当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはロードスターキャピタルのクラウドファンディングである、OwnersBookですね。
OwnersBookについては以前も取り上げたことがありますので、当時の指摘事項を再チェックしてみたいと思います。
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貸付先ですが、それがどこかと言うと・・・何とロードスターキャピタル社自身であるということですね!結局のところ、この「OwnbersBook」とは「ロードスターキャピタルの、ロードスターキャピタルによる、ロードスターキャピタルのための集金スキーム」ということですね。
ロードスターキャピタル社が倒れれば一蓮托生となる可能性が高いです。もちろん格付けをとったとしても「投資不適格」レベルでしょうから、投資不適格の会社に5%といった金利でお金を貸せる気になるかどうかがポイントになってくるということになります。
そこで重要になってくるのがこのロードスターキャピタル社の財務内容ですね。どれくらい儲かっているのか、財務内容がキレイなのか、それとも借金まみれなのか、また株主構成はどうなっているのかも重要になってくるわけですが、サイトを確認した限り・・・一切開示されていませんね!
当然積極的な情報開示が求められるわけですが、それがないとすればその投資家保護姿勢も含めて、残念ながら投資は自重した方がよさそうです。
>>>OwnersBook予定利回り5%は魅力的?
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2年半前に書いた記事ですが、特段修正すべき点はなさそうです。手前味噌ですが・・・。
さて現在のこのOwnersBookの募集案件はと言うとこのようになっています。
この直近3案件の貸出先はいずれも共通でこのように紹介されています。
・総合不動産会社Aは東京都中央区に所在し、過去3年は黒字で安定した経常利益を計上しております。
つまり情報が無さ過ぎて相変わらずそのリスクを把握することは困難ですが、従来と違ってロードスターキャピタル自身に融資しているわけではないという点は一歩前進ですね。
ただこのA社は上記金利に手数料2%を上乗せした6.0%〜7.0%でも融資を受けたいわけで、要するにそれだけ会社の信用力がないか、担保力がないか、その両方か、ということになります。
もし担保があって信用力もあれば銀行から1%や2%と言った低利で借りられるはずですからね。投資家の方々は「相当、ハイリスクな会社に融資をしている」という感覚を強く持っていただければと思います。
そうしたわけで繰り返しになりますがリスクが把握できない以上、これら4%〜5%の投資利回りがリスクに見合った適正なものなのかは判断できませんので、記者が投資することはありません。
さて今回、2年半ぶりにこのOwnersBookを取り上げた理由というのは、親会社であるロードスターキャピタル社がこの度上場することになったからですね!図らずも前回のコラムで指摘した「情報開示」がこれでしっかりなされることになります。
ではその財務内容はどうなっているかと言うと概略はこのようになります。
急成長しているわけですね!前年度=2016年度は売上高が47億円、経常利益が6億8千万円となかなかの規模です。売り上げが100億、利益が10億を超えてくれば「中堅企業」といった感じになってきますね。
ただ一方で資産がおよそ140億円ということは、これらがすべてクラウドファンディングビジネスに関わるものだとすると売り上げも利益も同社の取り分である2%=約3億円にとどまるはずです。
その10倍以上の売り上げというのは一体どういうカラクリなのか調べてみると分かりました。収益の内訳はこのようになっています。
つまり売り上げのほぼ100%は、自分たちで物件を買って自分たちで物件を売ったり賃貸に回したりする、自社不動産売買ビジネスで構成されているということですね。クラウドファンディングに関する売り上げはわずか7百万円、つまり全体の0.15%しかありません・・・。
要するに同社にとってクラウドファンディング事業は本業でも何でもなく、傍流の傍流ということです。
極論すれば「ほぼやる意味がない」とさえ言えそうな規模ですが、もしかすると実はそこにこそ同社の狙いがあるのかもしれません。以前から当然上場を目指していたものと思いますが、単なる不動産投資会社だとオールドエコノミーであり、それほど株価に高値がつくとは思えません。
しかしそこに「クラウドファンディング」というスパイスを混ぜるだけで、あっと言う間に「フィンテック企業」となり、下手すれば2倍や5倍と言った株価が期待できそうです。だとするとなかなかズル賢いIPO戦略ですね!まぁ、株主としてキャピタルゲインを得られる機会がそこしかないとすれば十分な戦略を立てるのは当然かもしれませんが。
いずれにしてもクラウドファンディングには大きく
・融資先企業のリスク
・運営会社のリスク
の2つがあるのだとすると、このOwnersBookの場合、後者のリスクが明確になったという点ではポジティブに受け止めてよさそうです。
もちろんいくら運営会社が黒字であっても、融資先企業が返済してくれなければ投資家は損失を被ることになりますので、本質的なリスクはそのままですが・・・。
また運営会社のリスクについても、リーマンショック後に真っ先に倒産したのは不動産投資会社であったことは頭の片隅に入れておいていただければと思います。銀行からの融資が止まり、土地の値段が半値になれば、どんな不動産投資会社だって潰れます。
ちなみにこのロードスターキャピタル社の借入金利の利率はこのようになっています。
短期借入金が1.27%、長期借入金が1.14%ということですね!長期借入の方が金利が低いのが驚きですが、ここから分かることは2つあります。
1つ目は、このように創業間もないロードスターキャピタル社でさえ、担保があれば1%近い金利で借入ができるということです。とすると、上記A社のように6.0%〜7.0%の金利でしか融資が受けられない会社はいかにリスクが高い先であるのか想像できますね。
2つ目は、ロードスターキャピタル社が1%近い金利で資金を調達できるなら、クラウドファンディングを通じて5%前後の金利の資金を集める必要など全然ないということです。自分たちが融資すれば差額の5.0%〜6.0%のマージンを丸々もらえますからね。
そうしないということは、上記の通りあくまでIPO計画の一環として必要のない事業をしている可能性はありますが、素直に考えればクラウドファンディングの融資先は「自分のお金なら6.0%〜7.0%の金利をもらっても貸したくない先」ということかと思います。
それ以外の解釈があるなら教えてほしいものです・・・。
いずれにしてもこれだけ金利が低い日本で4%や5%といったリターンが喧伝されているということは、当然それに見合うだけのリスクがないと「おかしい」わけですね。じっくりそのリスクを精査していただければと思います。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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