当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回は想定利回りが6.5%と魅力的な、クラウドリアルティのクラウドファンディングである「渋谷区上原シェア保育園」を取り上げたいと思います。
ちなみにこのクラウドリアルティについては過去も取り上げておりまして、その時のコラムはこちらです。
>>>利回り10%!クラウドリアルティは魅力的?
なぜ投資家に高い配当を払うのか、クラウドリアルティ側のメリットが理解できず「慈善事業のつもり?」という印象を強く受けました。
ただその後もクラウドリアルティ社は着実にスタートアップの歩みを続けているようで、同社を巡ってはこのような動きがありました。
・2017/7:「MUFG Digitalアクセラレータ」第2期でグランプリ受賞
・2017/8:NTTデータ主催「第6回グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト」で、グランプリ受賞
・2017/11:SBI FinTechファンド、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJキャピタル、 カブドットコム証券から総額3.5億円調達
立て続けにグランプリを獲得しているのは素晴らしいですね!前者の報道を見ると以下のような点が評価されたようです。
「日本初となる京町家の証券化・資金調達プロジェクトを実現。この仕組みを利用することで、地方の資金需要者とリスクマネーの提供者とつなぎ、地域で資金が循環する仕組みを構築し、地方創生につなげたいという思いがある。」
「地域での資金循環」「地方創生」と言ったコンセプトが受けた、ということですね。なるほど。
しかし記者が再びこのクラウドリアルティを取り上げてみたいと思ったのは、このグランプリ受賞のニュースではなく、「三菱東京UFJ銀行などから3.5億円調達した」というニュースの方ですね。
これによって同社商品の安全性が高まるわけでも、同社の経営基盤が持続的に安定するわけでも、同社の信用力が直接高まるわけでもありませんが、しかし現時点で大手金融機関が同社に対して「投資可能」と判断したということには一定の安心感を感じることができそうです。
では実際に個人投資家として、同社商品への投資はアリでしょうか?ナシでしょうか?
それを判断するために最新の投資案件である「渋谷区上原シェア保育園」についてチェックしてみたいと思います。中身はこのようになっています。
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・プロジェクト正式名称:渋谷区上原シェア保育園ファンド
・投資対象:保育施設の底地
・募集総額174,000,000円
・想定運用期間:36ヶ月
・想定利回り:6.5%(税引前)
・同社運用手数料:年率0.2%
・物件情報:本プロジェクトは、渋谷区上原地区に所在しており、周辺には代々木上原駅・東北沢駅があり、渋谷・新宿などのターミナル駅に近く、閑静な住宅街となっています。また徒歩圏内に東京大学駒場キャンパスなども存在している地域となっています。
・周辺施設:東京大学駒場キャンパス徒歩5分、駒場公園徒歩3分、岸辺幼稚園徒歩3分
・主要駅:小田急線東北沢駅徒歩9分、小田急線代々木上原駅徒歩10分、千代田線代々木上原駅徒歩10分
・土地所在地:渋谷区上原
・敷地面積:190.29u
・権利:所有権
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まずこの1億74百万円という金額がこの190平方メートルの土地を取得する対価として適正かどうかですか、SUUMOなどでチェックすると坪あたり300〜400万円程度で取引されているようです。とすると「1億73百万円〜2億30百万円」ということになりますので、妥当な金額と言えそうですね。
では次に6.5%と言う利回りが妥当かどうかという点ですが、投資家として申し分がないのは自明ですので、「借り手」の立場ではどうか考えてみたいと思います。
まずポイントとなってくるのはこれは「底地」であり、建物は保育園を運営する学校法人が建てるということです。つまりはこの6.5%の配当の原資は「地代」ということになります。
地代の目安に対する考え方はいろいろあるようですが、分かりやすいのは「更地価格の1.5〜3.0%」というものです。そこからすると、この6.5%というのは明らかに「高すぎ」ですね。
また、仮にこの学校法人が銀行から融資を受けて土地を購入する場合は、十分な担保があり、公益性にも問題ないわけですから、1%〜3%といった金利で融資を受けられるのではないでしょうか?
とするとやはり「6.5%」という地代は高すぎですね!仮に3%に抑えられば1億74百万円×3年ですから、1,800万円近く支払いを減らせることになります。このクラウドファンディングを通じて、学校法人側が1,800万円も余計に地代を払う背景や、その経済合理性は全く不明です。
実際にはクラウドリアルティ社に対して支払う手数料もありますので、他社並みの+2%=8.5%とすると、もはやこれまた「慈善事業」ですね・・・。
そうしたわけで、なぜこのような高い配当が払えるのか全く分かりません。もしあるとすればこんな感じでしょうか。
・この学校法人がクラウドファンディングを通じてPR効果を狙っている。
・この学校法人はもっと短い期間での買い取りを計画している。
・建設や保育園の許認可には相当のリスクがあり、そのリスクを投資家に転嫁している。
・この学校法人の経営は不振で、銀行から融資を借りられないか、借りられたとしても6.5%(8.5%?)以上の金利になってしまう。
現時点では理由は定かではありませんが、資本主義の社会である以上、それぞれの経営判断は経済的なメリットがあることが前提になってきます。その「経済的なメリット」が見えないということは、投資リスクに直結しますので、それだけで投資を見送る十分な理由になりそうです。
次にチェックしないといけないのは運営会社であるクラウドリアルティ社自身のリスクですね。もし同社の経営が傾けば、投資家の資金は間違いなく同社の運転資金に費消されてしまうからです。
では2014年12月設立の同社の経営・財務状況はと言うと・・・全く開示されていません。すでに会社設立から3年近くが経過しているのに1回も開示されていないというのは「開示する意思がない」ということですね。
正直今回取り上げたのは、上記の通り大手金融機関の増資によって、多少は財務状況が開示されたりしていないかと思ったのですが、甘かったです・・・。少なくとも記者は財務状況が開示されていない会社を通じて投資することはないと思います。
ちなみにこれまでの資金調達額はざっと約3億円です。ただその過半がこの「シェア保育園」ですので、投資家ではなく同社自身が得られた利息収益は6百万円程度と想定されます。
従業員はサイトに載っている6人だとし、6百万円を約3年で分割すると年収は1人あたり約30万円ということになります。「月収」ではなく「年収」がです。絶対大赤字ですね!そもそも利益が3年で6百万円だとすると賃料や光熱費などの固定費すら賄えそうにありません。
今回の出資=3.5億円で一息つけるのでしょうけれど、赤字経営を続ける限り、3年後か、5年後かは分かりませんが、確実に「死期」が近づいてくることになります。
それを望んでいるわけではありませんが、そうした懸念を払しょくするためにも財務状況の開示を期待したいと思います。
なお最後に、ここまで掲載されている情報が正しいものとしてコメントしてきましたが、仮に掲載されている情報が正しくない場合はお手上げです。会社が傾けば最初に行われるのは「経営状態について嘘をつくこと」ですからご注意ください。
そうしたわけで、繰り返しになりますが大手金融機関が出資を決めたというのはポジティブに受け止めてよいとは思いますが、それだけで投資判断するわけにいきませんし、他社も同様ですが、あまりに情報が少なすぎですね!
どうしても投資をされたいという方は上記のような疑問をしっかり解消した上で慎重に検討いただければと思います。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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