当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社マリアスが運用する「リゾート大家さん」ですね。「大家さん」と聞くだけで怪しい気がしてしまうのは記者だけではないと思いますが、先入観はよろしくありませんので予断なくその投資の是非を検討していきたいと思います。
まず中身としては「540万円投資すると年間25万円の家賃収入が10年間保証される」というものです。4.6%の利回りが10年間保証されるわけですから悪くないように感じますね。
「宿泊ポイント」を含めるとトータルで「7%相当」と更に利回りが上昇するわけですが、ではこの「リゾート大家さん」投資は魅力的なのでしょうか?
冷静にならないといけないのは「リスク無しで7%の利回りが得られる投資など今の日本ではあり得ない」ということです。もしそんな投資があるなら、わざわざ個人客を集めて7%のリターンを配当するのではなく、自分で銀行などから2、3%の金利でお金を借りてきて投資すればいいだけの話ですね。
ではなぜそうしないかと言うと、「相応のリスクがあるから」に他なりません。
ちなみにリスクそのもは悪いものではありません。すべてのリターンの源泉はリスクにありますので、むしろ「リスクがあるからこそリターンがある」という意味ではポジティブに考えても良いものと言えます。
悪いのは「リスクを開示しないこと」ですね。ではこのリゾート大家さんはどうかと言うと・・・その投資リスクが全く開示されていません。なぜ約5%もしくは約7%の利回りが得られるのか、なぜ自己資金で投資するのではなく個人投資家の資金を集めるのか一切説明されていません。
その点ではこの案件への投資には「慎重な検討が必要」と言えそうです。
次に気になるのは「10年間保証」の実効性ですね。たとえば誰もが知っている大企業であれば、その「保証」の信頼性はかなり高くなりますが、逆に無名の会社であったり財務内容を公表していない会社だと、その信頼性は限りなくゼロとなります。
ではこの株式会社マリアスはどうかと言えば・・・申し訳ないですが無名ですし、財務内容も公表されていません。つまり厳しい言い方をすればその「10年間保証」の価値はゼロですので、「保証がなくても投資をしたいかどうか」という検討が必要です。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題も、運営会社の保証を盲信してしまったために多くの投資家が厳しい局面に立たされています・・・。
そうしたわけで、「保証は無いもの」として、その採算性を検討してみたいと思います。まずこの案件の不動産の購入価格は540万円×26口=1億4,040万円です。詳細はこうですね。
プールなどの特殊設備はあるものの、基本的には場所柄、土地代はほとんどかかりませんので、この平屋の174.85平方メートルの建物の価値が1億4,040万円あるのかどうかということですね。
で、プール付きの新築一戸建て住宅を探してみると、神奈川県川崎市の新百合ヶ丘で販売されているものがありました。
こちらは木造であり、さらに建物面積も146.83平方メートルとこのリゾート大家さんより少し小さいですが、ただ一方で徒歩19分とは言え新百合ヶ丘の土地252.91平方メートルが込みですので、トータルの価値はこちらの物件の方が高そうですね。
念のためこの川崎市麻生区金程の地価を調べてみると平均価格は22万円/平方メートルのようですので土地価格は5,544万円となります。つまりプールを含めた建物価格は4,436万円ということですね。
そうしたわけで相場は分かりませんが、このリゾート大家さんの物件の適正価格の最大値をざっくりその1.5倍の7,000万円とすると、ざっくり7,040万円の利潤を乗せて投資家に販売することになります。2倍ということですね!
そこで思い出されるのが冒頭の「4.6%の利回りが10年間保証される」というこの商品の仕組みです。1億4,040万円の4.6%×10年=46%は約6,500万円ですから、こうした計算が正しいとすると投資家からすればこの投資は
・7,000万円のものを1億4,040万円で買うけれど10年かけて6,500万円返してもらう
ということになりますから「全く意味がない」取引と言えます。むしろ元本が回収できないという点では「損するための取引」ということになります。あらら。
さらに10年後の価値が7,000万円+6,500万円=1億3,500万円ならまだマシですが、建物の価値は経年でどんどん劣化していきます。40年で無価値になるとすれば、10年後には7,000万円の不動産の価値はその4分の3の5,250万円となっていますから、5,250万円+6,500万円=1億1,750万円ということで「必ず−16%損する取引」ということですね。
「必ず−16%損しますが投資しませんか!?」と言われてウンと言う人はいないと思います・・・。
あくまで推測に推測に重ねた試算ですので必ず正しいとは言いませんが、客観的な情報から計算しておりますので一定の妥当性があると思います。この「リゾート大家さん」への投資を検討されている方は、まずはこうした懸念が払しょくされ得るのかどうかを検証していただければと思います。
ちなみに実質的にリスクもコストもゼロでこの「リゾート大家さん」を運営する株式会社マリアスのメリットはどこにあるのでしょうか?
それは
・10年間の貸別荘としての賃料収入を全て自社の利益にすることができる
ということですね。なぜなら投資家への配当原資は募集の時点ですでに確保していますので新たな資金は不要だからです。仮にメンテナンスコストが発生してもそれは投資家が負担することになっていますので、やっぱりコストはゼロですね・・・。
10年後には自社の利益が確保できる保証内容に切り替えればいいですし、もめるようであれば投資家に物件を返還してオシマイです。そう考えると非常に頭のいいビジネスモデルですね!ほめているわけではありませんが・・・。
そうしたわけで不動産投資全般に言えることですが、その物件の適正価格がいくらなのかをまずは把握されることをお勧めしたいと思います。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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