当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは以前も取り上げたみんなのクレジットですね。積極的にネットで広告を実施しているようですので目にした人もおられるかもしれません。
上記の通り運用利回りが最大14.5%ということで、低金利に慣れ親しんだ預金者にとって目も頭もクラクラするような高金利ですが、果たしてこの「みんなのクレジット」は魅力的な投資対象なのでしょうか?
ということで前回のコラムを読み直してみるとこのような点を指摘させていただきました。
・「元本割れ案件は1件もない」「元本割れ案件0件」と言った表現を通じて、あたかも同社の扱う投資案件が「極めて安全である」という印象を与えております。もし同社の投資案件が元本割れが発生しにくい極めて安全なものであるなら、見ず知らずの投資家に対して最大12%(当時)ものリターンを払ってまで資金集めする必要など一切ありません。
・すべての案件が「担保付き」だとすると、「担保があるのに15%や20%の金利を払わないとお金を借りられない会社」というのは一体、どういった企業なのですかね?思いつくのは以下4つしかありません。
1.担保があっても業績が悪く回収の見込みが立たない
2.担保に価値がない
3.反社会的企業
4.担保があるというのは虚偽
・どれであっても、やはりハイリスクです。常識的に考えれば、この「みんなのクレジット」への投資は「ハイリスク」であり、その事実を全く開示していない以上、故意かどうかはともかくとして結果的に「悪質」と評価せざるを得ません。
>>>最大利回り12%!みんなのクレジットは魅力的?
そんな素人目から見ても悪質な資金集めを行っていた「みんなのクレジット」ですが、ついに証券取引等監視委員会の検査を受け、以下のように指摘・勧告されています。
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・当社の貸付先は、そのほとんどが当社の親会社である株式会社甲(以下「甲」という。)及びその関係会社(当社、甲及びその関係会社を合わせて以下「甲グループ」という。)となっており、貸付先が甲グループに集中している状況となっている。当社は、貸付先の審査の段階から、甲グループへの貸付けを予定していたにもかかわらず、ウェブサイトにおいて、ファンドが複数の不動産事業会社等に対し貸付けを予定しているかのような表示をし、貸倒れリスクが分散されているかのような誤解を与える表示を行った上で、顧客に対し、出資持分の取得勧誘を行っていた。
・甲は、ファンドから借り入れた資金の返済について、不動産事業等による収益から返済する旨をウェブサイトに記載しているが、実際には、他の償還期限が到来していないファンドの資金を充当しているものも認められた。
・当社は、取得勧誘を行ったファンドについて、契約締結前交付書面において、原則として貸付先から不動産若しくは有価証券の担保を受け入れ、返済が滞った場合には、担保権の実行により貸付金の回収を図る旨を表示している。しかし、実際は、貸付先のほとんどが甲グループであり、設定された担保の大半が甲の発行する未公開株式となっており、中には担保が設定されていない貸付けも存在する状況となっている。
・このように、当社は、甲グループの信用リスクが顕在化した場合には価値が大きく毀損する甲の発行する有価証券を担保としているほか、貸付けの中には担保設定していないものが存在しているにもかかわらず、ファンドの貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示を行った上で、顧客に対し、ファンドの出資持分の取得勧誘を行っている。
・当社が取得勧誘を行ったファンドのうち、既に償還された17本のファンドの償還金の原資を検証したところ、10本について、他の償還期限が到来していないファンドの資金が償還金に充当されている状況が認められた。
・当社は、ファンドの募集を開始して以降、キャッシュバックキャンペーンと称して、顧客に現金を還元しているが、当該現金還元の原資を検証したところ、甲へ貸し付けたファンド出資金が当社に還流して充当されている状況が認められた。
・白石代表は、当社が甲に貸し付けたファンド出資金について、甲の社員に指示を出し、自身の預金口座及び自身の債権者に送金させている状況が認められた。
・甲グループの一部の会社は、甲グループの他の一部の会社を引受人とする増資を行っている。当該増資については、ファンド出資金が甲グループ内で貸付け、借入れが繰り返された後に充当されている状況が認められた。
・当社は、ファンド出資金の最大の貸付先である甲が、平成28年5月末から同年11月末の間、毎月多額の損失を出し続け、累積赤字を増加させており、同年8月末から同年10月末においては債務超過の状態にあったことを認識していた。甲は、同年11月末、増資により債務超過状態を解消しているが、一方で、同年5月以降、ファンドから毎月多額の資金を借り入れていたことから、同年11月末時点における短期借入金が流動資産を大きく上回る状況となっている。また、平成28年11月末時点における甲グループ全体の財務状況についても、短期借入金の総額が流動資産を大きく上回っている状況となっていることから、ファンドからの甲グループへの貸付けは返済が滞る可能性が高い状況と認められる。
>>>株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について
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全くどうしようもない状態ですが、問題点を平たくまとめていくとこういうことでしょうか。
1.集めたお金のほとんどを親会社に融資していた。
2.集めたお金の返済に、新たに集めたお金を流用していた。
3.担保は自分の会社の未公開株であり、担保として無価値だった(潰れたらおしまい)。
4.集めたお金の一部を白石代表が個人的に横領していた。
5.その親会社は毎月多額の損失を出し続け、累積赤字を増加させており、債務超過の状態。返済が滞る可能性が高い。
最悪ですね・・・。
法的にこれを詐欺と言えるかどうかは、故意だったか検証する必要があるわけですが、一般的な言葉の意味からすると、上記の通り何から何まで嘘でお金を集め、親会社の窮状を知りながら結果的に利息どころか元本の返済すら危ぶまれる状態を作り出しているわけですから、「詐欺」と言いきってしまって良いと思います。
既に投資されている方には気の毒ですが、新たな被害者を生まないためにも1日も早く行政処分が科され、資金集めが停止になることを願いたいと思います。
どうせまた新たな会社を立ち上げて資金集めに走るだけなのかもしれませんが・・・。
なおこの指摘に対して会社側は以下のように反論しています。
>>>証券取引等監視委員会の勧告について(詳細版)
1.集めたお金のほとんどを親会社に融資していた。
→有力な融資先が確保できなかったから。
2.集めたお金の返済に、新たに集めたお金を流用していた。
→全ての融資を管理しており中期的な観点からは問題ない。
3.担保は自分の会社の未公開株であり、担保として無価値だった(潰れたらおしまい)。
→契約書の不備だった。
4.集めたお金の一部を白石代表が個人的に横領していた。
→全額を完済した。
5.その親会社は毎月多額の損失を出し続け、累積赤字を増加させており、債務超過の状態。返済が滞る可能性が高い。
→2017年3月時点では売り上げは順調でファンドの返済が困難になる状況は回避された。
いかがでしょうか?
まず1つ目の「有力な融資先が確保できなかったから」 というのは、その時点で資金集めを停止すればよかったわけで全く理由になりません。
2つ目の「全ての融資を管理しており中期的な観点からは問題ない」というのも意味が分かりません。投資家の資金はすべて分別管理されていなければいけないのは当たり前で、資金流用が許されるわけがありません。
3つ目の「契約書の不備だった」という点も、そもそも担保が無価値だったという点に対して何の説明にもなっていません。
4つ目の「全額を完済した」 というのも全く言い訳になりません。結果的に資金集めをした人のポケットに入ったわけですから、横領以外の何物でもないですね。
5つ目の「2017年3月時点では売り上げは順調でファンドの返済が困難になる状況は回避された」
というのも、「2017年2月以前はファンド返済が困難になる状況だった」と認めているわけで論外ですね!ファンド返済が困難になる状況を認識していながら、それを周知せず、むしろ「安全だ」と謳って資金集めをしていたわけですから、「詐欺」以外の何物でもありません。
加えて、これまで嘘をつき続けてきた同社が「今はもう安全だ」と言われて信じる人はいるのでしょうか?
百歩譲ってこれが真実だとしても、何ら証拠を示していない以上信じるわけにはいきません。そもそも親会社の名前すら公表されていませんからね。
そんなわけで当サイトが怪しい怪しいと指摘してきたクラウドファンディング=ソーシャルレンディングに、いよいよ監督官庁のメスが入ったことになります。
今後、何等かの規制が行われていくのだと思いますが、まず実施してほしいのが貸付先だけでなく、そのクラウドファンディング=ソーシャルレンディング会社自身の財務状況・損益状況の開示ですね。それを見れば経営の実態が察しがつきます。
もちろん、適当な財務諸表では困るわけで、大手監査法人の監査を必須とすれば透明性は格段に高まるのではないでしょうか。
また今回のように赤字の親会社に資金を吸収されてしまう可能性もありますので、親会社の情報開示も必要になってきます。
とは言いつつどれも当たり前と言えば当たり前ですし、金融庁にとっても、クラウドファンディング=ソーシャルレンディング会社にとっても負担の少ない、実施が容易な規制だと言えます。
関係者におかれましてはぜひ前向きにご検討ください。
なお、上記の通り前回のコラムでは「担保があるのに高利回り」という点について以下のようなケースを想定したわけですが・・・
1.担保があっても業績が悪く回収の見込みが立たない
2.担保に価値がない
3.反社会的企業
4.担保があるというのは虚偽
結果的には「どれも正解」でしたね。あららら・・・。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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