最近は銀行の破綻がほとんどないためか、「ペイオフ」という言葉をあまり聞かなくなりました。
90年代には吸収合併まで含めれば、数多くの銀行が実質的に破綻していったわけですが、長かった不良債権問題もようやく抜本的に片がついたということですね。
もしかするとペイオフという言葉をそもそも知らない預金者の方もじわじわ増えているのかもしれませんね!
ちなみにそのペイオフとは何かと言うと銀行が破綻したときの処理方法の1つですが、その銀行の受け皿が決まらないなどの場合に、1,000万円までの預金元本と利息は預金保険機構が保障しつつ、1,000万円を超える部分について清算処理の中で回収できた資金を元手に弁済していくスキームですね。
要するに「銀行が破綻したときに1,000万円までの預金は守られるけれど、1,000万円を超える部分はいくら返ってくるかわからない」というのが、預金者目線からのペイオフということになります。
押さえておきたいのは銀行が破綻したときに必ずしもペイオフが実施されるわけではない、ということですね。むしろ清算コストや、取引先の連鎖倒産リスク、他の銀行の風評リスクなどを考えれば「最悪の選択肢」であり、基本的には吸収合併や公的資金による救済が検討されるものと思います。
銀行ではありませんが、リーマンブラザーズの破綻が引き金を引いたリーマンショックによって、世界の株式市場の時価総額が100兆円以上消失し、金融危機を防ぐために投下された各国の公的資金も100兆円規模となりましたから、やはり金融機関の破綻は「代償が高くつく」のは間違いありません。
とすると規模の大きい銀行については現実問題としてペイオフを伴う破綻処理というのは考えにくいのが実情ですが、とは言いつつそのリスクはゼロではない以上、銀行預金を利用する場合、1つの銀行に1,000万円以上預けないのは「大人のマナー」と言えます。
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その忘れられそうでありながら、忘れてはいけない「ペイオフ」ですが、日本で初めて実施されたことがあるのをご存知でしょうか?
金融コンサルタントであった木村剛氏が創設した新規参入銀行である、日本振興銀行の2010年の破綻処理時に初めてペイオフが発動されたのですね。
融資事業の一部はイオン銀行に引き継がれたものの、預金業務などについては受け皿がなく、そのままペイオフ処理となりました。もちろんそれは、日本振興銀行の規模が小さく、仮にそうした清算処理をしても影響はきわめて限定的と判断されたということでもあります。
報道によれば実際にペイオフの対象となった人=1,000万円超の預金を預けていた人は3,423人とのことですね。日本振興銀行の金利は確かに高かったですが、「法外に高い」と言えるようなものではなく、かつ直近の決算も黒字でしたから、対象になってしまった方々はまさにお気の毒さまと言えます。
それまで一度もペイオフは発動されていませんでしたし、もっと規模が大きければ別の処理方法になったのでしょうしね。
ただし不幸中の幸いと言えるのは、いくらペイオフといえども1,000万円を超える預金が全てゼロになってしまったわけではない、ということです。
銀行から見れば預金の反対側には融資や国債などの運用資産があるわけで、これらの運用資産から回収が進めば進むほど、1,000万円超預金への弁済原資が増えていくことになります。
当初は仮払いとして「25%分」が弁済され、「さすがに少ない」という印象を持ちましたが、2012年4月の第1回弁済ではさらに14%上積みされ、2014年9月の第2回弁済ではさらに29%上積みされました。
つまり・・・累計で58%の弁済率となったのですね!
しっかりした貸し出しをしていたのであれば、「4割も穴が開くなんておかしい」と指摘されるかもしれませんが、一方で上記の通り銀行が破綻すれば取引先も連鎖的に倒産することもありますし(実際に多くの親密企業が破綻しています)、少なくとも貸出金の質が劣化してしまうのは間違いないと思いますので、やはり6割近い弁済率というのは「よくやった方」と言えるのではないでしょうか?
「25%」という当初の仮払い率を大きく上回ったのは事実ですし、上記記事でも指摘されているように「当初想定を2倍以上上回った」わけですしね。「相当がんばった結果」なのでしょう。すばらしい。
ただし、そうは言いつつわれわれ一般の預金者がここから学ぶべきことはもっとネガティブに「ペイオフともなれば1,000万円超の預金の元本が4割も失うかもしれない」という点にあります。
ペイオフ制度をご存知ない方は当然として、ご存知の方も今一度、1つの銀行に資金が集中しすぎていないかどうかチェックしていただければと思います。家族名義であっても名寄せされて1,000万円を超える場合もありますからね。
参考になさってください。
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