当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはTECRA株式会社が提供するTECROWD=テクラウドですね。サイトを見ると
・累計調達額275億円
・配当遅延、元本割れ0件
・平均実績利回り10%
と華々しい実績が謳われています。ローリスク・ハイリターンの投資であれば魅力的ですが、リスクとリターンは比例していますので、もちろんそんなものはありません。高利回りの裏でどういったリスクがあるのかチェックしていきたいと思います。
なおTECROWDについては過去にも取り上げていますので興味がある方はご覧ください。
>>>利回り8%!TECROWD=テクラウドの障碍者向けグループホームファンドは魅力的?
>>>利回り8%!TECROWD=テクラウドは魅力的?
ちなみに前回のコラムでは
・土地建物の価値が本当は二束三文なので、投資家に高く売りつければ、年10%払っても大きくおつりが出る。
という推論に至りました。「みんなで大家さん」ではあるまいし、「二束三文」というのはさすがに誇張しすぎましたが、とは言いつつ適正価格の約2倍で投資家に売却している可能性があるということです。
では概ね1年が過ぎ、最新のファンドではどうなっているのでしょうか?少しは良心的な経営に回帰しているのでしょうか?
ということで早速チェックしてみると、投資対象である「障がい者グループホーム AMANEKU葛飾東金町」の物件概要はこのようになっています。
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物件概要(土地)
・所在地(地番):東京都葛飾区東金町7丁目59-1の一部、59-3
・地積:618.25u
物件概要(建物)
・物件名:AMANEKU葛飾東金町A棟
・所在(地番):東京都葛飾区東金町7丁目59-1の一部、59-3
・物件種別:寄宿舎(予定)
・構造・規模:木造 2階建(予定)
・延床面積:472.00u(予定)
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直感的にも葛飾区の木造2階建て472uの寄宿舎が5億円もするはずがないのは分かりますが、具体的に価値を計算していきたいと思います。
まず土地については地価が公表されているので簡単ですね。東金町6丁目の地価がu28万7千円なので、それより駅から遠い東金町7丁目の地価がさらに安いのは間違いありません。
仮にu27万円くらいとすると土地の値段は
・618.25u×27万円=約1億7千万円
ということになります。
次に建物の値段ですが、グループホームの建築費用についてこういう記載を見つけました。
坪単価77万円〜100万円ということですね。こちらの物件は延床が472uですから約143坪です。つまり建物の値段は
・143坪×77万円〜100万円=約1億1千万円〜約1億4千万円
ということになります。定員20名の寄宿舎ですからね!こんなものだと思います。木造2階建てですし。
合計すると土地建物の価値は
・約2億8千万円〜約3億1千万円
ですね。そして繰り返しになりますが、募集金額は5億3,450万円。やはり「約2倍の高値で売りつける」という戦略は変わっていないようです。
ということでTECROWDのビジネスモデルは
・土地建物を投資家に2倍近い高値で売りつけているので、年8.5%払っても大きくおつりが出る。
という形である可能性が高そうです。
ただ問題は投資家のお金をいつか返さないといけないということです。新規資金が流入している間はいいですが、新規資金が止まるといよいよ正念場ということですね。高値で売りつけたものを高値で買い戻さないといけないわけですから。
翻って同社ホームページを見ると以下のような記述があります。
・累計調達額:275億円
・累計償還額:72億円
調達額の半分くらいが利益として同社グループに滞留しているとすれば140億円くらいの資金力があるということですかね。
また、現在の残高が差し引き200億円くらいとして10%の利息を払うには20億円必要ということになります。加えて2割くらいが流出するとすれば40億円の手当が必要です。
言い換えれば新規資金が年間60億円くらいあれば資金が回っていくし、それを下回れば徐々に資金ショートに向かうということになるのですかねぇ。
いずれにしても「みんなのクレジット」しかり「maneo」しかり「スカイプレミアム」しかり「エクシア」しかり、死ぬときは一瞬なので直前で逃げることはできません。
そもそも、安定的に10%のリターンが得られるのであれば、絶対にファンドなんか作らず、銀行融資を利用するはずです。銀行なら担保があれば1%前後でいくらでも融資してくれますからね。
「1%でお金を借りられるはずなのに、10%でお金を借りようとするのには絶対何か裏がある」
と考えるのが大人のたしなみです。投資は必ず「性悪説」で考えないといけません。
十分お気をつけください。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
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