当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは株式会社グッドコムアセットが運用する「Good
Com Fund」ですね。ネットではこんな広告が出てきます。
クリックするとこんな感じですね。
鳥越氏のセミナータイトルは「鳥越流、ポジティブな人生の歩き方」。良い意味でも悪い意味でも本件の「不動産投資」とは関係なさそうですね・・・。
それはともかくとして気になる投資の中身はこういうことになります。
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・ファンド名:Good Com Fund第1号ファンド(GENOVIA東日本橋駅前green veil803号室)
・募集金額:6,450万円
・運用期間:30年
・予定分配率:2.57%
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募集金額は少ないですが、30年間2.57%で運用できるのであればそれなりに魅力的ですね。
とは言いつつ、世の中ウマイ話はないわけで、この投資が本当に魅力的なのか慎重に考えていきたいと思います。
まずこの「GENOVIA東日本橋駅前green veil803号室」の時価がどれくらいかということですが、このマンションには以下2種類の部屋しかないようです。
・56.42平方メートル
・26.1平方メートル
金額からして前者なのではないかと思いますが、次に物件売却価格の相場を調べてみると以下のような数字が出てきました。
・相場価格:116万円/u〜122万円/u
掛け算するとこうなります。
・相場価格:6,545万円〜6,883万円
この数字が正しいのだとすれば募集金額である「6,450万円」は市場価格から大きく乖離していることはなさそうです。劣後部分があったりすると話は別ですが・・・。
それはともかくとして今度は予定分配率について考えると、2.57%というのは不動産ローンとしては普通か、やや安い水準ですね。とすると資金調達する側=グッドコムアセット側からすれば、「悪くない金利でローンを借りられる」わけですから、経済合理性もありそうです。
加えて「GENOVIA東日本橋駅前green veil」は同社の販売物件のようですので、不稼働資産の売却もこのファンド運営を通じて可能になってきます。
さらには本業である、投資用不動産を購入可能な顧客リストも手に入れるのだとすれば、同社のメリットは明白ですね。
こうした投資においては、このような「資金を集める側の経済合理性が明らかである」という点は大切です。さもないと「投資詐欺」の可能性が大きく高まりますからね。
ここで視点を変えて、この2.57%という予定分配率が投資家の目線から見て妥当なのかどうかを考えてみたいと思います。
この803号室が上記の通り56.42平方メートルの部屋なのであれば、その賃料はこういう感じのようです。
・21万円〜22万円
仮に22万円だとすると、年間264万円となり、投資元本である6,450万円からすれば約4%となってきます。
ただ一方で恐らく2年に1回、2ヶ月程度の空室があるでしょうし、管理費などは賃借人が負担するとしても、メンテナンス費用や修繕積立金、税金、管理会社への費用なども別途発生してくると思います。
ざっくりこんな計算が成り立つかもしれません。
・空室費用:年22万円
・メンテナンス費用:年20万円
・修繕積立金:年24万円
・税金:年20万円
・管理会社への費用:年24万円
これらを控除すれば家賃はもとの年間264万円から年間154万円に減り、利回りは2.39%となってきます。予定分配率である2.57%と比べれば当たらずとも遠からずであり「概ね妥当」と言えそうですね。
そのように考えると「30年×2.57%」という条件は割と現実的なように感じますが落とし穴は何でしょうか?
恐らくポイントは2つですね。まず1つ目は賃料はどんどん下がっていくということ。年間1%程度下がっていくという話を聞いたことがあります。そうなると30年後には家賃はもとの年間264万円から年間185万円となり、一方でメンテナンス費用や修繕積立金などは固定なので実質的なリターンは大きく削られてしまうことになります。
こうしたリスクは基本的に投資家が負うべきものですので、「家賃の下落リスクを考えるとずっと2.57%のリターンが続くと考えるのは非現実的」ということです。
仮に2.57%の分配率が、30年後には1.80%(30%ダウン)になるとすれば平均分配率はその真ん中の2.18%となり30年間のトータルリターンは
・30年×2.18%=66%
程度にとどまる可能性があるということですね。
2つ目のポイントは建物自体の価値もどんどん下がっていくということです。仮に、いくら修繕を続けても築5年のこの物件は35年後(通算40年)には建て替えないといけないとすると、運用期間が終わる30年後には少なくとも建物の価値は限りなくゼロになっているということです。
マンション価格に含まれる土地と建物の価格比は4:6や3:7と言われており、仮に4:6だとしても6の建物部分の価値がほぼゼロになっているとすれば、30年後には市場価格が今の半値以下になっていてもおかしくないということですね。
仮に半値だとすればこのマンションの市場価格は30年後には3,225万円になっているということです。
こうした試算が正しいとすればこの投資は
・6,450万円を30年間運用して、4,257万円の分配と市場価格3,225万円のマンションが手に入る
ということですね。ちなみに他の運用と同じく、分配金受取時に20%の税金がかかるようであればこうなります。
・6,450万円を30年間運用して、3,406万円の分配と市場価格3,225万円のマンションが手に入る
とすると30年間の正味のリターンは
・(3,406万円+3,225万円)−6,450万円=181万円
となりギリギリプラスということです・・・。トータルリターンは2.8%ですが、これは30年分なので、年利換算すれば「0.09%」となります。
0.09%・・・それなら0.2%の定期預金で複利運用した方がマシそうです。
やはり世の中ウマイ話はないということですね。
ちなみにこのファンドを運営している株式会社グッドコムアセットは東証一部上場の会社のようで、業績も堅調であり、現時点では信用力は高そうですが、それでも運用が終わる30年後にこの会社が存続しているのか誰にも分かりません。
業績堅調に思えたTATERU社も今や破綻寸前ですからね・・・。
加えてリーマンショックの時に真っ先に倒産したのはこうした投資用不動産の販売会社ですね。
投資対象である「GENOVIA東日本橋駅前green veil」は同社が募集・管理を行っているようですので、万が一のことがあれば投資家としては運用と物件価値のWでダメージを受けることになります。
そうした会社の破綻リスクも考慮に入れて投資の是非をご検討ください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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