当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社スマートデイズが募集していた、「シェアハウス投資」です。残念ながらその投資勧誘に使われた資料がないため、あまり迫力がありませんが、こういった内容が喧伝されていたようです。
1.都内新築シェアハウス投資利回り8%!
2.サブリース!
3.リスクなし!
4.寄宿舎スタイルで合法!
内容としては、個人投資家が資金を出して都内に新築シェアハウスを建てる投資となりますが、賃料から想定される利回りは8%であり、さらにそこにスマートデイズ社のサブリース(家賃保証)がつくので「リスクなし」というわけですね。
また、当時はシェアハウスの法的な位置づけがはっきりしていなかったために、「合法」という点もセールスポイントとなったのでしょう。
いずれにしても、「リスクなし」で8%のリターンが得られるのであればありがたいことですが、もちろん世の中にそんなうまい話はありません。
この投資には「スマートデイズ社」「投資家(所有者)」「銀行」の3者がいるわけですが、その関係性はこのようになります。
そしていみじくもこの図に書き込まれているように、スマートデイズ社から投資家(所有者)への家賃支払いが停止し、家賃が入ってこなければ投資家(所有者)はアパートローンの返済ができませんので、現在約800人ともいわれる投資家の方々は自己破産の危機に直面している、というわけです。
投資家の方々からすれば「シャレにならない事態」となってしまっているわけですが、ただ一方で腑に落ちない点もあります。確かに賃料が入ってこなければローンの返済が滞るわけですが、しかしそれでも投資家の手元には実物資産としてのシェアハウスがあるわけです。
別の管理会社を使うなり、投資家自身が管理して入居者を集めれば再び家賃が入ってくることになります。
また、自分で管理するのが面倒なのであればとっと売却してしまえばいいですね。折しも東京の不動産価格は上昇傾向を維持していますので、場合によってはほとんど損失なく資金を回収することもできそうです。
つまりは、サブリース=家賃保証がなくなったとしても、なぜそれがすぐに投資家の「自己破産」に結びついてしまうのか、その構図がよく分からなかったわけですが、別の記事でようやくそのカラクリが分かりました。引用するとこうなります。
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・建築費が異常に高額 → 1部屋200〜300万円の建築コストが上乗せされています(約1棟で2,000〜4,000万円程度の上乗せ)。
・30年定額家賃保証しているが、5年後に条件見直し条項が契約に織り込まれている → 5年後家賃改定がされる可能性が高い。
・もともとの家賃設定がシェアハウスの家賃相場の1.5〜2倍の設定 → 見せかけの利回りを上げています。入居率が低いです。
>>>都内新築シェアハウス投資利回り8%!サブリース!リスクなし!寄宿舎合法!
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要するにこのスマートデイズ社は8%という高い利回り=家賃保証を維持するために、割高なシェアハウスを売り続けなければいけないという自転車操業状態にあったわけですね。
言い換えれば投資家からすれば売却しても2,000〜4,000万円の損失が発生し、そのまま所有して入居者を募っても家賃収入がこれまでの半分程度になるわけで、確かにこれは八方塞がりですね・・・自己破産の危機が現実味を帯びるのも理解できます。
なおスマートデイズ社の目指していたビジネスモデルの特徴は「家賃収入以外の収入を狙える」点にあります。こういった感じですね。
何と入居者には「家賃0円」で居室を提供し、その代わり入居者が同社の人材紹介サービスを利用することで採用企業からエージェント料をもらって、そのエージェント料で入居費用や投資家への利回りを保証していく、というものです。
人手不足が叫ばれている状況ですから一見して合理性はありそうですが、家賃0円の窮屈な部屋で集客された入居者の採用に対して、企業が1人あたり数十万円のエージェント料を払ってくれるのかという点はなかなか微妙そうですし、もし仮にバイト程度ならエージェント料は微々たるものとなりそうです。
また、入居者が本当に同社の人材紹介を利用するかどうかも分かりません。
さらに万が一人材紹介がうまくいったとしても、その収入は一時的なものですから、継続的にこのエージェント料を手に入れようと思うと、就職したら即追い出していくことが必要になります。もちろん借家人の権利は法律でしっかり守られていますのでそんなことはできません。
その点ではそもそも、こうしたビジネスモデルは「継続不可能」だったということになるのでしょうね。実際、継続できなかったわけですが・・・。
なお上記引用したサイトではこうした指摘もありました。
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極端な例になりますが、
入居者様には1部屋40,000円で賃貸する
オーナー様には1部屋60,000円でサブリース賃料を支払う
単純に1部屋毎月20,000円の赤字になるモデルになっています。
※わかりやすくするために、単純化した数字になっています。実際とは異なりますので、その点ご了承ください。
これでは、運営すればするほど、赤字の金額が膨れ上がっていきます。
仮に6,000室あると仮定すると、
20,000円 × 6,000室 = 1.2億円/月
月1.2億円の赤字となります。ちょっと信じられない数字です。なお、上記は、稼働率100%の前提なので、、、稼働率50%・60%のケースを考えると、とんでもない数字になります。
※真偽はわかりませんが、稼働率30%を切っているという話もあります。
では、どこで利益を稼いでいるかというと、土地+建物で7,000万円の価値しかないものを1〜1.2億円にてオーナー様に物件販売し、売却した時点にて3,000〜5,000万円の利益を確定させています。
例えば、月10棟、新規に建てれば3〜5億円の売却益が、そこから毎月の管理マイナスキャッシュフローに補填。これが月1〜3棟の新規建築となると、売却益より管理マイナスキャッシュフローの方が大きくなります。
※上記の数字も単純化したものとなります。実際とは異なりますので、その点ご了承ください。
なので、新しい物件を建て続けないとキャッシュフローが回らなくなります。そして、物件が多くなればなるほど、マイナスキャッシュフローも大きく膨らむという、まさに自転車操業。
※仕事紹介でキャッシュバックというビジネスモデルの紹介もされていますが、そもそも入居者がいなければ、成り立たないモデルになっています。
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あくまで仮置きの数字ですが、「稼働率100%で月1.2億円の赤字。稼働率30%だと・・・」という指摘になっているわけですが、チラリと見たニュース番組では「毎月5億円の赤字だった」ということですから、ほぼピタリ賞ですね!
分かる人には分かっていたということですね・・・。
「うまい話には乗らないようにしてください」とまとめるのは簡単ですが、ここから個人投資家として教訓を得るとすればどこにあるのでしょうか?
ポイントはやはりこの2点なのでしょうね。
・建築費が異常に高額 → 1棟で2,000〜4,000万円程度の上乗せ
・もともとの家賃設定がシェアハウスの家賃相場の1.5〜2倍の設定
スマートデイズ社の経営状況は外部からは分からなかったにしても、建設費や家賃設定が妥当かどうかはネットで調べれば簡単に分かったはずです。特に家賃設定が妥当かどうかは物件サイトをチェックすれば5分以内に分かりそうですね。
もし仮に建設費が妥当であり、家賃設定も相場並みなのであれば、売るにしても貸すにしても勝算が見えてきます。この点は申し訳ないですが、投資家の方々の脇が甘かった点は否めないと思います。
加えてもう1つ忘れてはいけないのは
・サブリース(家賃保証)なんて全く当てにならない!
ということですね!本件に関していくつかの記事やブログに目を通しましたが、不動産業界ではサブリースが契約更新時に減額されるのは「常識」だそうです・・・そんな常識知りませんよ。
そうしたわけで、記者も今後サブリースを強調する広告を見れば徹底的に攻撃したいと思います。
それはともかくとして、そもそもノーリスクで8%の利回りなどあり得ません。もしそんなビジネスモデルがあるなら、スマートデイズ社自身が多額の借入をして(それでも金利は2、3%で済むはずです)、超過利潤を独り占めするはずですね。
「かぼちゃの馬車」に投資してしまった方々は本当にお気の毒ではありますが、我々も他山の石として胸に刻んでおきたいものです。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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