当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社アクトプロの外貨自動両替機ビジネスへの投資である「SMART EXCHANGE」ですね。検索エンジンではこのように広告されています。
「手間なくローリスクで自動収益・高収益」とのことです。本当ならすばらしいですね!
またサイトを見ると収益例として以下2つの事例が紹介されています。
1.年間利益473万円/利益率43.8%
2.年間利益153万円/利益率14.2%
事例の差は大きいですがうまく行けば約44%ものリターンが得られるということで魅力的ですね!2年とちょっとで投資資金を回収できる計算です。ではこの外貨自動両替機ビジネスは魅力的なのでしょうか?
心証からすれば「ローリスクで高収益」などあり得ません。もしあるなら、運営会社が銀行からガンガン借入でも何でもして自己資金で業容を拡大させ、高収益を全て独り占めするはずですね。そうしないということはやはり、「ローリスクではない」か、「高収益ではない」か、「ローリスクでも高収益でもない」かのいずれかかと思います。
では具体的にこの「SMART EXCHANGE」投資の中身を見ていきたいと思います。と言ってもビジネスとしてはシンプルで外貨両替機をただ置くだけ、ということですね。特別な許認可などもいらなそうなので、後はビジネスの収支がどんなものか、ということになります。
同社サイトから引用するとこういう感じですね。
初期投資は両替機が540万円で、保証金が500万円、合計1,040万円ということになります。
また1日の利用者10人で195万円、15人で330万円ということなので概ねこういう計算になるでしょうか。
・1人/日あたりの年間利益:27万円
・年間固定費:75万円
つまり1日あたり3人以上の利用があれば黒字、3人未満なら赤字ということになりそうです。
ただ考えなければいけないのは両替機は機械である以上、耐用年数があります。セブン銀行のATMは5年となっていますのでそれに倣うと5年で両替機代540万円を回収しないといけません。年間108万円ということですから、ざっくりとした損益分岐点は
・年間利益:183万円
ですね。つまり1日あたり7人以上利用してくれれば黒字、7人未満だと赤字という計算です。電気代など恐らくもう少し間接経費がありそうですが、とりあえず記載されている数字を基に計算すると黒字と赤字の分かれ目はこの水準だということですね。
このハードルが高いのかどうか分かりませんが(直感的にはリピート客が期待できない以上、ハードルは高そうです)、サイトで公開されている収益例を見てみると、少なくとも3つの事例は5年でATM費用を回収できません。
この12の事例が同社顧客の「ベスト12」だとすると、 残りの約250ヵ所は全て赤字という恐ろしい推測が成り立ちます。そうでないことを祈りたいと思います・・・。
ただこれだけだとデータとしては弱いのでもう少し客観的な情報からこの「1日あたり7人」のハードルの高さを探ってみたいと思います。というわけで2016年1月20日の日経新聞の記事を引用するとこう記されています。
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ファミマに外貨両替機、訪日客向け 20年度までに1000店
ファミリーマートは店舗に外貨を日本円に両替できる自動外貨両替機を設置する。2月から都内の4店舗で導入を始め、東阪や主要な観光地の店舗を中心に、2020年度までに1千店に広げる。年2千万人近くに達した訪日客の買い物の利便性を高め、消費を取り込む。
外貨両替のトラベレックスジャパン(東京・港)が展開する両替機を採り入れる。コンビニエンスストアへの外貨両替機の導入は珍しい。米ドルやユーロのほか、中国元や韓国ウォンなど13種類の外貨を日本円に替えられる。一定額の外貨を両替した際得られる日本円は空港や銀行に比べれば若干少ないものの、一般のホテルの窓口よりは多くなる水準に換金レートを設定する。
英語や中国語など4カ国語に対応でき、10円単位まで両替できる。24時間使えるため訪日客が日本に滞在する間、日常的に使う現金を引き出す拠点として利用を促す考えだ。まずは1カ月間で100〜200件の利用を見込む。現金の運搬や管理などの通常業務は日本通運が担う。
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目標件数は「100件〜200件」ということです。1ヶ月30日とすると「1日あたり3.3人〜6.7人」ということですね。もちろん綿密な市場調査の上で出した数字ですからその確度はかなり高いものと思います。つまり・・・ファミリーマートの集客力を持ってしても損益分岐点である1日あたり7人に届かないという予測であり、結論を言えば残念ながらこの外貨両替機「SMART EXCHANGE」投資は赤字になる可能性がかなり高いということですね。
アクトプロ社はぜひ投資家全体の損益状況を開示してほしいと思います。
加えてこの記事から分かることがもう1つ。2016年時点で「2020年度までに1,000店」という目標を立てていたわけですが、4店舗からスタートしたこの外貨両替サービスは今何店舗となっているでしょうか?単純計算で言えば500店舗くらいにはなっているはずですが、ファミリーマートのサイトをチェックしてみるとこうなっています。
何とスタート時点より半分のわずか2店舗ですね!これがこの外貨両替機ビジネスの収益性を端的に現わしているのではないでしょうか?
ちなみに同じく外貨両替機を設置しているローソンでもわずか5店舗です。残念ながらニーズは極めて限定的ということですね。
最後にとっても気になるのが保証金(デポジット)500万円の行方ですね。「解約時に返金されます」とのことですが、その安全性は確保されているのでしょうか?
こうした資金が信託などで分別保管されている様子はありませんし、そもそも運営会社であるアクトプロ社の財務内容が全く明らかにされていませんので、性悪説に立てばリスクが高いと言わざるを得ません。資本金も3,000万円ですから、預かる資金量からすると脆弱ですね。
仮にこの資金が返ってくる可能性が低いとすると損益分岐点は一気に倍の「1日あたり14人」といった水準に跳ね上がります。
10万円の投資でも慎重さは必要ですが、本件は1,000万円を超える投資ですからね!上記のような疑問点を全てクリアするのは当然として、少しでも懸念があれば自重するのが筋です。
本当に儲かる投資なら3年後でも5年後でもビジネスを継続しているはずですからね。焦る必要など一切ありません。じっくりその実績を見定めてからでもいいのではないでしょうか。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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