当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは「合同会社M&S」ですね。この会社については以前取り上げておりまして、一応語り尽くした感はあります。
>>>運用リターン30%超!M&Sは魅力的?
また、積極的なマーケティング(?)が行われていたせいか読者の方の関心も高く、何度かご質問いただいていたのも印象的です。
>>>男性「M&Sに対する御社の意見に対する反論(ステマ)が行われていました。」
>>>男性「合同会社M&Sについて、本当に信用しても大丈夫なのでしょうか?」
>>>男性「合同会社M&Sについて」
>>>40代男性「M&Sについて、詐欺会社がプロキシーファイトまでやる?」
大まかに言えば
1.違法性の高いステルスマーケティングが行われている可能性があること
2.前身と目される「キャロライナパートナーズ」社について、金融庁が違法な活動を行っていると警告を出していること
3.運用成績の辻褄が合わないこと
4.脱法的な「合同会社の社員権販売」の形でファンド募集活動を行っていること
と言った点を指摘させていただいたわけですね。
さてそんな合同会社M&Sについて、読者の方から新たな質問をいただきました。こういう内容です。
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昨年11月に合同会社M&Sに出資(出資額1,000万円)しております。昨日郵送で出資者の利益確保と継続的事業拡大のため、セイシェル共和国法人へ移転する旨の案内が届きました。
法人税や財務諸表作成コストが省け、出資者への成功報酬(配当)率も10ptほど増加するとのことですが、海外からの送金・着金のリスクが増加し、年間手数料も増える(+1pt)ようです。
今回の移転に伴い解約した場合は出資額の15%に相当する解約手数料がかかります。(2年目は8%、3年目は無料)
事前に当サイトを拝見しておれば昨年の出資は見送ったと思いますが、このまま出資を続けるべきか迷っております。
ご助言頂きたく、よろしくお願い申し上げます。
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当サイトとしてはこれが事実なのかどうかは確認できませんし、同社ホームページを見る限りは都内の住所が掲載されておりますが、一方否定する理由もありませんので、質問の趣旨に沿って回答したいと思います。
まず最初にポイントとなるのは「セイシェル共和国法人へ移転する」ことについて事前に出資者の賛同を得ているのかどうか、という点ですね。
出資者=社員権を保有しているわけですから、株主と同様に会社の重大な事項に関しては議決権を保有しているものと思います。株式会社は株主のものであるのと同じように合同会社は出資者のものです。
もしかすると社員権の販売=出資の時点で「議決権を放棄する」と言った文言が盛り込まれているのかもしれませんが、そうでなければ出資者の賛同を得ていない移転は無効の可能性がありますね。
特に解約した場合は15%の手数料がかかると言った、明確な不利益があるのであればなおさらです。質問者の方はまずはご自分の権利関係をチェックしていただければと思います。
またコスト削減のメリットが強調されているようですが、当然、日本の法律が届かなくなるわけですから、出資者のリスクは大きく高まるものと思います。万が一の場合でも差し押さえすらできません。
その点ではまずはご自分の出資金を守るためにどういう方法が取り得るのか、専門家に相談されることをお勧めしたいと思います。
ちなみに上記15%の解約手数料ですが、法的に有効なのかどうか微妙ですね。契約時に明記されていれば有効でしょうけれど、契約時に書かれていないものであれば支払う必要はないはずです。
こちらも契約書をよくご確認の上、専門家の方に相談してみてください。
そうしたわけでもしこの内容が事実なのだとすれば、M&S社への出資は大きな危機を迎えていることになります。
本来こうした投資家を顧みない行為は金融庁が鋭く目を光らせているはずですが、残念ながらこの「合同会社の社員権の自己募集」は、金融商品取引法の対象外であり、金融庁は全く守ってくれません。
合同会社への出資を検討されている方は他山の石としたいものですね。
さてそんなM&Sですが最近は運用成績の開示をやめてしまったようですね。ネットを検索してもこれが最新のようです。
そもそもこれが正しいのかどうかも、これまでの経緯を踏まえれば眉唾ですが、同社は投資先を開示しておりますので、2018年6月末から2019年6月までの1年間の運用成績を推測したいと思います。
・株式会社三東工業社(投資開始2016年6月) : 2,800円→2,291円(下落)
・神田通信機株式会社(投資開始2016年8月): 2,550円→2,074円(下落)
・株式会社赤阪鐵工所(投資開始2017年1月): 2,124円→1,880円(下落)
・横浜丸魚株式会社(投資開始2017年1月): 884円→868円(下落)
・日本アンテナ株式会社(投資開始2017年11月): 882円→1,017円(上昇)
・大井電気株式会社(投資開始2017年8月): 3,460円→2,189円(下落)
唯一、日本アンテナだけが上昇していますが、それ以外は惨憺たる結果ですね・・・。大井電気については4割近い下落となっています。
仮にこれらの銘柄に分散投資していたとすると過去1年間の成績は「−12%」ということですね。
もちろん投資の世界ですからマイナスとなることはよくあることです。しかし問題となってくるのは、同社がこうした運用成績の発表をやめてしまったことですね。
都合のいい成績は発表し、都合の悪い成績は発表しないとなると、有利誤認を生むわけですから「詐欺」と批判されても仕方ありません。
さらにこのタイミングで、本当に海外への移転を検討しているとなるときな臭いものしか感じませんね・・・。もちろん運用成績がマイナスであれば投資家への配当はありませんので、投資家にとってみれば「デメリットだけ」ということになります。
運用実態や同社の現況はよく分かりませんが、投資家の出資金が保全され、きちんと返還されることを期待したいと思います。
そして今回の記事で繰り返し強調したいのは「合同会社への出資は絶対ダメ!」ということですね。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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