当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは都市綜研インベストファンド株式会社が運用する「みんなで大家さん」ですね。商品名を広告などで見た人は少なくないかもしれません。
当サイトでもすでに常連となっておりまして過去のコラムを列挙してみるとこうなります。
>>>関係者!?みんなで大家さんの記事に対する指摘を検証
>>>利回り7%!みんなで大家さんの決算はどうなった?
>>>みんなで大家さんファーム2号の記事に対する指摘を検証
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんファーム2号は魅力的?
>>>利回り7.1%!みんなで大家さんファーム1号は魅力的?
>>>口コミで怪しいと言われる、みんなで大家さんの最新の評判
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんの疑問点をまとめると
>>>利回り6.1%!みんなで大家さんはやはり疑惑だらけ
>>>利回り7%!みんなで大家さん伊勢は魅力的?
>>>元本割れナシ年利6%!みんなで大家さんは魅力的?
>>>6.1%の高金利な投資 みんなで大家さんは魅力的?
>>>みんなで大家さんの債務不履行=デフォルト率は70%?
>>>想定利回り7.0%!みんなで大家さん19号は魅力的?
>>>行政処分!「みんなで大家さん」のその後は?
疑惑だらけではありますが、非常にしぶといですね!新規資金が流入し続ける限りスキームが破綻することはないのかもしれませんが、募集金額がどんどん増えてきていて「肌寒さ」を感じるのは記者だけではないと思います。
そんな「みんなで大家さん」の新たな投資案件が「みんなで大家さんファーム3号」ということになります。想定年利回りは7%ということで魅力的ですが、その中身は果たしてどうなるのでしょうか?
物件概要はこうなっています。
−−−
物件名:奄美青果熟成加工物流センター
所在地:鹿児島県奄美市住用町大字摺勝字廣531番地
延床面積:2300.00平方メートル
種別:倉庫・事務所
想定賃貸利益:157,500千円(税別)
募集総口数:1,800口(1口100万円)
−−−
いつものパターンですが、一瞥して値段が高すぎることが分かります。上記の土地・建物に18億円もの価値があるはずがありません。その100分の1の1,800万円以下である可能性すらあります。
さらに年間1億57百万円もの賃料が払えるはずもないですね。すでに3号目となりますが、バナナを一体何本売らないといけないのかちゃんと計算できているのでしょうか・・・。
仮に百歩譲って1億57百万円を超える利益があるのであれば、自己資金でこの倉庫を買ってしまいますよね。わざわざ常識外れの賃料を払い続ける必要はありません。
ちなみにこの加工物流センターの中身についてこのように説明されています。
−−−
「純国産バナナ」を熟成、梱包、出荷を行う施設に加え、事務所と簡易宿舎の設備を備えた施設
−−−
どう考えても18億円もの巨額の費用が必要な施設には聞こえません。18億円もの費用があれば簡易宿舎どころか中規模のホテルが建ちますね・・・。
そうしたわけで計算するまでもなく、いつものように法外な値段をつけて多額の投資資金を集めるパターンであることは一目瞭然ですが、とは言いつついくらくらい上乗せされているかも気になりますので、上記物件の現在価値を推測したいと思います。
まずこの「鹿児島県奄美市住用町大字摺勝字廣531番地」という住所で検索すると「太陽基礎鋼業株式会社」という会社名が出てきます。この会社の物件を購入したということですかね。
googleのストリートビューで検索するとこうなっています。
牧歌的な風景で嫌いではありませんが、1千万円するかも怪しいですね・・・。ちなみに前面道路はこんな感じ。
ギリ舗装はされている・・・という感じですね。逆によくこんな物件を探し出してきたものです。
ではこの「鹿児島県奄美市住用町大字摺勝字廣531番地」の地価ですが、調べてみると同じ住用町で以下2つの事例が見つかりました。
・住用町大字西仲間字上川280番 : 4900円/平方メートル
・住用町大字川内字上里65番内 : 2600円/平方メートル
うーん、小学生のお年玉で買える水準ですね・・・。
地図で見る限り「川内」の方が近そうですので、この2,600円/平方メートルを参考にします。
そうすると2,300平方メートルの延床面積の価値は「598万円」ということになります。やはり1,000万円ないですね・・・。
ただこれだと建物の価値が含まれてきませんので今度は類似物件から時価を類推したいと思います。同じ奄美市でこんな「事務所付き倉庫」がありました。
−−−
所在地:鹿児島県奄美市名瀬佐大熊町2285-2
価格:5,000万
地目:宅地/S造2階建て
土地面積:610.49u/184.9坪
床面積:538.9u
−−−
こちらは5,000万円と一気に跳ね上がりますが、この名瀬佐大熊町の地価は4万7,000円/平方メートルとけた違いです。切り分けるとこうなります。
・土地代:2,870万円
・建物代:2,130万円
単純比較して良いかは分かりませんが、床面積538.9平方メートルの建物の値段が2,130万円とすると、2,300平方メートルなら9,090万円ということですね。
そうするとこの「大家さんファーム3号=奄美青果熟成加工物流センター」の時価はこうなります。
・土地代:598万円
・建物代:9,090万円
トータルで1億円弱ですね。うーん、写真で見る限りとても2,300平方メートルの広さの建物には見えませんが、ここは書かれている数値を信じてみることにします。
そうしたわけでかなり甘ーく見積もってもこの物件の時価は1億円ありません。なのに18億円もの値段をつけて投資資金を集めるということですから、無理筋ですね!悪意がなければ杜撰、悪意があれば詐欺的、ということになりそうです。
もし投資されようとされている方はこの物件価格の根拠をしっかりチェックいただければと思います。
なお同じ奄美では100坪=330平方メートルの貸倉庫が月20万円で借りられるようです。
誰が年1億57百万円もの賃料を払ってこの「大家さんファーム3号=奄美青果熟成加工物流センター」を借りると言うのでしょうか。単純計算しても「10倍割高な家賃」ですからね・・・。
ちなみにこれでバナナがらみの賃料はここまで増加しています。
・大家さんファーム1号:2億13百万円
・大家さんファーム2号:3億50百万円
・大家さんファーム3号:1億57百万円
トータルで7億20百万円ということですね、仮に1本1,000円としても72万本売らないといけません。では現在の販売実績はどうなっているのでしょうか?
このバナナはどうやら「ともいきバナナ」として販売されているようですが、ホームページを見ると「収穫本数減少のため11月収穫分より順次発送予定」と案内されています。生産は順調ではなさそうですね。
楽天でも販売されているみたいですので、在庫数量を見るとこうなります。
・5本入り:売り切れ
・10本入り:残り26個
・15本入り:残り48個
・20本入り:残り47個
・桐箱5本入り:残り19個
9月6日から発送が始まっていて約1ヶ月。それぞれ在庫が50個からスタートしたとすると、1ヶ月の売り上げは約735本ということになります。1本1,000円なら約74万円。年間約900万円。7億20百万円の賃料収入には全く届きません。
そうしたわけでいつものことではありますが、このみんなで大家さんの案件は
・投資物件に法外な値段をつけて投資資金を集めている
・法外な値段を正当化するための法外な賃料を支払える当てがない
という2点において完全に破綻しているように見えます。
繰り返しになりますが、投資を検討されている方はそうした疑問をまずは解消していただければと思います。もし懸念が払しょくできないのであれば・・・危うきに近寄らず、ですね。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
![]() |
定期預金に関するあなたのクチコミを教えてください。クチコミは人気銀行を中心に順次掲載いたします。 メールの場合はこちらから |
![]() |