当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社TATERUの「TATERU FUNDING」ですね。TATERU社が建設・運営するアパートに投資するクラウドファンド(ソーシャルレンディング)となります。
この「TATERU FUNDING」については以前も取り上げました。
>>>インベスターズクラウド社のTATERU FUNDING5%は魅力的?
この2年の間に社名をインベスターズクラウドからブランド名であるTATERUに変更したわけですね。
上記コラムでは実質的に0%〜2%の運用利回りと目されるファンドに5%という利回りがついていると指摘した上で、運営会社のインベスターズクラウド社の通期利益が約29億円と必要十分な水準となっていたことから、「これはもうキャッシュプレゼントと思って参加するのもよいかもしれない」と結びました。
当サイトではこうした高利回り投資案件に対しては辛口の評価となる場合が多いわけですが、珍しく好意的な結論となりましたので印象に残っています・・・。
そんな「TATERU FUNDING」ですが最新の募集内容をチェックするとこうなっています。
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<キャピタル重視型第44号TATERU APファンド概要>
運用物件 :木造アパート1棟(9室)
所在地 :千葉県柏市南柏
竣工月 :2018年12月(予定)
出資総額 :9,200万円
募集総額 :6,440万円
募集口数 :6,440口(1口1万円)
運用期間 :2018年9月1日〜2018年12月31日
予定分配率:年利4.5%(税引前)
申込手数料:なし
途中解約 :可能
解約手数料:なし
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本来であればこの木造アパートの市場価値が少なくとも6,440万円あるのかどうかをチェックし、さらに家賃収入や減価償却、管理費などのコストを計算し、4.5%という利回りが持続可能なものなのかどうかを調べる必要がありますが、ことこの案件についてはそうした細かい計算は不要ですね。
なぜなら・・・運用期間がたった4ヶ月だからです。
ここまで短いと案件の中身云々よりはTATERU社が信頼できる会社かどうか、そしてTATERU社にとって意味のある案件なのかをチェックする方が重要ですね。
前者についてはTATERU社は東証一部に上場している上場会社ですので信頼できそうですし、後者については決算説明書を見てみるとこのように説明されています。
TATERU FUNDINGの会員数は64,902名になっているということですね。これらが全て同社のアパート販売の「見込み客」になるということなら、「客寄せ」として実質的に赤字の事業を運営する意味はあります。
実際、ここから以下のようなビジネスにつながっているようです。
TATERU FUNDING会員に対してアパート16軒を販売し、11億円の売り上げを得たということですね。
言い換えれば会員になると同社から激しいセールスを受けることが示唆されているわけですが・・・。
それはともかくとして、このTATERU FUNDINGは以前より更にTATERU社の信用力に依存する形になっているわけですが、そのTATERU社の信用力を揺るがす事態が起きていますね!何かといえば、スルガ銀行で問題になっているように同社も顧客への融資を引き出す際に資料を改ざんしていたということです。日経新聞から引用するとこういう内容です。
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アパート施工のTATERU、融資資料改ざん スルガ銀不正に類似
アパートの施工、管理を手がける東証1部上場のTATERUが、建設資金の借り入れ希望者の預金通帳を改ざんし、銀行に融資の申請をしていたことが31日、分かった。預金残高を水増しし、実際より多く見せて銀行の融資審査を通りやすくしていた。TATERUは改ざんの事実を認め借り入れ希望者に謝罪した。
投資用不動産融資の審査書類の改ざんを巡っては、スルガ銀行の行員が販売業者による書類の改ざんの事実を知りながら融資していた実態が明らかになっている。こうした改ざんが業界に広がっている可能性がある。
借り入れ希望者は都内在住の50代会社員。代理人のわたなべ法律会計事務所(東京・千代田)の加藤博太郎弁護士によると、会社員はTATERUから名古屋市内で木造3階建て、全9戸のアパート物件を紹介された。土地・建物で約1億1000万円の購入資金は山口県の西京銀行の融資を利用し、自己資金がなくてもアパートを経営できるとの提案を受けた。
その際、西京銀への融資申請で必要な預金残高を示すインターネットバンキングの履歴データをTATERUの担当者に渡した。預金残高は約23万円だったが、担当者は「それで問題ない」と返答したという。その後、この担当者から融資の承認がおりたとの連絡があった。会社員は6月、西京銀に直接、TATERUの担当者が提出した自分の預金残高を示すデータの開示を要求。残高は約623万円に水増しされていたという。
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ポイントとなるのはいくつかありますがまず1つ目は、今後も銀行がTATERUの案件に融資してくれるのかどうか、という点です。仮に融資してもらえなくなればいくらアパートを建てても売れないわけですからビジネスは破綻することになります。
2つ目は、仮に銀行が寛大な心で新規融資を認めてくれたとしてももう不正はできませんから、銀行の厳しい審査基準をクリアできるアパートオーナーを見つけられるのか、という点です。もし見つけられなければやはりビジネスは破綻します。
3つ目は、家賃保証などのサブリース契約が同社にとってどれくらい負担なのか、という点です。もしそうした保証金が、「かぼちゃの馬車」事件のようにアパートの新規販売で賄われているのだとすると、アパートの新規販売がストップした時点であっと言う間に資金繰りに窮して死んでしまいます。
逆にそうした保証負担がさほど重くないとするとすぐに死ぬことはないと思いますが実態はどうなのでしょうね・・・。
ちなみに同社の株価は問題発覚後このようになっています。
もともと2,000円前後で推移していた株価が問題発覚後、一気に400円前後まで下がったことが分かります。投資家が今回の事態をかなり深刻に受け止めているということですね。破綻してしまう可能性も織り込んでいるのではないでしょうか。
既に融資をしている銀行からすれば同社が破綻してしまうのは困るわけですが、それもこれも「不正をしなくてもちゃんとビジネスを存続させられるかどうか」に掛かっています。
いずれにしてもTATERU社に会社存続の危機が訪れている以上、その信用力に依存しているTATERU FUNDINGに投資するわけにはいきませんね。投資の是非は1年後や2年後、会社が存続していることを確認してからにしていただければと思います。
ちなみに中長期的なリスクについて付言しておくと、こうした投資用不動産の販売会社がリーマンショックのような金融危機が起きた時に乗り切れるかどうかという点は気になるところです。
金融危機時には全ての銀行融資がストップしますので、ビジネスが過度に新規の不動産販売に依存している構造だと即時に死んでしまうことになります。ある意味、「かぼちゃの馬車」事件はそうした「融資停止リスク」を体現したものと言えます。
リーマンショックから丸10年が経過し、いつ新たな危機が訪れてもおかしくないタイミングとなっています。そうした危機時には不動産価格も暴落しますからね。より慎重な検討が必要そうです。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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