当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは都市綜研インベストファンド株式会社が運用する「みんなで大家さん」ですね。商品名を広告などで見た人は少なくないかもしれません。
当サイトでもすでに常連となっておりまして過去のコラムを列挙してみるとこうなります。
>>>口コミで怪しいと言われる、みんなで大家さんの最新の評判
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんの疑問点をまとめると
>>>利回り6.1%!みんなで大家さんはやはり疑惑だらけ
>>>利回り7%!みんなで大家さん伊勢は魅力的?
>>>元本割れナシ年利6%!みんなで大家さんは魅力的?
>>>6.1%の高金利な投資 みんなで大家さんは魅力的?
>>>みんなで大家さんの債務不履行=デフォルト率は70%?
>>>想定利回り7.0%!みんなで大家さん19号は魅力的?
>>>行政処分!「みんなで大家さん」のその後は?
調べれば調べるほど辻褄が合わないことばかりですが、それでも営業が続いているのは・・・新規資金が流入し続けているからでしょうね。少なくとも集めた資金の7%程度の新規入金があれば利払いは続けられます。
逆に言えばそうした新規入金が止まればいよいよ「本当の姿」が見えてくるわけですが、早く見たいような、いや見たくないような気もします。
いずれにしても被害が拡大する前に実態を調べることができるのは行政なわけですから、しっかりチェックしてほしいものです。素人目から見ても上記の通り辻褄が合わないことだらけです。
さてそんな腑に落ちないことばかりの「みんなで大家さん」ですが、気が付けば新たな商品を発売しています。何かといえば「みんなで大家さんファーム1号」ですね。同社ページから引用するとこういった商品です。
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対象不動産は、常識では不可能とされている「純国産バナナ」を生産する農業法人施設です。「純国産バナナ」は糖度25 度と普通のバナナの1.5倍以上も甘く、完全無農薬で栽培することで、皮ごと食べられる驚きのバナナです。その話題性からテレビや雑誌、人気YouTuber
にも紹介され、大手デパートで完売になるほどの人気商品となっています。
バナナは本来、年間を通して16 度〜 30 度の気温がないと育てられない熱帯の果物です。そのため日本の環境では成長速度が遅い、葉が成長しても果実が実らない等、バナナの栽培には適しません。しかしそのような環境の中で、正真正銘の「純国産バナナ」として栽培を可能にする技術があります。それが特許技術「凍結解凍覚醒法」です。
バナナの苗に人工的に氷河期を体験させ、植物本来の力を覚醒させます。覚醒した苗は耐寒性がつき、零下の環境でも育ちます。また耐寒性だけでなく病害虫耐性も高まり、無農薬栽培が可能となります。さらには遺伝子の転写速度が増すことで、驚くほどの速さで成長するため収益最大化を期待できます。
みんなで大家さんファーム1号は収穫したバナナの熟成、梱包・出荷を行う施設を農業法人に賃貸し、そこで得られる賃料を分配いたします。
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調べてみると確かに「凍結解凍覚醒法」を利用した「純バナナ」はあります。株式会社D&Tファームが販売している「岡山もんげーバナナ」ですね。実際にテレビでも紹介されているようですし、相応の人気もあるようです。
ただこの「みんなで大家さんファーム1号」の物件概要はこのようになっています。
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物件名:青果熟成加工物流センター
所在地:南九州市川辺町平山字京田4109番地2、4108番地
敷地面積:6250.91平方メートル
種別:工場・機械室
想定賃貸利益:213,000千円(税別)
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南九州市ですね・・・。とすると「岡山もんげーバナナ」のサイトに表記されているこの文言が気になります。
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もんげーバナナRの類似品にご注意ください。もんげーバナナRは、凍結解凍覚醒法処理した苗を栽培収穫された岡山県産のバナナです。
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ただこの「凍結解凍覚醒法」を開発し、特許保有者でもある田中節三氏は技術供与に積極的なようですので、このみんなで大家さんファーム1号=青果熟成加工物流センターは正式な提携先である可能性もありますが、少なくとも「南九州市産」の凍結解凍覚醒法を利用した純バナナは1本も市場に出ていないと思いますので、実際に販売が開始してから投資の是非を検討するのが無難そうです。
バナナが売れなければ1円も回収できなくなるわけですからね。
次に総額24億円にものぼるこの青果熟成加工物流センターへの投資が妥当かどうか考えてみたいと思います。 まずこの「南九州市川辺町平山字京田4109番地」を調べてみると確かにありますね・・・仏壇製作所が。
潰れてしまったのかどうか調べてみてもネットには何も出てきませんが、いずれにしても仏壇製作所を居抜きで購入して「収穫したバナナの熟成、梱包・出荷を行う施設」として利用するというのは全く納得できません。24億円ですからね!常識的に考えればその百分の一の2,400万円のプレハブ施設で十分なのではないかと思います。
24億円でバナナ農園を造成するという話であれば、金額はともかくその使途は納得できますが。
次に南九州市の土地価格はどうなっているかと言うと平均1万4,712円/平方メートルだそうです。敷地面積が6,250.91平方メートルですから単純計算すれば土地代は9,196万円ということですね。
そもそも種別は「工場・機械室」となっていますので土地代が含まれているのかは未詳ですが・・・。
次にその「工場・機械室」の建物代を計算してみたいと思います。まず南九州市の売り工場の代金をチェックしてみると、ネットで2件見つかりました。
・売工場1 : 使用部分面積864.89u/土地面積3,283.96u=3,900万円
・売工場2 : 使用部分面積1,515.98u/土地面積4,133.44u=5,680万円
よく考えればこれら売り工場には土地代が含まれていますので「土地代+建物代」ということになりそうですが、この青果熟成加工物流センターの敷地面積が6,250.91平方メートルということを勘案すれば、建物代を含めても1億円を超えることは・・・なさそうですね。
ちなみに南九州市近隣の出水市の売り工場の詳細はこうなっていました。
・売工場3 : 建築面積4,522.88u/土地面積13,460.02u=1億6,500万円
土地面積が2倍以上でも1億6,500万円です。とするとやはりこの物件価格が1億円を超えることはないのでしょう。仮に1億円としても、その24倍の代金を払うということですから全く合理的な価格ではないですね。
百歩譲って2億円でも12倍です。もし株式会社なら間違いなく株主代表訴訟で訴えられるでしょうね。もし行政がこんな値段で購入したら大スキャンダルになるものと思います。投資ファンドなら・・・いいのでしたっけ?金融庁さん。
というわけですでに結論が出ている気がしますが、次のポイントは年間の賃料=2億1,300万円ですね。
上記の通り2倍の広さの工場ですら1億6,500万円で購入できるのに、誰が毎年2億1,300万円の賃料を払うというのでしょうか?絶対あり得ないですね・・・。
なおバナナ1本の利益がいくらか知りませんが、高級バナナであることを勘案して1本100円としても2億1,300万円の賃料を払うには年間213万本以上出荷される必要があります。
実際には賃料以外に人件費などもかかるわけで、その倍の年間400万本くらい売れないとペイしないかもしれません。恐らく1農業法人の販売数量としては「天文学的な規模」ということになるのではないでしょうか。
最後のポイントとしては、いつも指摘していることですが、なぜわざわざこの農業法人は7.1%もの利息を実質的に負担しないといけないのか?という点です。
新規参入であることを勘案すれば確かに融資がおりにくいのかもしれませんが、しかし農業ですからね。農業系金融機関からもっと低利で借りられるのは間違いないと思います。
払う必要のない利息を払うと言っているわけですから、「怪しい」と考えるのが自然ですね。
いずれにしても、経済合理性の観点から言えば説明がつかないことばかりですね!慎重な検討が必要と思われます。
なお、このファンドを運営している都市綜研インベストファンド株式会社は、「112億円の第3者割当増資が行われた」と発表しています。
>>>「112億円の資本金増強のお知らせ」
事実であれば今まで受け入れた出資金=122億円をほとんどカバーできる金額ということになりますが、肝心の引受先はこのように記載されています。
・成田ゲートウェイプロジェクト1号株式会社
・成田ゲートウェイプロジェクト2号株式会社
恐らく特別目的会社だと思いますが、いずれにしても実際の資金の出し手は全く分かりません。その点ではやはりこちらも「眉唾」と思っておいた方が良さそうです。
そもそも資金使途として「みんなで大家さん事業の解約準備金・新規物件購入資金」というのも全く良く分かりません。ファンドの利益も損もすべて投資家に帰するものであって、他の投資家の資金を使っての解約などできないのではないでしょうか?
本当にそうした出資金があるのかどうか、そしてその出資金がどのように利用されるのか、その推移を見守っていきたいと思います。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
−−− 2018年1月15日追記 −−−
上記記事について、読者の方から以下のような連絡をいただきました。
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みんなで大家さん4号、6号、8号、10号で運用をしており今まで満期になっても元本が償還されず、配当のみが振り込まれていたものですが、この度、2018/01/12付にて上記4商品の元本が100パーセント償還入金されましたので、増資の方は本当の様です。
またファー厶1号の方は、みんなで大家さんの商品写真やはり、この仏壇製作所を裏側から写したものですね。まだやっているようでこれは明らかに詐欺ですね。
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真偽は分かりませんが参考になさってください。
なお仮にこちらの内容が事実とすると、同社は「4号、6号、8号、10号」の償還が滞っていたにも関わらず、「元本割れ無し!」と銘打って資金集めをしていたわけで、相当悪質だと感じました。
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