今まで何度か取り上げてきましたが、なかなか減らないのが金融犯罪です。
そもそも社会があって、人が集まり、金銭が流通している以上、こうした金融犯罪はなくならないものなのかもしれませんが、しかし被害額が大きい上に、狙われるのはお年寄りばかり、さらに親心・家族愛につけこんだ悪質な手口ということで、心を痛めている方は多いのではないでしょうか。
命までとられることはないにせよ、記者もこうしたニュースを見聞きするたびに強い憤りを覚えます。
ちなみに2013年は金融犯罪の中でも、偽のポップアップ画面を利用した、インターネットバンキングの不整送金被害が急増しているとたびたび報道されておりましたが、金融犯罪全体の規模・件数はどうなっているのでしょうか?警察庁のHPをチェックすると「振り込め詐欺」の、昨年=2012年との比較では今年はこうなっています。
・件数 :6,348件 → 8,296件
・被害額 : 154億円 → 225億円
つまり、大きく増加しているのですね!しかも「今年」と書きましたが、当然まだ2013年は終わっていないわけで、これは「11月末現在」の数字です。
昨年と比べて1ヶ月足りないにも関わらず件数・被害額ともに大きく増えているわけですから、なんとも残念な状況です。1件あたりの被害額も約270万円ということでやはり多額です。
ちなみにこの「振り込め詐欺」ですが、内訳はこのようになっています。
・オレオレ詐欺 : 4,822件 / 149億円
・架空請求詐欺 : 1,362件 / 53億円
・融資保証金詐欺 : 413件 / 7億円
・還付金等詐欺 : 1,699件 / 16億円
やはり、件数・被害額ともにオレオレ詐欺が一番大きいということですね。ご高齢のご家族がおられる方は十分、お気をつけいただければと思います。
社会的認知が広がり、おそらく誰でも知っているであろう「オレオレ詐欺」でありながら、それでも被害額が減らないのは、やはり手口が巧妙な上に、決定的な防止方法がない、ということなのでしょう。忸怩たる思いがいたします。
そうした中、おや?と思ったのが上記記事ですね。静岡のローカル記事ですが、上記の通り「預金小切手を活用した詐欺被害防止対策/預手プランで、これまでに計1200万円の詐欺被害を防止。同プランは全国初の試みで、防止事例が出たのも初めて。」とのことです。
「預手プラン」とは聞きなれない言葉ですが、この際、効果があるのであれば、何でもかまいません。そこで「プラン」の中身を見るとこう説明されています。
・ 300万円以上の出金を希望する75歳以上の利用者が対象で、金融機関の職員が手順に沿って使途確認などを行い、詐欺の疑いがある場合は警察に通報する仕組み。
・・・これだけだと従来の詐欺防止策と何が違うのか全く分かりませんね!しかも肝心の「預手」についての説明が一切ありません。
そこで別のニュースソースを検索すると、もう少し分かりやすい説明が出てきました。以下の通りです。
・預手プランは75歳以上の来店客が300万円以上の出金を希望した場合、現金化に時間を要する「預金小切手」の活用を役職者が勧めた上で、警察に連絡をして一緒に使途を確認する。
なぜ、産経新聞が最も鍵となる「現金化に時間を要する預金小切手の活用を役職者が勧めた上で」のくだりを割愛したのかは分かりませんが、要するに現金だとすぐ振り込まれて、すぐ出金されてしまって行方が分からなくなる一方で、預手=預金小切手の場合は現金化に時間がかかるので、その間に詐欺だったことが分かれば被害を防げる、ということですね。
ではそもそも預金小切手とは何か、ということですが、小切手は小切手でも預金を担保にした小切手なので、限りなく現金に近い=安心して受け取れる小切手です。
通常、小切手は信用をベースにして流通します。つまり「この会社(人)はきちんと銀行に資金があって支払い能力があるだろう」と信じて受け取るわけです。
大体はそれで大丈夫なのですが、万が一、そうした小切手の請求に応えるだけの資金がなくなってしまうと、その小切手は換金できなくなり、それをあてにしていた取引相手は被害をこうむることになります。これが有名な「不渡り」という状況ですね。
そんなわけで、よほどの信用力がない限りは小切手など受け取れないわけですが、一方で預金小切手=預手は違います。これは、記載された金額の裏づけとなる預金残高が存在することを発行する銀行が保証してくれているからですね。
1,000万円の預手は、その銀行がつぶれたりしない限りは必ず1,000万円の現金に交換できるわけで、だからこそ「限りなく現金に近い」小切手なのですね。
さてその預手ですが、発行した銀行に持ち込めば即現金化できますが、そうでない場合=別の銀行に持ち込んだ場合は交換所経由での現金化となり、最短で2営業日、最長だと3〜4営業日となります。
つまりそれまでに詐欺被害に遭ったことに気がつけば、別の銀行で現金化する前に食い止められる、ということですね。
上記記事では、富士宮信用金庫や三島信用金庫の例が紹介されていますが、特にこのようなローカルな金融機関の場合には犯人グループがわざわざ同じ金融機関まで現金化するために赴くのは物理的に不可能でしょうから、より有効だと言えそうです。
振込みが全盛の世の中で、ややレトロな響きのある預金小切手=預手が犯罪防止に有効というのは意外な気もしますが、レトロゆえに有効な面がある、ということですね。
ただし、全国に支店網がある大手金融機関であれば、即時に現金化されてしまうかもしれませんし、そもそもそうした手法に犯人グループが気がつけば、「すぐに現金が必要なので、小切手ではダメだ!」とシナリオに加えることになり、容易に突破されてしまう可能性が高いですね。
やはり、一番大切なのは自衛の意識と、水際で食い止める「75歳以上の来店客が300万円以上の出金を希望した場合、警察に連絡をして一緒に使途を確認する」という部分なのでしょうね。
金融機関や警察関係者のご尽力には頭が下がります。
ちなみにこの「預手」のように「現金化に数日かかる」ことが一定の抑止力があるのであれば、いっそ全ての出金が数日かかる口座を作るというのはどうでしょう?たとえばこんな仕組みです。
・即日現金化できるのは1日10万円まで
・10万円以上の出金は翌営業日
・100万円以上の出金は2営業日
・300万円以上の出金は2営業日+家族の確認
ここまですれば、すくなくともオレオレ詐欺はかなり減るのではないでしょうか?特に被害額は一桁少なくなると思いますし、被害額が少なくなれば詐欺グループも規模を縮小せざるを得ませんので、さらに被害件数が減る相乗効果が期待できそうです。
預手のように突破されてしまう可能性も相対的に減るでしょうしね。
関係者の方はぜひ参考になさってください。もちろん、アイデア料はいただきませんので・・・。
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