当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはソーシャルレンディングサービス比較サイトであるクラウドポートです。
ソーシャルレンディングについては、日経新聞などの大手メディアを含め、その趣旨や先進性を礼賛する記事は数多くあれど、リスクを指摘する記事がほとんど全くないことに苛立ちを隠せない記者ですが、この「クラウドポート」はいかがでしょう?
ぜひ、実際にリスクを負う個人投資家サイドに立った運営を期待したいわけですが、まずその比較表をチェックしてみるとこうなります。
残念ながら利回りなどがそのまま掲載されているだけで、客観的なリスク分析は皆無です。あえて言えば右端に「担保」欄があり、そこで担保状況が一覧できますが、例えば一番上の「ガイアアロハローンファンド」は「全額担保あり」となっています。
全額分の担保があって利回りが9%ということなら願ったりかなったりという感じではありますが、ただ常識的に考えればリスクとリターンは比例しているわけで、9%のリターンがあるなら、それに見合うだけのリスクがないといけません。
もしリスクがないならリターンはもっと少なくなるはずですからね。
とするとこの案件には
・担保以外の部分でリスクがある
・担保そのものにリスクがある
はずですが、そうした分析は少なくとも一覧上では確認できません。
そんなわけで案件詳細をチェックしてみるとこうなっています。
−−−
今回の借り手は、米国向け不動産融資を行う事業者L社です。事業者Lは、不動産事業者に対して仕入れ資金(物件購入代、工事費等)を融資します。今般は、事業者Lの融資金として計1億2100万円を募集させていただきます。
事業者Lは本融資に際し、本購入物件を担保として設定しますが、現時点において担保物件の完成後の予定評価額(BPO/Broker Price
Opinion)は約1億5600万円となっております。なお、本案件の担保順位は1位です。
【本物件について】
ハワイ州オアフ島カネオヘ地区の美しいルラニオーシャンを臨む高級住宅建築プロジェクトです。開発事業者は現在、20のプロジェクト、28の物件の様々なリノベーションを手掛ける、オアフ島で最も大きな事業者の一つです。
今回は、これまで手掛けていた業者から、既に工事が進んでいるプロジェクトを引き継ぐ救済案件で、建築計画を改善、物件を完成まで導きます。このエリアの住宅のレベルに合う建物にするために、中〜高程度のアップグレードとカスタマイズを施します。
現在、物件のデューデリジェンスと、許認可の状況確認を行っているところです。修正案を具体化するにあたり、さらに許認可を取得する必要が生じる可能性があります。その場合は、第三者にレビュアーを依頼することで、許認可取得のスピードアップをはかります。
※抜粋
−−−
まず実際に借りるのは「米国向け不動産融資を行う事業者L社」とのことですが、その信用力は全く分かりません。
1億2,100万円の総融資に対して1億5,600万円の担保ということですが、この価値はあくまで完成後の予定評価額ということですね。つまり完成しなければ「担保割れ」になる可能性は十分ありそうです。
要するに投資家として知りたいのは「完成前」の現時点での物件価値ということになります。おそらく・・・1億2,100万円を下回る可能性は高そうですね。もしそうならやはり「担保割れ」ということになります。
さらに気になるのが「これまで手掛けていた業者から、既に工事が進んでいるプロジェクトを引き継ぐ救済案件」という説明です。正直で大変よろしいのですが、何がダメで頓挫し、なぜ今度は大丈夫なのか一切触れられておりません。
アメリカ同様、ハワイの景気も悪くないと思いますので、経営問題ではないとすれば、プロジェクトの「筋が悪い」可能性は十分ありそうです。
加えてとどめとなりそうなのが、「現在、物件のデューデリジェンスと、許認可の状況確認を行っているところ」というくだりですね。これまた正直ではあるのですが、デューデリジェンスとは「物件評価」のことです。つまりまだこの物件の正確な評価は行われていないようです!
とするとなぜ予定評価額=1億5,600万円という話が出てきたのでしょうか・・・つまりこの金額はあくまで「これくらいで売れてほしい」と言った期待値程度のものなのでしょうね。
さらに許認可でもしNGがあったらどうするのでしょう?当然、開発はストップすることになります。
で、何が問題かと言えば・・・全く順番が違うということですね!
M&Aも銀行融資もそうですが、まず最初にこうしたデューデリジェンスと、許認可の状況確認が行われ、それがクリアされれば金額が決まり、その上で売買や融資が行われるのですね。
つまり「お金が動くのは一番最後」ということです。当然ですね。
そう考えると今の段階で投資資金の募集が行われているというのは極めて不健全です。「あり得ない」と言ってもいいかもしれません。
ソーシャルレンディング=クラウドファンディングの「闇」は深いですね・・・。
今回のコラムの検証対象はこの「ガイアアロハローンファンド」ではなく、それを掲載している「クラウドポート」ではあるのですが、誰が見ても明らかなリスクには目をつむり、素人の投資家を結果的に扇動しているのであれば相応の紹介責任は免れないですね。同社の役員には弁護士も名を連ねているようですから、ぜひしっかりそうしたリスクにも目を配ってほしいものです。
さもないと、ソーシャルレンディング=クラウドファンディングの健全な成長は見込めませんし、それはつまり自社サービスも健全な成長が期待できないということでもあります。当方がどうこう言うことではないのですがぜひ投資家目線に立った運営を期待したいものです。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
![]() |
定期預金に関するあなたのクチコミを教えてください。クチコミは人気銀行を中心に順次掲載いたします。 メールの場合はこちらから |
![]() |