当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社トラストファイナンスの「トラストレンディング」ですね。
こちらは融資型クラウドファンディング=ソーシャルレンディングの1つですが、このソーシャルレンディングについては、積極的な広告を行っていた「みんなのクレジット」社が詐欺まがいの業務運営を行っていたということですでに業務停止命令を受けています。
>>>利回り14.5%!みんなのクレジットはやっぱり詐欺
また、記者自身この融資型クラウドファンディングのビジネスモデルを全く信用しておりません。そうしたわけで、ややもすれば「粗を探す」スタンスとなってしまうことを予めご了承いただければと思います。
ではここから具体的にこの「トラストレンディング」の募集案件をチェックしていこうと思いますが、まず今募集中の「不動産担保付ローンファンド54号」はこのような内容になっています。
・募集金額 : 2,010万円
・運用期間 : 17ヶ月
・利回り : 7%
期間も手ごろな上に利回りが7%となれば、興味がない人でも前に乗り出してしまうのではないかと思いますが、この案件は魅力的なのでしょうか?
まずこの投資案件の中身をチェックしてみると同社HP上ではこのように紹介されています。
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・本借入の目的
本借入人は流動性の高いエリアの物件を対象に土地(場合によっては建物付)を取得しマンションを建設します。そうした不動産は他の不動産デベロッパーも探している為、一般市場に出回ることなく業者間のみで売買されることが少なくありません。本借入人は主に、そうした不動産を即時に取得するための機動的な資金を確保するため、本物件を担保に供し、本借入を希望しています。
・募集金額
本借入人は本物件を担保に当該募集金額(20,000,000円)を含め、総額320,000,000円(本物件は既に101,000,000円をトラストレンディングより調達しています。)の募集を予定しています。借入人の資金需要のタイミングに合わせて適宜ご案内します。
・担保について
本物件に対して極度額370,000,000円とする第一順位根抵当権仮登記を設定します。本物件は現在マンションを建設中で、本年8月中旬の竣工・引渡し予定となっています。
また本物件には、銀行により80,000,000円の第一順位根抵当権が設定されていますが、トラストレンディング不動産担保付ローンファンド51号及び同52号の貸付により一括返済し、遅滞なく本物件に対して新たに第一順位根抵当権仮登記を設定いたします。
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いかがでしょうか?
まず借り入れの目的として「機動的な資金を確保するためにトラストレンディングを利用している」とのことですが、総額3億2千万円の必要資金のうち、トラストレンディング経由ではまだ1億1百万円しか集めていないわけですね。全く機動的ではなさそうです・・・。
さらに百歩譲って金額はともかくとしてトラストレンディングの貸出自体は機動的なのだとしても、今年8月に竣工=完成ということはすでに開発から少なくとも2、3年は経過しているはずです。となればそのような「すぐに貸してくれるけれど金利の高い資金」はすっかり返済して、より金利が低く、安定的な銀行借り入れにシフトしているはずですね。
何といってもカネ余りの時代ですし、銀行は貸出先を一生懸命探しています。さらに物件も完成間近となれば融資リスクはかなり低下しているはずで、銀行は喜んで貸してくれるはずですし、100%の担保があれば金利もさすがに7%(実際にはトラストレンディング側の利ザヤが乗っていると思いますので10%程度?)よりは低いものと思います。
経済合理性からすれば借入人にとってこのタイミングでトラストレンディングを利用するメリットは全くないはずです。それでも利用しないといけないのだとすれば、銀行から低利での借り入れができないようなリスクの高い借入人であり、融資案件である可能性があります。
しかも不可解なのは上記の通り「本物件には、銀行により80,000,000円の第一順位根抵当権が設定されていますが、トラストレンディング不動産担保付ローンファンド51号及び同52号の貸付により一括返済」するとされている点ですね。
銀行借り入れによりトラストレンディングからの借り入れを一括返済するなら話はわかりますが、トラストレンディングからの借り入れで銀行借り入れを一括返済するというのはどういう理屈でしょうか・・・全く理解できません。あるとすれば、信用力悪化などの理由によって銀行から返済を求められているケースです。
加えて、引き渡しまで後4ヶ月というこのタイミングで運用期間17ヶ月の資金を借りる必要もまったくわかりません。同社HPによればこの借入人は「主に金融機関等の富裕層顧客に当該マンション1棟を売却するビジネスモデルを展開」しているということですから、引き渡しの時点で開発資金+利益が全額回収できるはずです。
なぜ17ヶ月なのでしょうか?その説明もまったくないですね。
同じく不可解な点としては、上記の通り「トラストレンディング不動産担保付ローンファンド51号及び同52号の貸付により一括返済し、遅滞なく本物件に対して新たに第一順位根抵当権仮登記を設定」とのことですが、すでに「54号」となっている時点でこの文言が残っているのはなぜでしょうか?「遅滞」しているのでしょうか。
また、肝心の融資物件に対する説明が皆無というのも気になるところです。たとえば大まかな所在地や土地の面積、建物面積、部屋数などが分かればおおよその市場価格が推測できるものと思います。
逆にそれがなければ3億2千万円という投資金額や、3億7千万円という抵当権の妥当性が全く把握できないことになります。こうした情報開示でよく投資資金が集まると思えたものですねぇ。
実際には上記の通り順調に資金が集まっているようですが(苦笑)。
いずれにしても投資にあたってはこうした疑問点をすべて解消した上で、より正しいリスク判断のもと、その是非を検討していただければと思います。
ここで視点を変えて運営主体であるトラストファイナンス社についてチェックしたいと思います。事業内容を見てみると以下のようになっています。
・法人融資
・アセットファイナンス
・不動産担保ローン
・ソーシャルレンディング
など
要するに融資主体のノンバンクビジネスを行っているということですね。これはソーシャルレンディングを行う上では悪くない業態です。というのも繰り返しになりますがカネ余りの日本で何が大変かと言えば「融資先を探すこと」ですね。
実際、上記業務停止中の「みんなのクレジット」社は集めたお金のほとんどを自社で流用していました。融資実態が見えないのに積極的に資金集めをしているソーシャルレンディングはやはり怪しいと言わざるを得ません。
それはともかくとして、その点ではこのトラストファイナンス社はすでに融資先を持っているのだとすればソーシャルレンディングとの親和性は高いです。
また、このトラストレンディングの運用利回りは「4%〜12%」となっていますが、法人融資の場合は「4%〜17.8%」、不動産担保ローンも「4%〜17.8%」ということで借入と貸し出しの利率の辻褄は合っています。
ではこのようにすでに自社で融資業務を行っている会社がソーシャルレンディングも行っている場合、投資家としては何を気にしないといけないのでしょうか?
それはこの会社の立場になって考えればすぐに分かります。自社の融資先で危ない先はあればどんどんソーシャルレンディングに肩代わりさせれば良いのですね。何と言ってもソーシャルレンディングの融資リスクは投資家に帰属します。そもそも採算の良い融資先をわざわざソーシャルレンディングに提供するはずがありません。
うがった見方だという意見もあるかもしれませんが、ビジネスも投資も「自己利益最優先」というのが大原則です。ある意味、トラストファイナンス社からすれば、そのようにソーシャルレンディングを利用しない方が「おかしい」と言えます。違法でない限り、経済合理性に則って運営されていくのは資本主義、そして株式会社の基本です。営利目的ですからね。
そうした投資家との利益相反リスクについても注意していただければと思います。
最後にこのトラストファイナンス社の財務状況をチェックしてみるとこうなっています。
この数字が正しい保証などどこにもありませんが、一応「正しい」という前提で話を進めていくと、資本金は1億円もある一方で、純資産は1億11百万円しかありません。純資産=資本金+内部留保ですから、過去10年間の経営で利益が11百万円しか貯まっていないということですね!
さらに2014年6月期決算では純資産が1億円を割り込んでおり、累積損失が貯まっていたことが分かります。
また直近の2016年6月期の利益はわずか1千万円です。サラリーマンでもこれ以上の年収がある人は数多くいます。
申し訳ないですが、要するに経営体力が極めて脆弱であるということですね!仮に何等かの理由で今回の案件がコケた場合、同社がカバーする体力は全くありません。
今回の案件に問題がなくても、他の業務がコケればやはりすぐに経営危機に陥るものと思います。資本金は厚いのですが。
どこのソーシャルレンディング運営会社も経営内容は似たり寄ったりかもしれませんし、同社は正しいかどうかはともかくとして開示しているだけでもまだマシですが、しかし具体的な数字を見てしまうとますます不安が募ります。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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