当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社エーアイトラストの「トラストレンディング」ですね。
このトラストレンディングについては以前取り上げており、今回2回目となります。
>>>利回り7%!トラストレンディングは魅力的?
当然、いつものように辛口な指摘が並んでいるわけですが抜粋すると主にこうした点を述べさせていただきました。
・経済合理性からすれば借入人にとってトラストレンディングを利用するメリットは全くないはずです。それでも利用しないといけないのだとすれば、銀行から低利での借り入れができないようなリスクの高い借入人であり、融資案件である可能性があります。
・「本物件には、銀行により80,000,000円の第一順位根抵当権が設定されていますが、トラストレンディング不動産担保付ローンファンド51号及び同52号の貸付により一括返済」するとされてます。銀行借り入れによりトラストレンディングからの借り入れを一括返済するなら話はわかりますが、トラストレンディングからの借り入れで銀行借り入れを一括返済するというのはどういう理屈でしょうか・・・全く理解できません。あるとすれば、信用力悪化などの理由によって銀行から返済を求められているケースです。
・引き渡しまで後4ヶ月というこのタイミングで運用期間17ヶ月の資金を借りる必要もまったくわかりません。同社HPによればこの借入人は「主に金融機関等の富裕層顧客に当該マンション1棟を売却するビジネスモデルを展開」しているということですから、引き渡しの時点で開発資金+利益が全額回収できるはずです。なぜ17ヶ月なのでしょうか?その説明もまったくないですね。
・エーアイトラスト社の財務状況をチェックしてみると過去10年間の経営で利益が11百万円しか貯まっていません。申し訳ないですが、要するに経営体力が極めて脆弱であるということですね!仮に何等かの理由で今回の案件がコケた場合、同社がカバーする体力は全くありません。
1年半経って読み返してみても特に訂正が必要な点はなさそうです。
そんなトラストレンディングですが、最新の募集案件は運用期間19ヶ月/利回り8%となっており、表面的には引き続きかなり魅力的ですね。その中身はこのようになっています。
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本借入人は東京都内に本社を置き、衛生面向上や環境改善といった領域で事業を行っておりますが、新規事業として燃料の流通に関わるビジネスの立ち上げを進めており、このたび特定の地域と用途に対する燃料の商流に卸売業者として参入することが確定致しました。本事業向けにSPCを設立しており、当該SPCを経由しての貸付となります。
本事業は、特定地域での公共工事における重機や設備の稼働や資材運搬等で必要となる各種燃料を、スムーズに供給する流通ルートを確立するために調達と配給の集約を行うものとなります。
また、公共工事への参画企業にとっては単なる附帯業務となる燃料の調達にかかっていた工数の削減、仕入先商社にとっては個々の事業者との間で発生していた事務処理や需要情報のとりまとめ等の業務が一定範囲で集約・削減されるメリットがあります。
本事業の開始にあたっては、初期投資として燃料取引における前払金・保証金ならびに部分的な設備投資が必要となりますが対象となる公共工事の一部はデリケートな内容を含むこともあり、地元金融機関からの借入が困難であったため、当社トラストレンディングに融資の相談があったものです。
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そもそも「対象となる公共工事の一部はデリケートな内容を含むこともあり、地元金融機関からの借入が困難であった」という点がおかしいですね。金融機関が融資できない公共工事などあるはずがありません。納税者に対してどう説明すると言うのでしょうか。
しかしこの案件についてこれ以上深く掘り下げるのはやめておきます。と言うのも証券取引等監視委員会が既に同社に対して以下のような勧告を出しているからですね。
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エーアイトラスト株式会社は、当社ウェブサイトにおいて、自らを営業者とする匿名組合の出資持分の自己募集を行い、その出資金を法人に対する貸付けによって運用している。当社が取扱うファンドの取得勧誘の適切性等について検証したところ、以下の問題が認められた。
・ファンドの取得勧誘に関し、虚偽の表示をする行為
(1)債権担保付ローンファンドについて
当社は、平成30年5月から6月にかけて、「債権担保付ローンファンド(139号〜146号、155号〜158号)」の募集を行い、投資家から総額約6億円の出資を受けている。
当社は、本債権ファンドの取得勧誘に際し、当社ウェブサイト上の本債権ファンドに係る募集ページにおいて、当該出資金の貸付先が関与するプロジェクトや資金使途等に関し、復興庁や環境省等の名称を用いて、あたかも官公庁等が関与して行う除染事業の支援業務を行う目的で、本債権ファンドで集められた資金が貸付けられるかのような表示をしている。
しかしながら、該当する官公庁等が関与して行う除染事業は存在せず、このため、本債権ファンド借入人に対しては、上記の取得勧誘時の表示のような、官公庁等が関与して行う除染事業の存在及び実行を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていない。
このように、当社は、本債権ファンドの取得勧誘に関して、虚偽の表示を行っていたものと認められる。
(2)動産担保付ローンファンドについて
当社は、平成30年7月から8月にかけて、「動産担保付ローンファンド(163号、165号〜168号、170号〜174号)」の募集を行い、投資家から総額約3億円の出資を受けている。
当社は、本動産ファンドの取得勧誘に際し、当社ウェブサイト上の本動産ファンドに係る募集ページにおいて、当該出資金の貸付先が関与する事業や返済原資等に関し、当該大手企業との業務提携等が予定されている旨を記載するなど、あたかも本動産ファンド借入人において、実証実験終了後に、当該大手企業との業務提携等が予定され、これにより得られた収益を原資として返済が行われるかのような表示をしている。
しかしながら、実際には当該大手企業との業務提携等の予定は存在せず、このため、本動産ファンド借入人に対しては、当初から、上記の取得勧誘時の表示のような、当該大手企業との業務提携や、当該業務提携に係る事業による収益が返済原資となることなどを前提とした貸付けは行われていない。
このように、当社は、本動産ファンドの取得勧誘に関して、虚偽の表示を行っていたものと認められる。
当社が行った上記の行為は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結の勧誘に関して、虚偽の表示をする行為」に該当するものと認められる。
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つまりは募集内容はウソ八百だったわけですね!もちろんそこには「投資家を騙して資金を集めよう」とする明確な悪意があるわけですから、「詐欺」と言って差し支えないと思います。
と言うわけでこのトラストレンディングに投資するのは論外ですね・・・。
これまでいくつものソーシャルレンディングが実質的に破綻してきましたが、その全てで虚偽記載やそれに類似する行為が行われてきました。その点では当サイトが行っているようなソーシャルレンディング会社が主張する内容についてのチェックはあまり意味がないという考え方もあるかもしれません。
ウソなら何とでも言えるわけで、間違いを見つけるのは難しかったり、見当違いの指摘をしてしまったり、場合によっては「問題なし」と結論づけてしまう可能性だってあるからですね。
ただ一方で、今回のトラストレンディングのようにウソをついているはずなのにやっぱり論理破綻していたり、経済合理性の観点から説明がつかない場合も少なくないと思います。
その点では、不正を正確に指摘できなくても、怪しい会社をあぶり出す意義はあると信じて、引き続きこうした会社の「粗」を探していきたいと思います。
ちなみに虚偽募集が発覚したトラストファイナンス社改めエーアイトラスト社ですが、その財務内容はこのようになっています。
2018年6月期こそ50百万円の利益を計上していますが、それまでは10百万円程度の利益しかなく、完全に零細企業だったことが分かります。
現在のソーシャルレンディングの残高がいくらかは分かりませんが、累計成約金額が83億円であり、過去3年間このビジネスを行っていたことを勘案すれば、現在の残高は30億円や40億円近い可能性があります。
その全てが回収不能ということはないでしょうけれど、これまでの10%近い配当に流用されていたり、同社の利益としてフトコロに入っていたとすると、その結構な部分が焦げ付く可能性は十分あります。
仮に同社が破綻してしまえばさらに回収は困難になりますね・・・。投資家の方は回収を急がれた方が良さそうです。
しかし相次ぐソーシャルレンディング会社の破綻を見ると、いよいよこのビジネスが曲がり角に来ていることは間違いなさそうです。今まで金融庁は一体何をしていたんだと思わなくもないですが、1年後に生き残っているのはどの会社なのでしょうね?
いずれにせよこれからソーシャルレンディングやクラウドファンディングに投資しようとされる方には慎重な判断をオススメしたいと思います。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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