当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはSBIソーシャルレンディング株式会社のソーシャルレンディングである、「SBISL不動産バイヤーズローンファンド」ですね。
上記の通り「担保評価額の80%を上限目安とした融資」ということで一定の安全性は確保されていそうですし、予定年利もこの1年間募集されたものは全て6.5%ということで高い利回りが期待できます。
安全で利回りが高いということであればお勧めのような気がしますが、実際はどうなのでしょうか?
結論から言えば現時点ではお勧めできません。「安全で利回りが高い投資」などないからです。つまり、
・本当は安全でない
・本当は利回りが低い
・本当は安全でもなければ利回りも低い
のどれか、ということになります。そんなSBIソーシャルレンディング社ですが、今朝の日経新聞ではこのように報道されていました。
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急成長が続くインターネット金融でひずみが広がっている。個人が小口で資金を貸し付ける「ソーシャルレンディング」のSBIソーシャルレンディング(東京・港)は、7月の分配金の一部が支払えなくなった。
SBIソーシャルは9日、運用する7つのファンドで予定した分配金の一部が支払えなくなったと発表した。個人から集めたお金の貸付先である不動産会社2社から利息が払い込まれなかったためだ。SBIソーシャルは今後、担保不動産を競売にかけるなどして資金の回収を図るが、分配は1年ほど遅れる可能性がある。
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当サイトではこれまで数多くのソーシャルレンディングをぶった切ってきましたが、大手の中では恐らく唯一このSBIソーシャルレンディング社だけは取り上げてきませんでした。
上記の通り「安全かつ利回りが高い投資」と喧伝してきたわけですから違和感を感じつつも、SBIグループなのでもし何かあっても親会社が責任を取るだろうと思えたからです。
そんなSBIソーシャルレンディング社ですが、今般ついに自転車操業の一部が止まったというわけですね。もちろん自転車操業が止まったのはSBIソーシャルレンディング社ではなくその融資先ですが、投資家から見れば同じことです。
次々と経営が実質的に破綻しているソーシャルレンディングですが、「SBIソーシャルレンディングよ、お前もか。」と思ったのは記者だけではないと思います。
ただ一方で、リスクがよく見えなかったSBIソーシャルレンディング社の実態が明るみに出たのは良いことですね。なぜならリスクがわかればその投資の是非が判断できるようになるからです。
というわけで今回利払いが停止した「SBISL不動産バイヤーズローンファンド」の運用状況をチェックするとこうなっています。
・運用中元本:33億89百万円
・延滞中元本:13億36百万円
実に投資元本の4割が延滞という、なかなかアグレッシブな状況になっています。このままその全額が返済されないとすると「元本の4割が吹き飛ぶ」という切ない状態ですが、もし本当に融資が担保評価額の80%に抑えられているのであれば、担保処分によって全額返済される可能性が高まります。
一体どういう結果となるのでしょうか?
もちろん投資家の方々の立場に立てば「全額返済を期待する」ということになりますが、ただ投資の常識からすればリスクとリターンは比例します。単純に言うと「6.5%のリターンが得られるならば、それと同じくらいのリスクがないとおかしい」ということですね。
つまり「ある程度の損失が発生しないとおかしい」と言えるわけです。
また借り手の立場で考えても、本来、担保があれば銀行から1〜3%と言った低利で融資を借りられるはずなのにそうしないということは、「銀行からお金を借りられる会社ではない」ということですね。例えば赤字であったり、起業して間もなかったり、反社会的だったり、ということになります。
担保の価値が本当はもっと低い、というパターンもありえます。
さらに仲介会社であるSBIソーシャルレンディング社の立場で考えても、もしこの投資が「ローリスク・ハイリターン」であるなら、わざわざ個人投資家から資金を集める必要はなく、自社でリスクを取って投資をするはずですね。そうすれば管理手数料1%ではなく貸付金利である7.5%のリターンを丸々手に入れることができます。
そうしないということはこの投資先が、「自分で投資したいとは思えない会社」であることが示唆されています。
「銀行からお金が借りられず」、「仲介会社が自分で投資したいとは思えず」、もしかすると「担保の価値が本当は低い」会社だとすると、融資の回収は一筋縄では行かないでしょうね・・・。
残念ながら投資家への返済には1年くらいかかるようですが、その「回収率・返済率」がソーシャルレンディングビジネスの今後を占う試金石となりそうです。
ちなみにSBIソーシャルレンディング社は借り手に関してこう説明してきました。
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本ファンドの借手は、不動産の売買等を行うことを主たる事業とする事業者です。
借手は、本ファンドからの借入金を、不動産売買業務における転売用不動産の取得資金として使用します。
※先行して借手が自己資金で転売用不動産を取得した場合の自己資金に対応する資金を含みます。
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・・・たったこれだけです。つまりは情報量ゼロなわけで、投資家が今般の事態を想定するのは不可能だったと言えます。代わりに強調されていたのはこれですね。
つまり「担保があるから大丈夫」と説明してきたわけで、逆に担保を処分しても全額回収しきれないといった事態になればSBIソーシャルレンディング社の管理責任が問われることになりそうですね。
いずれにしてもその資金回収については大いに参考となりそうですので、透明性高く処理していってほしいものです。
またSBIソーシャルレンディング社への投資を検討されている方は、今回の問題がどのように着地するのかを見届けてからでも遅くはないのではないでしょうか?
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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