前回のコラムではブラックに近いグレーな投資商品として、「ミレニア社のフューチャー投資」を取り上げました。
>>>安心の資産運用?ミレニア社フューチャー投資は魅力的?
そして見渡してみれば、同様のアブナイ投資商品が結構、散見されますね。そんなわけでしばらくそうしたアヤシイ商品を取り上げていきたいと思います。
となるとまず思い出されるのが「みんなで大家さん」ですね。これは個人投資家から資金を集めて不動産ファンドを組成し、投資先の不動産からの収入で分配していくものです。
言ってみればREITのような商品なわけですが、ミソはREITと違って非上場であり、時価がわからないという点です。たとえば償還期限まで分配は約束通り続いたけれど、投資先の不動産の価格が大きく下落しており、償還金が元本割れを起こすといったことがありえるわけですね。
理論的にはその逆=つまり不動産価格が投資時点より上昇していることはないわけではありませんが、土地はともかくとして建物は耐用年数がある以上、毎年必ず価値が下落しているわけであり、現実的にはそうした可能性は低そうです。
それはともかくとして、まず募集案件の内容からこの商品のアヤシサを判断したいと思います。最新の「みんなで大家さん19号」は想定年利回りが7%ということですね。
不動産の投資案件で表面利回りが7%というのは珍しくありません。しかしそこから
・建物価値の下落(減価償却)
・借入利息
・空室率
・税金
・維持費
などをもろもろ引いていくと最終的にはざっくり0〜1%にまで低下するのが通例ですね。これは空室率が想定を上回ると赤字になる水準です。
少なくとも借入をしてしまうと、リターンはほぼ見込めなくなるのではないでしょうか。つまり不動産投資でプラスのリターンを実現するためには自己資金で投資することが重要だということです。
このように考えればこの投資案件=みんなで大家さん19号は、「7%のリターンが得られるけれど、−6%程度の損失が発生する可能性が大きい」と言えます。
そもそも、リスクとリターンは相関しており、日本のような低金利環境であれば「7%のリターンを得るために−6%程度の損失リスクを負う」というのは納得がいきます。
逆に本当にノーリスクで7%のリターンを得られるなら個人投資家の資金を当てにする必要など一切ありません。銀行がおそらく1%前後といった低利で喜んでお金を貸してくれるからですね。
ではこの「みんなで大家さん」のサイトで元本割れリスクについてどう説明されているかと言うと・・・以下のような注意書きがあるのみですね。
・本商品は、不動産投資商品であるため、預金保険の対象ではありません。
・金融機関の預金等とは異なり、元本の保証はされていません。
・本商品は、賃貸収入及び賃貸費用の変動により、利益分配金は変動することがあります。
・みんなで大家さん販売株式会社への譲渡価格も上記要因等により変動します。
・投資した出資持分の価値を含むリスクは、本商品に出資されたお客様に帰属します。
リスクの説明としては確かにその通りではありますが、そもそも「ノーリスクで7%のリターンなどありえない」わけで、こうした注意書きのみでは全く不十分です。
さらに運用実績のページを見てみると1号から17号に至るまで「評価額、想定利回りともに下回ることなく安定した運用をしています」とコメントされており、ここまで来ると「詐欺」と言われてもいたしかたありません。
http://www.minnadeooyasan.com/invest/
というのも評価額が元本を下回らないのは上記のとおり「時価評価していないから」ですね。その証拠にどの回号も評価額は100万円のままとなっています。
もしこれを時価評価したならおそらく、毎年−6%といった「目減り」が発生しているはずですね。10年たてば元本の半分以上が毀損している計算です。
そしてこうしたキャピタルロスは、償還時、つまり物件売却時に発生します。物件売却時には当然、時価で取引されるからですね。そんなわけでネットを検索してみると・・・少なくとも「大家さん4号」や「大家さん7号」については1年以上たっても元本が償還されていないようですね。
それが事実なのであればこのビジネスはすでにほころび始めていることになります。
また、この運用会社の信用力に決定的な疑問が投げかけられたのが、2013年5月に大阪府より出された行政処分ですね。
http://www.webcitation.org/6H0ATiGKO
これによれば、資産が81億円のところ、32億円水増しして113億円にしていたようです。そしてこの「過大計上」の影響を除くと資本は−31億円と・・・何と「債務超過」であることが判明したのですね!
債務超過であるということは、持っている資産より借入が多いということですから、よっぽど収益をあげないかぎり、借入やこうした投資資金の返済は不可能ということですね。
そうしたわけで、表面的にも、実態的にも、行政的にもあきらかにブラックなこの投資ファンドの不思議なところは、上記のとおりまだ新規ファンドの販売が継続しているという点ですね!
既存の投資家の保護のためにはビジネスをぶっ潰すよりも、改心させて真っ当な業務で返金を続けさせた方がいいということなのかもしれませんが、残念ながら同社のWEBサイトを見る限り、「改心」の様子は全くうかがえません。
ちなみに2014年3月期の決算では債務超過が解消されていますが、「みんなで大家さん」の出資金が73億円から67億円に減る中で、15億円近い利益を上げている計算となり、極めて不明瞭です。
http://www.invest-fund.co.jp/ir/
新たな被害者が出ないことを祈りたいと思います。
参考になさってください。
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