当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのは利回り5.5%を喧伝する、株式会社TSONの「TSON FUNDING」です。サイトでは
・ファンド運用数No.1
・取り扱いファンド総額No.1
・平均利回りNo.1
と記されていますが、もちろん全く聞いたことがありません。ということで注釈をよく見ると・・・「中部地方に本社がある不動産特定共同事業者調査」となっています。何やソレ。
中部地方に限定している時点で「No.1」とは言えないんじゃないですかね?
はなから胡散臭い雰囲気を醸し出している同社ですが、ファンドの具体的な中身を見てみたいと思います。最新のファンドの中で、物件の立地が首都圏である「SMART
FUND43号」の中身をチェックするとこうなっています。
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●SMART FUND43号の商品概要
【出資総額:9,800万円】
【優先出資募集額:8,820万円】
【劣後出資額:980万円】
【想定利回り5.5%(年利)】
【想定運用期間1年】
【入居開始から全期間家賃固定型の賃料保証付き】
【建物は賃貸市場に約2%しかない希少価値のあるメゾネットタイプ】
【土地は一般定期借地権を活用】
【優先出資90%:劣後出資10% ※劣後出資が増える場合があります】
【入金期日:2023年5月25日】
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権利関係は借地権ということで、土地は含まれず、「ほぼ建物だけ」の投資ということになります。その物件の概要はこうです。
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スマートファンド埼玉県春日部市II
所在地 埼玉県春日部市八丁目字浦514-1他
最寄り駅 東武伊勢崎線「春日部」駅徒歩11分(約854m)
規模・構造 木造2×4工法(木造階建て)1棟8戸
敷地面積 637.02u
建物面積 540.16u
種類 共同住宅
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ネットでメゾネットの建築費用を検索すると
・一坪あたり70万円
とのことです。とするとこの物件の建設費用はざっくり1億1,500万円となり、上記の通り「ほぼ建物だけ」への投資と考えれば、出資総額9800万円というのは「適正」だと感じます。
次に家賃相場をチェックしてみると540uで8室なので、単純計算では1室約68uということになります。SUUMOを見てみると、12万円くらいという感じでしょうか。仮に12万円とすると家賃収入は1,152万円となり、表面利回りは11%を超えてきますね!
空室率を10%としても1,040万円ということですから、もろもろの経費を引いたとしても「9%程度」では回りそうです。とすると利回り5.5%は無理のない数字と言えそうです。
つまり、募集金額についても利回りについても問題ないとすれば、ネックとなってくるのは・・・「出口」でしょうね。
借地権アパートは通常は融資が下りないと思いますので、買い手がかなり限られてきます。 表面利回り11%で購入してくれる人がいるのかどうかは不明です。
仮に15%でしか売れないとすると、売却価格は7700万円となり、2,000万円超の売却損が発生し、1年間どころか2年近い賃料が吹き飛ぶわけですね。
とは言いつつ、不動産投資サイトでチェックすると埼玉で築浅で利回りが10%を超える物件は皆無ですので、買う人はいそうではありますが。
というわけでファンドスペックに大きな問題がないとすると、次に考えないといけないのは、なぜこの会社がわざわざ5.5%もの利息を払って個人から資金を集めるのか、という点ですね。
低金利の時代、銀行からお金を借りても1%程度で融資を受けられそうです。とすると5.5%という利息は如何にも高いです。
たださきほどご案内したように「借地物件には融資が下りない」のだとすると、下りない融資を個人資金で賄うというのは経済合理性があると言えるかもしれません。
というわけでここまでは一定の投資余地がありそうですが、最後に運営会社であるTSON社の前期決算をチェックするとこうなっています。
当期利益がたったの15百万円なのですね!つまりプロジェクト1つが頓挫するだけで、5〜6年の利益が吹き飛ぶという極めて脆弱な利益状況だということです。
それでも現預金は6億円程度ありますし、ファンド事業による募集資金は決算の時点で約13億円程度となっていますので、すぐにコケることはないのかもしれませんが、とは言いつつ何年も安心して預けられる先ではありません。
約19億円ある販売用不動産が、当初目論見通り売れるかどうかがカギですね・・・。
加えてファンド事業が好調でどんどん資金が集まることになると、逆にリスクが高まることになります。自己資本はすぐには増えませんからね。
そうしたわけで、運営会社の財務基盤が脆弱すぎるという点で、このTSON FUNDINGはお勧めできません。
参考になさってください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
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