当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはロードスターキャピタル社が運営するOwnersBook(オーナーズブック)ですね。
ちなみにこのオーナーズブックを取り上げるのは2回目で、前回はこうでした。
>>>OwnersBook予定利回り5%は魅力的?
メザニンローンのリスクや、実質的な貸出先であるロードスターキャピタル社の財務内容の情報開示がほとんどない点に疑義を投げかけたわけですが、それなりに的を得た指摘になっていたのではないでしょうか?手前味噌ではありますが・・・。
では上記記事から1年半が経ってそうした問題点は改善されたのでしょうか?されていないのでしょうか?
ということで同社の最新の募集案件をチェックしたいと思います。「杉並区新築マンション第1号ファンド第1回」ですが概要はこのような感じです。
予定利回り5.0%がなかなか魅力的である一方、他のクラウドファンディング案件の利回りと比較すれば低く、却って安心感を感じなくもありません。
ただまだ投資の中身は全く分かっておりませんので、その詳細をチェックしてみたいと思います。抜粋していくと概ねこのような内容です。
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東京都杉並区永福に所在する新築マンション1棟を担保とするメザニンローンへの投資となります。
1.建物状況 : 2016年8月に竣工した地上4階建の建物1棟が対象です。維持・管理の状態は良好です。
2.交通・接近条件 : 東京都杉並区永福に位置しており、京王井の頭線へのアクセスが良好な立地です。
3.賃貸借の状況 : 募集開始直後で、1〜4階まで住居として賃貸する予定となっております。約20uのワンルームと約35uの1LDKタイプから構成されております。募集賃料は平均13,900円(月額、坪単価、共益費込)となっており、外部不動産鑑定士により査定された住居部分の貸室賃料(新規賃料)とほぼ同額となっております。
4.物件評価額 : OwnersBook評価額は、外部不動産鑑定士による査定額と同額の26,100万円と査定しております。今回の物件に対する募集金額は、そのうちの約19.2%となります。
5.貸付先 : 東京都目黒区に所在する不動産保有会社Hとなります。設立後3年未満で直近は赤字決算となっていますが、赤字幅は僅少となっています。
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まず言えることは・・・全然情報が足りない!ということですね。「維持・管理の状態は良好です」とのことですが、その根拠は判然としません。「京王井の頭線へのアクセスが良好」
と言われても、それが徒歩1分なのか5分なのか、はたまた10分なのかで意味合いが全く変わってきます。
また立地が分からなければ、「募集賃料は平均13,900円」 と言われても妥当なのかどうか判断できません。
さらに不動産の評価額が「26,100万円」と言われても、土地面積や建物面積などの物件情報が分からなければこれまた適正かどうかわかりません。
しかし何といってもリスクを感じるのは貸付先の企業が3年未満の会社で赤字決算であるという点ですね!何年経てば経営が安定するのかは分かりませんが、少なくとも3年や5年とするなら「3年未満」というのはかなり危なっかしいです。「赤字決算」ならなおさらですし・・・。
当然、投資家はこの債務者のリスクを直接的に引き受けるわけで、詳細な財務内容の開示・説明が求められるのは言うまでもありません。
加えて前回のコラムと同様ですが、「メザニンローン」のリスクについてもしっかり理解しておく必要があります。同社HPではこのように説明されています。
評価額2億6,100万円に対して、まず銀行のローンが1億5,000万円あって、このオーナーズブック分は「その次」の5,000万円分、ということですね。もし仮に売却する必要が出てきて売却価格が2億円を下回った場合、真っ先に損が出るのはこのメザニンローン=オーナーズブック分だということです。
言い換えれば2億6,100万円→2億円=−24%以上、土地建物の評価が下がらなければ元本は守られるというわけですが、ただこの2億6,100万円という評価が本当に妥当なのかどうかは上記の通り情報がなく判然としません。
仮に本当は2億円未満の価値しかないのであれば、投資家は最初から「含み損」を抱えることになります。
そうしたわけでもう少しこの物件の評価を調査すべくSUUMOで永福町にある4階建ての新築マンションを探してみると適合するマンションは1つしかありません。これですね。
この推測が正しいという前提で調べていくと毎月の家賃は9戸分で約100万円くらいのようです。年間では約1,200万円の計算ですね。ただ空室率などを勘案すると実質的にはその9割の約1,080万円といった感じでしょうか。
次に新築マンションの投資利回りはどれくらいなのでしょうね?仮に5%〜7%だとすると評価額はこのようになってきます。
・5% : 2億1,600万円
・6% : 1億8,000万円
・7% : 1億5,400万円
何だか嫌な数字になってきましたね・・・間を取って6%だとするとこの物件の賃料から推定される価値は1億8,000万円であり、最初からこのメザニンローン部分は「担保でフルカバーされていない」ことになります。
他方で、評価額が1億8,000万円であり、銀行が1億5,000万円貸したのだとするとその融資割合は83%ということで・・・かなりしっくりきます。
さらには担保価格をオーバーしているからこそ債務者は法外な金利を受け入れたのだとするとこれまたしっくりきます。赤字企業ですしね。
もちろんこうした推測が大きく外れている可能性もありますが、それは記者のせいではなく、投資家に開示されている情報が極めて少ないからですね。困ったものです。
そうしたわけで現段階ではこの案件への投資は慎重にならざるを得ないわけですが、ここで見方を変えて債務者の視点からこのマンション投資の採算を考えてみたいと思います。
まず収入は上記の通り空室率を勘案した上で6%=1,080万円ということですね。
次に支出面ではざっくり以下のような感じとなるのではないでしょうか。
・利息(銀行分/3%) : 450万円
・利息(オーナーズブック分/7%) : 350万円
・税金 : 90万円
・建物の減価償却 : 180万円
・修繕費用 : 50万円
数字はかなり適当ですが、これで1,120万円。つまり債務者の損益は最初からマイナスであるということですね!
さらに賃料は建物の老朽化に伴い徐々に下がっていきますので、その赤字幅はどんどん広がっていくことになります。
とすると投資採算の面からもこの案件は「無理筋」という気がするのですがいかがでしょう。
期待しているわけではありませんが、本当に物件が売却され、このオーナーズブック分のローン元本に損失が発生する可能性は十分ありえる、ということですね。
あくまで推測に推測を加えたものではありますが、 こうした点にもご注意いただければと思います。
これから投資しようとされている方はこれらのリスクをしっかり調べた上で慎重に判断されることをオススメします。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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