当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回は「クーポン年率6%」という響きが魅力的なAIP証券社が提供する「酵素サプリボンド第1回債」ですね。同社については前回のスリランカ預金ファンドに続き2回連続の登場となります。
>>>スマートエクイティ スリランカ預金ファンド5%は魅力的?
本当に6%のリターンが得られるのであればありがたいですが果たしてその中身はどうなのでしょうか?
まずいつもご案内しているようにポイントは以下3つです。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
これらに沿ってチェックしていきましょう。
まず最初に結論から言ってしまえば、この商品については相応にリスクが明示されており、その点では好感が持てると言えます。
社債を通じての投資先はアンフィニプロジェクト社となっています。サプリメント業界に疎い筆者ですが、AIP証券のホームページでは「健康食品分野では5本の指に入るサプライヤー」と紹介されています。
だとすると売上は数百億クラス、従業員も数百人程度はいてもおかしくなさそうですがホームページによれば
・売上高5億円
・従業員8名
となっています・・・完全に中小企業ですね!ちなみに日本のサプリメントの市場規模は1兆5,395億円だそうで、売上高5億円ということは市場シェアはわずか0.03%ということになります。一体どう数えれば「健康食品分野では5本の指に入るサプライヤー」ということになるのでしょうか・・・。
それはともかくとして、今回の資金はアンフィニ社の新商品である「OBATA式酵素」の仕入れ販売資金として利用されるようです。これがうまく売れるのかどうかは全くわかりませんが、競争が極めて激しい上に大手製薬企業や大手食品メーカーがこぞって参入ししのぎを削っている健康食品業界で成功するのは簡単ではないでしょうね。
したがってチェックすべきはこのプロジェクトではなく、同社の経営状況そのものということになりますが、開示されている財務状況はこのようになっています。
営業利益は29百万円、経常利益は22百万円ということですね。やはり中小企業ということになりますが、ただ社債の募集金額が今回の1,000万円にとどまるのであれば問題のない水準と言えるかもしれません。
貸借対照表を見ても自己資本は1億82百万円あり、それなりに十分な体力を持っていると言えます。
ただ一方でおかしな点がないわけではありません。もっとも違和感を感じるのは固定資産がわずか2百万円にとどまる一方で、流動資産が4億92百万円もある点ですね。
固定資産が2百万円ということは土地や建物、機械設備も含め固定的な資産がほとんど全く何もないということです。もちろん今時は「持たざる経営」が流行りですから、こういう資産構成もあり得るのかもしれませんが、ただそれにしては流動資産が多いですね。
流動資産は大きくわけて、現預金と原料・製品に分けられると思います。全て現預金であれば美しいですが、負債が3億11百万円あることを踏まえればそのほとんどが原料・製品ということになります。
もしこれらが「いつかは売れる原料・製品」なのであれば何の問題もありませんが実はそのほとんどが売るに売れない不良在庫かもしれません。何と言っても年間の売上が5億円ですからね。在庫など3ヶ月〜6ヶ月分の1、2億円相当で十分ではないかと思います。
仮に流動資産の内訳を
・現預金 : 1億円
・正常在庫 : 1億円
・不良在庫 : 3億円
とすると、15年分の経常利益が吹き飛び、純資産1億82百万円をもってしても1億円以上の債務超過、ということになりますね。あくまで「仮定に仮定」を加えた話ですので、こうした読みが正しいとは申し上げませんが、投資を検討されている方は十分な情報開示を受けた上で、慎重にご判断いただければと思います。
また、販売会社であるAIP証券においても、どうせ開示するのであればそうした点もしっかり開示してほしいものですね。
固定負債の中身も気になるところです。もしほとんどが銀行借り入れなら、なぜ今回わざわざ法外な利息を払ってまで社債を発行しようとしているのかわかりませんし、逆にほとんど銀行借り入れがないのだとすれば、銀行から資金を調達できない相対的にリスクの高い企業ということになるからですね。
もしそうした疑問が解決できないのであれば手を出さない方が無難と言えます。
またあくまで一般論ではありますが、こうした投資案件の場合、投資家の資金が本当に全額この社債に向かう保証は残念ながらありません。悪意があればそのまま横流しですし、悪意がなくても会社が傾けば顧客の資金に手をつけるのが「常道」と言えます。
ことお金に関しては顧客は「性悪説」で判断すべきですし、販売会社もそうした「性悪説」に耐えるだけの体制作り・仕組み作り・説明が当然求められます。
個人的には権限も実務力もある、金融庁を筆頭とする監督官庁がしっかりこうした投資商品の中身をチェックしてほしいのですが・・・。
参考になさってください。
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