当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは日本クラウド証券の「Crowd Bank=クラウドバンク」ですね。実績平均利回りは6.99%とかなり魅力的ですがその中身はどうなのでしょうか?
ちなみにこの日本クラウド証券については過去以下の通り取り上げておりますので参考になさってください。
>>>日本クラウド証券に業務停止命令!どう考える?
>>>日本クラウド証券のクラウドファンディングって信用できるの?
では久しぶりに同社のサイトをチェックしてみるとまず目に飛び込むのはこの実績ですね。
上記の通り実績平均利回りが6.99%であることに加え、融資元本回収率が100%ということで安全性も強調されています。
また過去のコラムで指摘した「会社の業績が開示されていない」という点も以下のように開示されています。
>>>業務及び財産の状況に関する説明書【平成31年3月期】
2019年3月期の業績はこのようになっています。
・営業収益 : 8億円
・営業利益 : 5億円
・当期利益 : 5億円
多額とは言えませんが、しっかり黒字を出しているようなのは好印象ですね。
つまり
・利回りが高く
・安全性が高く
・会社の信用力もある
ということですから、このクラウドバンクは魅力的、という結論でいいのでしょうか?
・・・もちろん、そんな訳がありません。
まず賢明な読者の方々ならお分かりの通り「安全性が高く、利回りが高い」商品など、この世に存在しません。
仮にあったとしても絶対、所有者が手放しません。タダでお金をあげる人がいないように、絶対儲かる商品を手放す人などいないのです。
言い換えるなら、もし本当に6.99%の利回りなら、例えば6%前後のリスクがないと「おかしい」ということです。
ではそのリスクがどこにあるのか探っていきたいと思いますが、現在募集中のファンドは以下の通りです。
残念ながらどのファンドも貸出先が明記されていません。既に金融庁からはクラウドファンディング=ソーシャルレンディングについて、貸出先を明記するよう要請されているにも関わらず明記していないということは「明記できない先」ということですね。
つまり根本的なリスクはこの
・どんな会社に融資しているか分からない
という点です。 仮にいくら6.99%の分配を得たとしても14年以内に破綻して元本が吹き飛べば結局は損が出るわけですからね。
ちなみに親会社の日本クラウド証券ではなくファンド運営会社の決算書はこのようになっています。
貸付金85億円に対して、41億円もの預金を遊ばせているのはどうかと思いますが、それはさておきこの決算書で分かる通り、融資先企業は13億円もの利息および手数料を支払っているわけですから、その実質的な金利は16%にもなります。
言い換えれば融資先は平均して「16%もの金利を払わないとお金を借りられない会社」ということですから、自ずとその実像が想像できます。
仮にこうした「16%もの金利を支払わないといけない会社」の年間倒産率がざっくり10%だとすると、6.99%のリターンでは全く割に合わないということになります。
その点では上記PR部分の中で、融資元本回収率100%というのが最も不適切な表現だということですね。これまでたまたま100%回収できていたとしても、そのまま回収し続けられるはずがありません。
同じように元本回収100%を謳っていた業界最大手のmaneoも現在の貸し出し状況はこのようになっています。
・運用中 : 78億円
・延滞中 : 91億円
もはや運用中のファンドより、延滞中のファンドの残高の方が多い状況ですね!
しかしこれは何も驚くことではありません。今や空前の低金利&カネ余りの状況の中で、各金融機関は死に物狂いで融資先を探しており、マトモな会社であれば極めて低い金利で融資を受けることができるのです。
それにも関わらずクラウドファンディング=ソーシャルレンディングから10%以上の実質的な金利を払ってしか融資を受けられない会社など、申し訳ないですが
・マトモな会社であるはずがありません。
もし仮に本当にマトモな会社に貸しているのであれば、今度は
・個人投資家からお金を集める必要がありません。
銀行から借り入れでもして全部自己資金で運用すれば、全てのリターンを社内に留保することができます。そうしないということはやはりリスクが高い融資先であるということですね。
さらに言えば、ファンドの貸付金が85億円しかないのに、上記の通り親会社である日本クラウド証券が8億円もの営業収益を上げている点も気になるところです。利益率が高すぎませんか!?
投資家の資金が良いように還流されていないか心配です。
そうしたわけで仮にこのクラウドバンクに投資するとしても
・融資先の名前や財務状況
・担保や保証内容の詳細
が開示され、投資リスクがきちんと把握できてから、ということになるのでしょうね。それが分からないと6.99%という平均利回りが本当に魅力的なのかどうか分かりません。
繰り返しになりますが、仮に6.99%の利回りでも倒産確率が10%あるなら、その投資は本質的にマイナス=必ず損する投資ということです。
では最後に、あくまで一般論ですが、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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