当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはSmartLend株式会社の「スマートレンド」ですね。
こちらは融資型クラウドファンディング=ソーシャルレンディングの1つですが、このソーシャルレンディングについては、積極的な広告を行っていた「みんなのクレジット」社が詐欺まがいの業務運営を行っていたということですでに業務停止命令を受けています。
>>>利回り14.5%!みんなのクレジットはやっぱり詐欺
また、記者自身この融資型クラウドファンディングのビジネスモデルを全く信用しておりません。そうしたわけで、ややもすれば「粗を探す」スタンスとなってしまうことを予めご了承いただければと思います。
ではここから具体的にこの「スマートレンド」の募集案件をチェックしていこうと思いますが、まず今募集中の「事業支援型ローンファンド 第3号」はこのような内容になっています。
・募集金額 : 1,505万円
・運用期間 : 15ヶ月
・利回り : 6.5%
期間も手ごろな上に利回りが6.5%となれば誰でも食いついてしまいそうなものですが、この案件は魅力的なのでしょうか?
まずこの投資案件の中身をチェックしてみると同社HP上ではこのように紹介されています。
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・対象事業者 : エステティックサロンを利用する女性向けのクレジットサービスを営む事業者I。
・事業者Iの特徴 :
優良なエステティックサロン(以下、エステという)を自社専用クレジットカードの加盟店として、その加盟店を利用される女性客にクレジットカードを発行し、利用代金を割賦返済できる金融サービスを提供しています。
特に、エステティック業界は大手を除きクレジットカード利用ができないエステが多い中、独自の厳格なる加盟店審査の下、優良エステに対する加盟店化の促進に力を入れ、割賦返済でのエステ利用を容易にしたことから女性客に大変好評を得ています。
開業6年目を迎え、加盟店数500店舗、利用中の顧客数約12,000人と順調に成長を続けています。
「包括信用購入あっせん業者登録」(経済産業省)の認可を受け、関連法令を遵守したクレジット会社です。
・融資金の使途・流れ
融資金は、加盟店拡大、及び顧客のクレジットカード利用増に伴うエステへの顧客利用代金の立替え金のほか、事業者Iの事業資金の一部として用いられます。
エステの顧客は、事業者Iに対してクレジットカードの利用代金を毎月分割して返済します。
返済原資は、エステの顧客からの分割回収金及び収益となります。
・SmartLend Eye
分割回収金の回収率は99%と非常に高く、返済原資は十分に確保できています。
実質自己資本比率は50%と健全な財務内容となっています。
過去3,000万円の融資に対して期日通りの返済実績があります。
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いかがでしょうか?
まずこの事業者Iのビジネス実態が全く分かりませんね。「開業6年目」「加盟店500店」などと言ったヒントから、いろいろなキーワードで検索しましたが、それらしい会社は全く出てきませんでした。
トップクラスの会社が「2,700店舗」ということですので、そこそこの規模のはずなのですがこうもヒットしないと本当かな?と疑ってしまいます。
また、クレジットカードからの手数料は3〜5%程度のようですので、その立て替え資金として利率6.5%の借入を充てると赤字になってしまいますね。
ただエステの顧客が分割払いを選び、その間6.5%を大きく上回る金利を負担してくれるのであればその限りではありませんが、とは言いつつクレジットカード利用者全員が分割払いを選ぶわけではないでしょうし、その損益はよく分かりません。
加えて「分割回収金の回収率は99%と非常に高く、返済原資は十分」、「実質自己資本比率は50%と健全な財務内容」
ということなのであれば、銀行からもっと低金利で資金を借りることができるはずです。
カード利用者への債権が担保となるのかどうかは分かりませんが、個人に薄く広く分散された貸し出しは少なくとも良く分からないクレジットカード会社より信用力があるはずで、となると銀行借り入れはさすがに6.5%を下回ってくるのではないかと思います。
とするとこのI社がなぜ割高なスマートレンドを頼るのか全く分かりませんね。
しかしそれでも現実的にはスマートレンドを利用しているわけですから、性悪説に立てば「どこかに落とし穴がある」と考えた方が良さそうです。実際、そうなのでしょうけれど。
もしかすると「エステの分割払い」は反社会的ということで銀行の融資がつきにくいといった事情があるのかもしれませんが、もしそうだとするとI社はビジネスモデル自体にリスクを抱えていることになります。たとえば「エステの分割払いはダメ」と言った規制が入れば市場は一気に消滅するわけですからね。
この案件への投資を検討している方は、この6.5%という利回りに見合うリスクがどこにあるのか慎重にお調べください。
そしてもしリスクが見つからなければ、「ノーリスク・ハイリターン」などありえないわけですから、「信用できない」という結論で良いと思います。
なお、上記のみんなのクレジット社の詐欺事件を踏まえれば運営会社リスクも考慮する必要があります。この場合はSmartLend株式会社のリスクですね。
というわけで財務情報をチェックしてみると「誠に申し訳ございませんが、現在、公開中の財務情報はございません。平成28年度の財務情報につきましては、只今、準備中でございます。」と記載されております。
確かに2017年4月末というタイミングを考えれば、平成28年度の財務情報が準備中というのは分からなくもありません。しかしこの会社の設立は2015年10月ですからね!3月決算であれば、2016年3月期決算があるはずですし、遅くとも設立から丸1年後の2016年9月期決算がすでに完了しているはずです。
もちろん半年ごとの中間決算も公開可能なのであって、設立から1年半経ってもまだ準備中というのは全く納得できません。要するにこれは「公開しない」「公開したくない」「公開できない」と言っているに等しく、これまた常識的に考えれば「信用できない」ということになりそうですね。
ちなみに気になったのが代表者の方のこの挨拶です。
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今後当社は、小口分散された金融事業に特化したソーシャルレンディングとして、戦略の方針転換を図りたいと考えております。方針転換にあたり、より強固な体制とすべく、金融分野に長年の経験を持つ私が新代表に就任させて頂いた次第です。
この分野には様々な事情から、ニーズがあるにも関わらず資金がつきにくい状況にあります。これは日本でも海外でも同じ状況にあります。そのような背景で、米国で急成長を遂げたソーシャルレンディングも小口の金融事業であります。
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設立1年半、サービス開始から1年で「方針転換」も何もない気がしますが、そこからイメージされることは「うまくいっていない」ということですね。
また「小口分散された金融事業」は「様々な事情から、ニーズがあるにも関わらず資金がつきにくい状況にあります」とのことですが、そんな話は聞いたことがありません。むしろメガバンクが積極的にカードローンビジネスに注力するなど競争が過熱している分野かと思います。
仮にそれでも「資金がつきにくい」とすれば、そもそも借入人に信用力がないか、上記の通り「反社会的」ということではないですかねぇ。
なお海外でソーシャルレンディングが急成長したのは「資金がつきにくい」からと言うより単純に「金利水準が高い」からですね。貸し出し金利が高ければ、資金の貸し手と借り手との間を「中抜き」して直接結び付けることで十分な利益が得られますが、日本のように超低金利だとそうもいきません。
だからこそ海外でソーシャルレンディングが勃興して10年近く経つのに日本で全く流行っていないわけです。本当に代表者の方は「金融分野に長年の経験を持つ」方なのですかねぇ。
いずれにしてもこの案件に限らずですが、リターンの裏にはリスクがあるはずで、それが見えない場合は手を出さないのが賢明です。国債金利が0.0X%のこの時代に、ノーリスクで6.5%のリターンをくれるお人好しなど存在するはずがありません。
こうした話をすると「リスクを取らずにリターンなどない!」と言ったお叱りを受けることがありますが、何も「リスクを取ってはいけない」と言っているわけではありません。
言いたいことは、事前にしっかりリスクを把握した上で、そのリスクとリターンが見合っているか慎重に検討すべし、ということです。その点ではこの案件のようにリスクがよくわからないケースというのは「論外」というのが私見です。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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