当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはmaneo社の「事業性資金支援ローンファンド」ですね。利回りは9%とのことでなかなか魅力的です・・・安全であれば。
ちなみにmano社は本件のように自社で直接運用している場合は、提携企業を通して募集しているものもあり、これまで関連ファンドについて以下のようにご紹介してきました。
>>>利回り11%!ガイアファンディングは魅力的?
>>>虚偽説明に裏金疑惑!グリーンインフラレンディングは詐欺?
>>>利回り10%!キャッシュフローファイナンスは魅力的?
>>>利回り6.5%!スマートレンドは魅力的?
>>>maneo推奨のロジコム社LCレンディング5%は魅力的?
内容に差はありますが、いずれも
・投資先の中身が不明
・ファンド会社の中身が不明(財務情報が非開示)
・高リターンに見合うはずの高リスクが判然としない
ということで懐疑的に論じてきました・・・もっと言えば否定的でした。
実際、一部のファンドで返済の遅延が発生しているわけですが、一番上のガイアファンディングの遅延事例はこのようになっています。
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【遅延理由】
案件所在地は、テキサス州のヒューストンと港のあるフリーポート市の間に位置するマンヴェル市内です。
昨年8月に発生、テキサス州に甚大な被害をもたらしたハリケーンハービーの影響により、当該の土地は更地でもあり大きな影響はなかったものの、
許可申請に対する当局の手続きが遅れたことが理由です。
【期失の事由】
ガイアファンディングまたはmaneoプラットフォームにおいて再募集を行う想定をしておりましたが、maneoマーケットによるリファイナンス案件審査基準に必要な各種エビデンスを期日までに揃えることができず、再募集が叶わなかったことが主たる理由です。
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かいつまんで言えば、投資した土地の開発許可が下りず、資金が返済できないためとりあえず継続しようと思ったら、資料を集められずmaneo社の審査が通らなかったため、返済が滞ってしまったということです。最悪ですね!
ここから分かることは2つです。
1つ目は、ガイアファンディング社は開発許可という最重要事項についてすら書類のチェックを行ってこなかったということですね。もしチェックを行っていたのであれば書類=エビデンスが残っているはずです。
2つ目は、このファンドを販売しているmaneo社もまたこれまでまともな審査を行ってこなかったということです。
「maneo社はすでに累計1,504億円もの募集を行っているようですね・・・。この中で一体どれくらい不適切な融資があるのか気になるところです。」と結んだわけですが、今回はいよいよ本丸のmaneo社自身が組成したファンドについて見ていきたいと思います。中身はこうですね。
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今回の借り手は事業者FLです。今回は、事業者FLに対する融資金として、6億円を以下の要領にて募集させていただきます。
・6億円(第1次〜第13次募集)
◆資金使途について
・事業者FLの資金使途:事業者EZに対する融資金
事業者FLは、事業者EZに対して事業資金として6億円の融資をいたします。
・事業者EZの資金使途:SPCの出資持分の買取資金
事業者EZは、環境事業や再生可能エネルギーの開発事業等を営む共同事業者が出資したSPCの出資持分を買い取り、共同事業者とともに太陽光発電プロジェクトを推進いたします。
◆保全について
事業者FLの事業者EZに対する融資における保全としては、以下の内容になっております。(maneoでは担保設定はおこないません。)
・事業者EZの共同事業者が開発中の太陽光発電権利(ID)の譲渡担保及び名義変更書類受領
・上記太陽光発電所用地の土地(約61,930u)及び地上権に対し第1順位の根抵当権を設定
◆返済について
事業者EZは、共同事業者とともに推進する上記プロジェクトの太陽光発電施設の売却または新たな資金調達により事業者FLへ返済する予定です。
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何と6億円もの融資をするのに担保を取らないんですね!マジですか・・・。筆者がFL社の社長なら融資せずにすぐに計画倒産させます。だって担保はないんですから。
関係図はこうです。
やはり担保・保証は「なし」ですね・・・見事です。
そうしたわけで記者ならこの案件に投資することはありません。リスクが高すぎますからね・・・。
またこの関係図を信じるとすれば、評価=売却予定価格=7億2,500万円の物件に6億円も貸すのはやはり危険です。なぜならこれはあくまで「希望的観測」価格にすぎないからです。記者なら3億円でも不安ですかね・・・無担保なら尚更です。
そんなmaneo社が直接運用している「事業性資金支援ローンファンド」ですが、同社トップページを見れば以下3件の「延滞発生に関するご報告」が掲載されています。
・【延滞発生に関するご報告】事業者EO社向け案件 (2018/11/01)
・【延滞発生に関するご報告】不動産事業者CU社向け案件 (2018/11/01)
・【延滞発生に関するご報告】カリフォルニア州 米国不動産事業資金ローン(第1次募集〜第5次募集) (2018/11/01)
3つ目は上記ガイアファンディングに関するものですのでまた改めてチェックするとして残り2つを簡単に見ていきたいと思います。まずは1つ目の抜粋。
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この度、2018年10月29日の約定利息の未回収が発生いたしました。
本件は、投資家の皆様へはローンファンド詳細画面において保全策として、以下の2点を表記いたしております。
・事業者EO社が所有する不動産(太陽光用地)に対する第1順位の根抵当権登記
・公正証書での融資契約
また、融資条件欄においては、担保及び保証は「無し」と表記しております。
こちらについて、表記以外の保全策もmaneo社として講じておりました。具体的には、事業者EO社及び事業者EO社の関係者が所有する太陽光発電所の開発プロジェクトに係る不動産への第1順位での根抵当権設定登記も行っておりました。
また、売電権利に対する譲渡担保契約、太陽光発電設備の売買代金債権を対象とした集合債権譲渡担保契約、並びに事業者EO社代表者との連帯保証契約の締結を実施しておりました。
ただ、これらの保全措置は融資金の全額を確実に担保できるものとは言い難く、投資家の皆様には保守的観点からご投資の判断をいただきたく、募集に際しては一部を除き開示いたしませんでした。
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こちらも担保及び保証は「無し」とのことですので、回収困難になるのは当然かと思いますが、募集ページはこのようになっています。
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https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=4251
すでに融資額を上回る金額で売却(出口)の売買契約が締結済みです。
◆保全
・事業者EOが所有する不動産(太陽光用地)に対する第1順位の根抵当権登記
・公正証書での融資契約
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確かに担保・保証は共に無しとなっているものの、「すでに融資額を上回る金額で売却(出口)の売買契約が締結済み」であり、融資額5,500万円に対して6,600万円の抵当権が設定されていれば、リスクは極めて低いと思うのは当然です。
仮に損失発生が確定した場合、maneo社自身の募集責任を免れることは難しそうです・・・。
2つ目の抜粋はこうです。
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この度、2018年10月29日の約定利息の未回収が発生いたしました。
事業者C社は、不動産事業者CU社に対し不動産担保融資を行いました。
不動産事業者CU社は事業者C社に対し約定利息の支払いを行いませんでしたが、事業者C社は、担保不動産の任意売却や担保権の実行による回収をもってmaneo社に対する債務の全額を返済可能と判断しました。
しかしながら、事業者C社は、任意売却に向けた活動の過程において、すべての担保不動産の任意売却による売却代金をもってしてもmaneo社への元利金全額を支払うことが困難であるとの認識に至り、maneo社から事業者C社への融資はノンリコースローンであることから、10月29日を期日とするmaneo社への利息の支払いを履行しない意向をmaneo社に対して示しました。
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こちらはさらにノンリコースローン=会社ではなく案件に貸すローンであるがために、「CU社が返済してくれないし、担保を売却しても返せそうにないのでウチはもう返さないよ」とC社に言われてしまった、ということですね。
ノンリコースローンとはそういうものではありますが、こうなってしまうともう手も足も出ません。粛々と担保を売却して回収していくしかないですね。
ではこちらの保全状況はどう説明されていたかと言うとこうです。
https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=3928
つまり、16億円の土地に19億2,000万円の抵当権を設定して12億円を融資するという話ですので、誰がどう見ても安全そうです。
しかし「すべての担保不動産の任意売却による売却代金をもってしてもmaneo社への元利金全額を支払うことが困難である」とのことで、この「16億円」の評価がデタラメだったということですね。とすると、そのC社かmaneo社か、あるいはその両方に責任があります。
しかもよく見るとC社は「maneo関連会社」と書かれていますね・・・maneo社の責任は免れ得ません。
もちろんこれがかなり古い評価であり、融資実行時点とは地価が変わってしまったということならまだ分かりますが、2018年2月に貸し付けた案件ですからまだ1年も経っていません。
投資家の方々はmaneo社に対して厳しく責任を追及すべきかと思います。
いずれにしてもこれらの案件に共通して言えることは
・maneo社の投資案件に対するリスク開示は極めて不適切であり、詐欺的とすら言える。
・maneo社の自社募集案件ですら、まともにリスク判断・管理を行っていない。
・実際に回収が困難になった場合の債権保全策も、回収能力も脆弱である。
ということです。
「それでも利回り9%が出ているんだから、少々の損失は良いじゃないか!」という指摘があるかもしれませんし、記者もそう思います・・・「少々の損失」であれば。
しかしこうした杜撰な貸し出しがまかり通っているのであれば、9%と言ったリターンをはるかに上回る損失が発生しても全くおかしくありません。
ファンドの中身を見てもらえれば分かるように、ほとんどの案件がリファイナンスを前提としています。つまり、新たな資金が入り続ける限り、こうした投資が破綻することはないということですね。
また仮に新たな資金が入ってこなくても、利払いだけでよければ、9%のリターンでも11年以上存続させることができます。
そもそもファンドが9%のリターンという事は借り手はmaneo社の手数料も含めて11%や12%といった法外な金利を払っているわけで、まともな会社でないのは確かです(反社会的という意味ではなく、銀行から融資を受けられない会社であるという意味です)。
そうした会社に無担保で融資するということがどういう事なのか今一歩冷静に考えていただければと思います。
いつもご案内しているように世の中にウマイ話はありませんし、「ローリスク・ハイリターン」というのも虚構です。数%のリターンに釣られて元本を失うことのないよう投資判断は慎重になさってください。
参考になさってください。
では最後に、あくまで一般論ですが、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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