当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは都市綜研インベストファンド株式会社が運用する「みんなで大家さん」ですね。商品名を広告などで見た人は少なくないかもしれません。
当サイトでもすでに常連となっておりまして過去のコラムを列挙してみるとこうなります。
>>>利回り7%!みんなで大家さん34・35号は荒唐無稽
>>>利回り7.0%!みんなで大家さん33号は魅力的?
>>>利回り7.0%!みんなで大家さん32号は魅力的?
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんファーム3号は魅力的?
>>>関係者!?みんなで大家さんの記事に対する指摘を検証
>>>利回り7%!みんなで大家さんの決算はどうなった?
>>>みんなで大家さんファーム2号の記事に対する指摘を検証
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんファーム2号は魅力的?
>>>利回り7.1%!みんなで大家さんファーム1号は魅力的?
>>>口コミで怪しいと言われる、みんなで大家さんの最新の評判
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんの疑問点をまとめると
>>>利回り6.1%!みんなで大家さんはやはり疑惑だらけ
>>>利回り7%!みんなで大家さん伊勢は魅力的?
>>>元本割れナシ年利6%!みんなで大家さんは魅力的?
>>>6.1%の高金利な投資 みんなで大家さんは魅力的?
>>>みんなで大家さんの債務不履行=デフォルト率は70%?
>>>想定利回り7.0%!みんなで大家さん19号は魅力的?
>>>行政処分!「みんなで大家さん」のその後は?
疑惑だらけではありますが、非常にしぶといですね!新規資金が流入し続ける限りスキームが破綻することはないのかもしれませんが、募集金額がどんどん増えてきていて「肌寒さ」を感じるのは記者だけではないと思います。
しかも「みんなで大家さん」を検索すると自作自演のサイトが多く出てきます。情報発信する側としては多少の虚しさも感じないではないですが、引き続き積極的に注意喚起をしていきたいと思います。
そんな「みんなで大家さん」の新たな投資案件が「みんなで大家さん37号」ということになります。想定年利回りは7%と高いですが、その中身は果たしてどうなるのでしょうか?
・・・先に種明かしをすると途中までは前の記事のアップデートとなりますので、「読み飽きた」という方は「★★★ここまでは同内容★★★」と書かれたところまで読み飛ばしてください。
さてこの37号の物件概要は「32号」「33号」「34号」「35号」と同様にこうなっています。
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物件名:アグレボバイオテクノロジーセンター
住居表示:福岡県遠賀郡水巻町頃末南二丁目13番1号
延床面積:1階22,486.73平方メートル、2階20,728.86平方メートル、3階309.98平方メートル、合計43,525.57平方メートル
付属設備:ポンプ室54.74平方メートル、駐車場2,887.24平方メートル、駐車場2,931.69平方メートル
種別:店舗
構造:鉄骨造陸屋根3階建
建築時期:平成21年9月30日新築
想定賃貸利益:200,200千円(税別)
対象不動産:営業者は当物件の土地、建物に関して21分の2(2/21)の所有権を取得し、賃貸します。
募集金額:1口100万円×2,288口=2,288,000千円(22億88百万円)
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まず現状の物件はどうなっているかと言うとこうです。
豊田通商が開発した「グランモール」という施設ですね。建物は立派ですが、ほとんどのテナントが撤退し、2階フロアはゲーセン以外全滅しているとのことです。
切ない状況ですね・・・。テナントの採算が合わないということは、オーナーにとってもこれは赤字物件だということです。商業用不動産の価値は主にその収益から算出されますが、収益がゼロということは「この物件の価値はゼロ」です。
つまりは価値がゼロの物件に対して
・32号:22億88百万円
・33号:22億88百万円
・34号:11億44百万円
・35号:11億44百万円
・37号:22億88百万円
=合計92億円も投資するという話です。もはや正気の沙汰ではないですね・・・。
・都市綜研インベストファンド社は、なぜ商業的価値がゼロの施設に約92億円も投資し、年間8億円もの賃料が得られると考えるのかしっかり説明する義務があります。
まぁ合理的な説明は不可能です・・・無価値なものはどこまでいっても無価値です。
しかし投資金額が膨らむにつれ、ますます荒唐無稽になってきましたね!なぜ金融庁が黙っているのか本当に不思議です。
さてこの建物が無価値である証明ですが、上記営業状況以外では、この施設のオーナーだった豊田通商の決算書が参考になります。2015年3月末の決算書にはこうなっています。
このGRAND MALLの帳簿価格=建設費用は土地代込みで53億円となっています。「何だじゃあ92億円でもあり得るじゃないか」と思われるかもしれませんが、上記物件概要の通り投資対象はこの物件の「21分の2」ですね。
つまり建設費用ベースでもこの投資対象物件の価値は5億円しかないわけで、それを約23億円で買うなんてありえません。
しかもこの物件は豊田通商の2016年3月期決算には出てきません。なぜなら同決算で、同社は「収益性が著しく低下している」として減損処理してしまったのですね!
約52億円の減損していることが分かります。つまり、現在のこの物件の価値は53億円−52億円の1億円以下しかないということです。その21分の2なら「950万円の価値」ですね。
毎回ご案内しているように950万円の価値の物件を個人投資家に約23億円で売却しようなんて、何かの罪にならないのでしょうか?
いずれにしてもこの物件の累計「21分の8」を92億円で買うのも法外なら、誰かが毎年8億円もの賃料を払って借りてくれることなど「絶対にありません」。恐らく同じスペースを「1000分の1」の年80万円で借りられるでしょうから。誰も借り手がいなくてガラガラなんですよ・・・。
万が一太っ腹な店子がいたしても、賃料として年8億円払うなら、その資金でグランモールの施設全体を購入できますね。時価が1億円なら年間8軒購入できることになります。どこからどう見ても合理的な説明などできません。
そうしたわけでいつものことではありますが、この「みんなで大家さん」の案件は
・物件に法外な値段をつけて投資資金を集めている
・法外な値段を正当化するための賃料を支払えるとはとても思えない
という2点において完全に「破綻」しています。
読者の中に、これら案件の返済原資となるはずの「凍結解凍覚醒法」で栽培されたバナナを1本でも食べた方はいるでしょうか?
食べなくてもいいです。スーパーやコンビニで目にした方はいるでしょうか?
筆者は残念ながら一度も見たことはありません。とするとやはりその販売量は僅少であり、上記巨額の賃料を負担できるはずがないですね。
★★★ここまでは同内容★★★
さてそんな「みんなで大家さん37号」に関して今回は2点ほど突っ込もうかなと考えていました。
まず1つ目は、なぜか36号がどこにもない点です。数え間違えでもしたのでしょうか?
2つ目は今回気が付いたのですが、販売ページに書かれていたこの文言です。
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対象不動産である「アグレボバイオテクノロジーセンター」では、国内外の大手コーヒーメーカーからの要請で、 2019年6月より「凍結解凍覚醒法」を施した30万苗のコーヒーの生産も始まっており、今後も、世界各国からの需要に応じて、様々な植物の研究・生産・販売が行われていきます。
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30万苗のコーヒーの生産が始まっているということで、ショッピングセンターの中で苗が育つのかなと思いつつ、これが正しいのだとするといくらくらい儲かるのでしょうか?
というわけで楽天でコーヒー苗の最も高いものを調べてみるとこれが出てきました。
2,000円かーと思ったら5ポットですね!1ポットあたり400円です。
これが「凍結解凍覚醒法」によっていくらになるかという話ですが、同社のこの説明が参考になりそうです。
「3倍の成長率」ということですね!とすると最大で3倍の価値ということですから1苗=最大1,200円ということになります。30万苗なら最大3億6千万円ということですね!
種が発芽して苗に育つまでに少なくとも3ヶ月くらいはかかるとすると売り上げはどう頑張っても14億円です。
人件費やら肥料代やらで利益率が半分とすると年間の利益は7億円ですね。施設の「21分の8」の時点ですでにもう賃料が8億円を超えていますので赤字ですし、全体を募集し終える頃には賃料は21億円まで膨らむ算段ですから、利息の支払いは絶対不可能です。
投資をご検討の方はどうやって賃料が入る理屈になっているのかしっかり調べていただければと思います。
・・・と、今回はここで話を終えるつもりだったのですが、同社の親会社である「共生バンク」のホームページを見るとかなり興味深いものが出てきました。共生バンクの方では同社の決算書がかなり細かく掲載されているのですね!
まず2018年3月期の有形固定資産の明細を見てみるとこのような記述があります。
時期的にこれが当てはまるのが「みんなで大家さんファーム1号」ですが、募集金額がこうなっています。
100万円×2,400口=24億円も募集していたのですね!同社は時価の8割しか募集しないと宣伝していたわけですから、本来は約19億円しか募集できないはずです。これは「虚偽募集」以外の何ものでもありません。
同じように2018年3月期決算ではこういう記載もあります。
時期的には前者が「みんなで大家さんファーム2号」で100万円×4,000口=40億円募集しています。本来であれば上記の通り32億円しか募集できないわけですから、これも「虚偽」ですね。
そして極めつけは後者で、これは「みんなで大家さんファーム3号」かと思いますが、6億円で購入したものを何と100万円×1,800口=18億円で販売したわけですね!ここまでやるともう「投資詐欺」と批判されても仕方ないと思います。
当然、投資家の立場からすれば6億円の価値のものを18億円で買わされたわけですから現時点で「−12億円の評価損」ということになります。
ではこの「みんなで大家さんファーム3号」の運用実績を見るとこうなっています。
あくまで評価額は時価を維持していると言い張っているのですね!大嘘です・・・。投資家のみなさんはぜひ、なぜ6億円のものを18億円で購入したにも関わらず損が出ていないか確認してみてください。
ちなみに上記の通りこの取引相手は同社と名前のよく似た都市綜研インベストバンク株式会社であり、もちろん関係会社なわけですが、この奄美の物件の時価はこちらの記事でもご案内したようにどうがんばっても1億円にしかなりません。
>>>利回り7.0%!みんなで大家さんファーム3号は魅力的?
1億円のものが6億円で販売されたわけですから、まず5億円の利益が都市綜研インベストバンク社に落ちたことになります。
次に6億円で購入した物件で18億円集めたわけですから、差し引き12億円のキャッシュが同社に残ります。ではこのキャッシュがどこに向かっているかと言うとここですね。
親会社である共生バンクに「預け金」として2018年3月期の時点ですでに約63億円もの資金が流れていることが分かります。
同時点で投資家の出資金は198億円ですから、ちょうどその3分の1が親会社に流れているわけですね!となるとどこから7%もの分配金が出ているのか何となくわかってきますね・・・。
そもそもこうした投資商品はまず最初に投資物件があって、それを購入するために投資家が出資するわけですから、こんな「余り」が出るはずがないですね!
例えば6億円の物件があったとして、2割は劣後出資なので残り8割の4億8千万円しか投資家から集められないわけですから、出資金は全額、物件購入費に充てられ、余りなど絶対出ませんね。
こうした巨額の預け金の存在が、同社の投資商品が虚偽だと証明しているようなものだと言えます。
この共生バンク社のホームページを見てみるともう1つ気づいた大きな疑惑があるのですが、さすがに長くなりますのでそれはまた別の機会としたいと思います。
いずれにしてもこの「みんなで大家さん」の投資募集の内容は極めてデタラメかつ悪質であり、絶対投資してはいけないと言えそうです。
加えていつも嘆息しているように、表面的な数字だけをチェックしてみても辻褄が合わないことだらけですので、ぜひ監督官庁である金融庁がしっかり調べてほしいものですね。
巧妙な検索エンジン対策によって同社への批判記事がほとんど投資家の目に触れない現状であるなら尚更です。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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