当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはラッキーバンク・インベストメント株式会社ですね。
同社についてはこれまで以下のように取り上げてきました。
>>>ラッキーバンクへの投資家の損失は7割!で終わらない闇・・・
>>>安全安心で好利回り?ラッキーバンクに行政処分!
>>>ラッキーバンク 不動産担保付投資8%は魅力的?
既に金融庁から行政処分が下されているわけですが、前回取り上げたように延滞している債権の回収をめぐり新たな疑惑が出てきました。経緯を再掲するとこうですね。
・2018年12月にラッキーバンクが債権を譲渡
・債権総額が約50億円に対して譲渡額が約16億円=債権の32%
・ファンド募集時に公表していた不動産の鑑定評価額は約60億円
最終的に残っていた債権=約50億円に対して約16億円しか回収できなかったわけですから、投資家の損失は約7割ということになります。
誠に悪質ですし、この結果だけを見れば「評価額60億円というのが間違いで、
・実際には16億円の価値しかないものを60億円の価値があると言って50億円もの資金を集めたわけでラッキーバンクはひどい
という話になりそうです。
しかし、この債権譲渡の経緯を見てみるとどうやらそういうことではなさそうです。ラッキーバンク社は債権譲渡について
・任意売却は捗々しくなく、競売には4,000万円かかるのでそんなお金はなく、したがってとっとと債権譲渡してしまいましたよ
と説明していますが、問題点は大きく3つです。
・債権は本来、投資家のものであり、その担保不動産も当然に投資家のものと言えます。それを勝手に売却していいのか?
・同社自身が明記しているように、任意売却すれば不動産の収益を考慮した価格=約60億円で売却できる可能性があったのに特段の理由もなく任意売却を諦め、予納金4,000万円を捻出できないという意味不明な理由で約20億円で売却できる可能性があった競売を諦め、約16億円という経済合理性から見ればあり得ない選択をした。
・しかもその疑惑の取引の相手先である債権譲渡先は「相手方との守秘義務により開示いたしかねます。」ということで全く信用できません。
うがった見方をすれば、この債権譲渡先は関連会社で、「60億円の不動産を16億円で買い叩いた可能性がある=濡れ手で44億円の利益を得た可能性がある」ということです。
・任意売却を諦めた理由が全く不明
・競売を諦めた理由が意味不明
・債権譲渡先を開示しない
という点を考えれば「答えは1つのような気がします」と前回のコラムでは述べさせていただきました。
それに対して金融庁もさすがにこれはひどいと判断したようで、3月14日=ホワイトデーに追加で行政処分を下しています。引用するとこうですね。
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当社は、田中代表取締役の主導により本件債権譲渡の具体的な検討を開始しているところ、コンプライアンス部長から、債権譲渡に当たっては、当社の債権管理回収マニュアル上、本件担保不動産の競売による売却見込価額との比較検討が必要である旨の指摘を受けたため、本件担保不動産に係る不動産鑑定評価書を参考にするなどして、本件担保不動産に係る競売見込価額の評価を初めて行ったとしている。
また、当社は、本件担保不動産に係る競売見込価額の評価に際し、本件鑑定評価書において、商業用物件である建物及びその敷地(土地)の双方が共同担保となっている物件について、建物価値を考慮しない、更地としての評価(独立鑑定評価)がなされていることを踏まえ、当社が独自に公示地価等に基づき行った更地としての評価額と、当社が独自に本件鑑定評価書中の想定賃料単価等に基づき行った収益評価額とを単純平均した額に一定の率(競売時の下落見込み率)を掛けた上で、本件担保不動産の競売見込価額につき、本件鑑定評価書で示された評価額の合計金額をさらに下回る約20億円と評価している。
このように、当社は、本件担保不動産の大半において、貸付先による任意売却が一向に進んでいない状況を認識しながら、初めて本件担保不動産の競売見込価額の評価を行っているところ、当該評価に係る手法については、共同担保物件に関し、土地及び建物を対象とする収益評価額が、更地を対象とする更地評価額を常に上回っており、建物独自の価値が認められる状況において、上記のとおり、建物価値を考慮する収益評価額と建物価値を考慮しない更地評価額とを単純平均している点で、適切さを欠いているのみならず、その結果についても、合理的な根拠なく、ファンドの出資持分の取得勧誘時の「調査価格」を著しく下回っているなど、当社による本件担保不動産の競売見込価額の評価は、著しく杜撰なものとなっている。
当社は、当社取締役会において、本件債権譲渡を決議し、その際、田中代表取締役は、特別利害関係人として、本件債権譲渡の概要について説明している。上記説明に際し、田中代表取締役は、本件担保不動産の買受けを検討していたZ社から、本件貸付債権の買受けの申出があったことを認識していた。また、田中代表取締役は、本件取締役会において、監査役から「譲渡対象債権の現金化の方法として債権譲渡が適切であり、投資家利益にも資するとの条件が成立することを前提にすれば、現状において、いかに良い条件で、債権譲渡すべきかという部分に尽きるのではないか」との指摘を受けていた。さらに、田中代表取締役は、上記のとおり、当社における本件担保不動産の競売見込価額の評価額が約20億円となっていることを認識しており、16億円を超える買受金額の提示がZ社からなされる可能性があることを認識し得る状況にあった。
このような状況において、田中代表取締役は、本件取締役会において本件債権譲渡の概要を説明した際、本件買受申出について一切言及していないばかりか、「限られた当社の人員及び時間の中で、当時、債権譲渡候補先となっていた14社との交渉に最大限注力する必要があった」ことなどを理由に、Z社への買受金額の提示依頼等も行っていない。また、本件買受申出の存在を認識していた他の役職員においても、本件債権譲渡の実行に際し、Z社から16億円を超える買受金額の提示がある可能性も検討していない。
このように、当社は、本件買受申出に係る条件等を考慮することなく、本件債権譲渡を実行している。
当社の対応は、投資者保護を図る上で極めて不適切であり、「投資者保護に万全の措置を講ずること」などの業務改善命令を履行したものとは認められない。
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指摘されているポイントは主に以下3つですね。
・担保不動産の評価について、建物の価値が十分あった物件でもなぜか(<建物+土地の評価>+<土地の評価>)÷2という計算を行い、建物の評価を半額にして、20億円という不当に安い金額にしている。
・それにも関わらず16億円というさらに低い金額で債権譲渡している。
・取締役会での決議の前に別のZ社から買受の打診があったものの無視した。
全くもってひどい話ですが、結果として「金融商品取引業者としての登録取消し」という処分が決定されています。
処分自体は当然ですが、ただ今回の指摘では前回のコラムで感じた以下疑問が全く解明されていません。
・なぜ任意売却を諦めたのか?
・なぜ競売を諦めたのか?
・なぜ債権譲渡先を開示しないのか?
「慌てて不当に安い金額で叩き売った」のは間違いありませんが、その理由が明らかになっていません。
この闇の解明はいつ、誰がするのでしょうか?
同社は既に集団訴訟で訴えられていますが、その過程でこの闇に光が当たり、ソーシャルレンディングという業界全体で法的な再発防止策が図られることを祈りたいと思います。
言い換えれば、今の法律の枠組みにおいては投資家の資金は誰も守ってくれないということですね!
金融庁が登録を取り消したところで投資家には1円も返ってきません。
ちゃんとした法整備が整うまではやはり「ソーシャルレンディングに投資してはいけない」という結論となりそうです。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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