当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはトレイダーズネット.infoのFXに関する広告ですね。このような広告が配信されておりました。
確かにFXで100万円稼ぐことは可能でしょうけれど、残念ながらそれは100万円損するリスクと背中合わせですね。株式相場、商品相場などさまざまな「相場」があるわけですが、中でもFXで取引を行う為替相場は安定的に勝つのが特に難しい相場と言えます。
その理由は主に2つですが、1つ目は為替相場は「ゼロサムゲーム」であるという点です。為替相場が何か本質的な富を生み出しているわけではありませんので、基本的に投資家の損益は全体でプラスマイナスゼロとなります。
FXの場合、利息=スワップポイントがありますが、これも基本的には金利差に基づくものですので厳密に言えば「無価値」です。金利が高い通貨はいずれインフレ=通貨安となり、もらった利息=スワップポイントは中長期的には「為替差損」できっちり相殺されるからですね。
とすると自分が勝てば誰かが負け、誰かが勝てば自分が負けるわけですから平均的な勝率は5割です。
つまりは勝ちもしない代わりに損もしない、というわけで悪くないようにも聞こえますが、ただ実際には取引のたびに手数料が取られますので、手数料分は必ず負けます。
要するにFXは統計的には「手数料分だけ必ず負ける」取引なのですね。その点が企業の利益成長をベースに半永久的な値上がりが期待できるかもしれない株式とは異なる点です。
株価が下がり続ける日本の株式のような例外もありますが・・・。
為替で勝つのが難しい2つ目の理由は、「為替相場は相対評価」であるという点です。例えばドル円で言えば、日米の金利差や経済成長率、財政状況、政治状況、景気の過熱感、貿易などの実需が相場に影響してくるわけですが、どちらかにポジティブorネガティブな材料が出てくれば相場の流れは一気に変わる可能性をはらんでいます。
また、日本円にポジティブな材料があったとしても、ドルにもっと強いポジティブな材料が出てくれば、円安ドル高に向かうことになります。どのような材料があるかだけでなく、「どちらが強いか」も予想しないといけないので為替相場の予測は難しいのですね!
これまた景気がよくなれば上がり、景気が悪くなれば下がる株価とは異なる点です。
という事でFXで「安定的に」勝つのが難しいということをご理解いただけたと思いますが、そうした目線で上記広告を見ると特に「月収100万円以上稼ぐことも可能」という表現が「悪質」と言えます。
FX取引の損益は、「月収」から最も遠いところにある概念だからですね。本当にFXで「月収」100万円が実現可能なら記者はヘビーユーザーです・・・。
すでにこの時点でこの広告が悪質であることが判明しているわけですが、リンク先をチェックしてみると以下のような表現があります。
「貴方は知っていましたか?今や多くの方がこのFXで稼いでいる事を。多い人で毎月100万円以上、少ない人でも5万円前後の利益をあげられています。是非、この機会にFXを始めてみては如何でしょうか。」
はい、これはもう「悪質」と言うよりは「嘘」なわけですからアウトです。故意であれば「詐欺」ですね。
「毎月」100万円以上というのがほぼ不可能なことに加えて、一体どこのデータを見れば「少ない人でも5万円前後の利益をあげられています」ということになるのでしょうか・・・。
繰り返しになりますが為替相場は「ゼロサム」ですので、「全員が毎月5万円以上の利益を上げる」というのは理論上も現実的にも不可能です。一体その損失を誰が負担しているという想定なのでしょうか・・・。
記者の理解ではFX取引が何度も問題となったことから、こうした扇動的な広告表現は自主規制されています。ということでこちらのサイトの「広告主」を見ると以下2社となっています。
FX会社は主なところだけでも10以上ある点を踏まえれば、この2社は奇跡的に広告に対する規制が緩い、ということなのですかね?「月収」が少なくとも5万円前後は期待できると信じて口座を開設した人からクレームが殺到しそうですが・・・。
ちなみに「当サイトが実施した調査では以下の組み合わせが人気でした」とのことですが、紹介しているのが2社だけなので当然かと思います。
なお本当にFX口座を探している方にアドバイスをするとすれば、大切なのはもちろん取引手数料=スプレッドです。その点が触れられていない点でも、こちらのサイトは真面目にFX会社を紹介する気はない、ということなのでしょう。
さてこちらの広告手法に対する批判はそれくらいにしておいて、実際のFX口座の損益状況というのはどうなっているのでしょうか?外為どっとコムの調査によればここ数年で利益を上げた人と損をした人の推移はこのようになっているようです。
勝ったり負けたりしていることが鮮明ですが、さらに言えば「円安になれば勝ち、円高になれば負ける」ということですね。
では損をした人の方が多かった2016年の損益状況はと言うとこういうことのようです。
数もさることながら負けっぷりも悲惨ですね・・・3割以上元本を減らした方が2割以上となっておりダントツです。
さらにこちらのサイトさんから引用させていただくと、「YAHOO!のファイナンススタジアムで公開されている5216人のランキング情報からデータを取得して、FXの取引実態に迫ってみます。」ということで以下のような結果が報告されております。
まず利益をあげた人と損をした人との人数はこのようになっています。
これがどういった期間の取引データに基づくものなのかは分かりませんが、損をした人がやや多いという点では外為どっとコム社の2015年の結果と近しい感じがします。2016年1月の記事なのでタイミング的にもピッタリです。
しかし衝撃的なのはその「損益額合計」ですね。このようになっています。
人数比はそれほどでもないのですが、利益額と損失額の差は歴然としていますね!3億円の利益に対して13億円の損失・・・為替相場が「ゼロサム」だとすれば、誰かがこの差額の10億円の為替差益を得たはずですが、日本の個人投資家ではないのは間違いありません。
このようにFXで利益が出ない理由をさらに探りたい気もしますが、さすがに長くなってきましたので今回はこのあたりで打ち止めとしたいと思います。
いずれにしても問題のサイトが謳っているような、FX取引から「多い人で毎月100万円以上、少ない人でも5万円前後の利益をあげられています。」という宣伝文句は「真っ赤なウソ」であることをご理解いただければと思います。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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