当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは都市綜研インベストファンド株式会社が運用する「みんなで大家さん伊勢」ですね。「みんなで大家さん」という商品名を広告などで見た人は少なくないかもしれません。
当サイトでもすでに常連となっておりまして過去のコラムを列挙してみるとこうなります。
>>>6.1%の高金利な投資 みんなで大家さんは魅力的?
>>>みんなで大家さんの債務不履行=デフォルト率は70%?
>>>想定利回り7.0%!みんなで大家さん19号は魅力的?
>>>行政処分!「みんなで大家さん」のその後は?
なかなかしぶとく頑張っておられるわけですが、久しぶりに広告をクリックしてみると上記の通り「みんなで大家さん伊勢」ということで「伊勢・安土桃山文化村施設」に投資するファンドを立ち上げたようですね。
「伊勢・安土桃山文化村」という名前を聞いたことがない人の方が多いと思いますが、同社HPから引用すると「三重県伊勢市内にある戦国時代を再現したテーマパークです。平成5年に総工費300億円を投じて作られ、開村から23周年目を迎えました。また、2年前に駐車場の一部に大型の太陽光パネルが設置され、売電事業も行っている施設です。」とのことです。
この「伊勢・安土桃山文化村」の中の「劇場・奉行所」=41,951.06平方メートルに1口100万円×3,000口=30億円を投資し、想定賃料は2億6,250万円とのことです。8.75%の表面利回り、というわけですね。
とすると7%の想定利回りも余裕で配当できることになりますが、果たしてこの投資は魅力的でしょうか?
結論から言えば・・・全く分かりません。と言うのも
1.「伊勢・安土桃山文化村」の損益状態が分からない。
2.「伊勢・安土桃山文化村」の不動産としての価値が分からない。
3.運用主体である都市綜研インベストファンド株式会社の損益状況が分からない。※貸借対照表は公表されています。
からですね。もちろん内容がよくわからないものに投資すべきでないのは当然です。
もし投資を検討している方はこれらの点をしっかり精査した上でご検討ください・・・と結ぶと話が終わってしまいますのでもう少し調べてみたいと思います。
まず朝日新聞のこちらの記事を読むと来場者数について以下のような指摘があります。
・開業した93年には約180万人が訪れたが、昨年(2007年)は約10万人に落ち込んだ。
18分の1というのはすごいですね!実際、途中で経営が変わったようですから、当時、厳しい経営状態が続いていたのは間違いないと思います。
いずれにしても10年前で10万人ですから、少子高齢化が進む中、今はさらに落ち込んでいてもおかしくありませんが、とりあえずこの10万人をベースに損益を考えてみます。
まず料金はこういうことですね。
・大人 : 入場のみ/2,500円 有料館セット券/3,900円
・中高生 : 入場のみ/1,200円 有料館セット券/2,500円
・小学生 : 入場のみ/ 900円 有料館セット券/2,000円
恐らく多くの方がセット券を選ぶのではないかと思いますので、大人2人+中高生1人+小学生1人の家庭を想定すると料金合計は10,400円ということになります。
昼ごはんが1人1,500円として6,000円。ジュースやらお土産やらで3,600円とすればトータル2万円。1人あたり5,000円の客単価ですね。
で、10万人ですから年間の売り上げは5億円ということになります。
同じ朝日新聞の記事で従業員は40人ということですから1人あたりのコストを250万円とすると1億円ですね。
また同社が指摘するように総工費300億円で、耐用年数が40年とすると減価償却だけで年7億5,000万円のコストとなります。
もちろん減価償却はキャッシュアウトするものではありませんし、経営が変わった時点で大幅に償却されている可能性がありますが、ただそれでも開園から40年後=2033年=今から17年後に同じものを建てようとするなら、年7億5,000万円ずつ貯金しないといけないということですね。
加えて何もせず建物・施設が40年持つわけではありませんので、維持・管理コストは別途かかります。仮に減価償却の「10分の1」としても7,500万円ですね。
また飲食にも原価があるわけで30%〜50%のようですので間をとって40%とすると、上記計算に基づけば1人あたり960円×10万人=約1億円となります。
つまり売り上げ5億円に対して、人件費1億円+維持管理7,500万円+原価1億円をコストとするなら、残りは2億2,500万円ということになります。
この時点ですでに上記想定賃料2億6,250万円は「払えない」ということですね。
しかも3期に分けて販売するということですから、同額募集するとなれば必要な賃料は2億6,250万円×3倍=7億8,750万円に跳ね上がります。ここまで来れば「絶対無理」という感じが漂ってきます。
同社HPを見れば「3期に分け販売させていただき、より魅力的な体験型テーマパークとして大規模リニューアルオープンをして参ります。」とのことですので、30億円×3期=90億円をぶっこむということかもしれませんが、そうなると入場者数を2倍や3倍に増やさないといけない、ということになりそうです。
+10%や+20%ではなく2倍や3倍ですからね!絶望的に感じてしまうのは記者だけでしょうか?
加えてそもそも論となってきますが、この想定賃料=2億6,250万円の算出根拠が分かりません。というのも上記の通り今回の取得面積は41,951.06平方メートル=
約4ヘクタールなわけですが、wikiによれば全体の面積は33.4ヘクタールのようです。単純に言えば全体の約12%であり、上記の通り売り上げが5億円とすると面積あたりの賃料配分は6,000万円にしかなりません。
今回の取得対象は「劇場と奉行所」とのことですが、個別の入館料はこのようになっているようです。
・伊賀忍者妖術屋敷 : 300円
・妖怪屋敷 : 300円
・怨霊首無寺 : 300円
・忍者修行砦 : 300円
・ニャンまげ劇場 : 300円
・ちょんまげ3Dっぽい劇場 : 300円
・山田奉行所 : 500円
・大江戸劇場紅屋 : 500円
・忍者からくり迷路 : 500円
・安土城 : 500円
・大忍者劇場 : 600円
奉行所が1人あたり500円、劇場が一番高い「大忍者劇場」を指すなら1人あたり600円です。仮に10万人の来場者全員が割高なこの個別料金をおそらく大人料金で払ったとしても年間1億1,000万円にしかなりません。
不透明ですね・・・。
結論を言えば、5億円程度しかないと目される売り上げから2億6,250万円も賃料を取り上げてしまうと経営が成り立たないのは自明なような気がしますがどうでしょうか。
繰り返しになりますが、こちらのファンドへの投資を検討されている方は上記のような疑念点をしっかりクリアにした上で判断していただければと思います。
そして何か1つでも引っ掛かるものがある場合は自重した方がよいのは当然です。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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