罪は相対的に軽い部分はあるのではないかと感じますが、一方で、より実質的に悪影響が大きいと感じるのは後者の
・「毎月5万円の積み立てで1億円を貯められる」などという不思議な広告宣伝による有利誤認
の方です。もちろん毎月5万円の積立で1億円を貯めるのは不可能です。
これについては以前のコラムでもご紹介しましたが、抜粋するとこういうことです。
>>>「いつかはゆかし」の広告に思うよしなしごと
毎月5万円×30年×1%で積み立て運用しても、実際には2,098万円にしかなりません。
「いつかはゆかし」のロジックでは、「年利10%」で計算していますのでこれだけ差が出るのですが、では本当に年利10%で運用できるのでしょうか?
リスクとリターンは比例します。何もしないと約2,000万円で(実際には1%で運用するのも難しいわけですが)、それを1億円にしようと思えば、元本が5倍となるリターンが必要なわけですが、抽象的に言えば、そのためには元本が5分の1となるリスクも取らないといけないのです。
したがってノーリスクで年利10%の運用ができるはずがありません。ハイパーインフレが進行中の通貨建てならありえますが、最も通貨の価値が安定している日本円では不可能です。
そんなわけで、当サイトが考える、より正確なキャッチフレーズはこうご案内したわけです。
「元本が5分の1〜5倍になる。月5万円の積み立てで。」
実際の成績は一般的にはその間のどこかに落ち着くわけですが。
では、2013年10月現在、同社のキャッチコピーがどう修正されているかと言うとこうなっています。
「1億円を貯めよう。月5万円の積立で。」
・・・本質的には何も変わっていませんね(苦笑)。毎月5万円の積立で1億円が貯められることが強く示唆されておりまして、やはり同社の「有利誤認」体質は何も変わっていないことが分かります。
もちろん同社の直接的な顧客は、それはあくまでプロパガンダであり、リスクとリターンの関係を正確に理解した上で、納得して海外ファンドに投資した、と信じたいわけですが、やはり罪深いのは、繰り返しになりますが、こうした広告をずっと垂れ流してきたことですね。
あろうことかテレビCMまで放映していましたからね。
「あ、なんかうまくやれば月5万円が1億円になるんだ」という誤解を視聴者や読者に植え付けたのだとすれば、大罪だと思います。
高学歴者が揃う、テレビ局や新聞社、雑誌などのメディア側の責任も重いですね。こうした投資詐欺が露見するたびに、その片棒をかついだメディアの責任を思うのですが、処分されたという話を聞いたことがありません。
猛省を促したいと思います。
あ、あと広告代理店もですね。自社で直接広告を掲載依頼できる仕組みではありませんから。
さて。
今回はもう一歩踏み込んで、仮に「いつかはゆかし」に興味を持って検討するとした場合に、預金者として、投資家としてできること、できたことは何なのかを考えたいと思います。
「そんなの事前に自分で調べればいいのでは?」と思われる方も多いと思いますが、そうもいかない事情があります。
というのも「いつかはゆかし」や「いつかはゆかし 評判」「いつかはゆかし 批評」「いつかはゆかし 悪評」などで検索してみても、ほぼポジティブな記事しか出てこないからですね。
実際にポジティブに評価する人が多いので結果として、そういうことになる・・・わけでは当然なく、SEOと呼ばれる検索結果をコントロールする技術を駆使してそのような偽装をしているわけですね。
ある意味、こちらも相当、罪が重い気がしますが、それはともかくとしてこういう細工をされれば、調べれば調べるほど、良い商品のように思えてきてしまいます。これまた危険な落とし穴ですね。
ネット検索では騙されてしまう可能性があるとすれば・・・やはり専門家の意見を聞いてみる、というのも選択肢に加えておきたいですね。
FP、銀行員、証券マン、親戚、家族など、専門知識があって信頼できる人であれば誰でもいいと思いますが、大金を運用するなら、やはり第3者の中立的な意見も参考にしたいものです。
もちろん、それより何より、一番大切なのは自分自身の「常識」であるのは間違いありませんが。
「旨い話がない」というのは常識中の常識だとしても、年利1%でも運用が難しい時代に、「年利10%の運用などありえるはずがない」という感覚は絶対必要です。
百歩譲ってもしそうした運用方法があるのであれば、自社で独占しますよね。そうすれば従業員全員、億万長者になるのは間違いナシです。
そうしないということは結局、「旨い話ではない」ということになります。
不動産投資で儲かる人は「100人に1人」だそうですが、これも同じ理屈です。素人でも簡単に儲かるような物件は、絶対誰も手放しませんからね。
リーマンショックの後、そうした不動産の投資物件を提供する会社が真っ先に倒産したのは笑えない皮肉でした。
一般論として、ですが、みなさんの虎の子を狙っている人は常にいて、その「騙し」のテクニックは時代と共に進化しているものの、しかし最後は自分自身が騙されるかどうかにかかっているわけですね。
「旨い話はない」という常識中の常識を、再度、肝に銘じていただければと思います。
なお、最後となりますが、日本投資顧問業協会という組織がありまして、そこの会員台帳にアブラハム・プライベートバンク社の2011年7月期の決算状況が載っています。
http://www.jiaa.or.jp/profile/jogen-daichou.html
それによると、
・営業収益 : 55百万円
・経常利益 : −94百万円
・純資産 : −96百万円
ということになっています。つまり大幅な赤字で、思いっきり債務超過だったわけですね。もちろん2期前のデータとなりますのでそこから急回復した可能性もゼロではありませんが、こうした点も検討材料の1つとできればよいですね。
なかなか高等テクニックとなってはきますが・・・記者も今回こうしたデータがあるのを初めて知りました。
参考になさってください。
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