質問 :銀行が勧める、S生命の個人年金保険は本当にお得ですか?
<50代/女性>
回答 : 読者の方から上記のような質問をいただきました。他に同様のお悩み相談があれば月1回程度の頻度で回答していこうと思いますので、もし質問したいという方はこちらの投稿フォームから送信してください。もちろん個人情報は不要です。
さて質問内容に戻りまして、個人年金保険に関する質問ですね。S生命の某個人年金保険はお得かどうか、という疑問です。
ちなみに質問ではしっかりと商品名を明記いただいたのですが、この回答では伏せておきます。というのも、個人年金保険に関する記者の知識は今一つであることに加えて、ネット上の解説記事によれば必ずしも他の保険より劣っているわけではない一方、ことさら優れているわけではなさそうだからです。
したがって今回の記事はS生命の商品というよりは個人年金保険一般に関するもの、とご理解ください。
では個人年金保険ですが、「年金」と名前がついているもののいわゆる年金とは全く異なるもので、商品の本質はあくまで生命保険です。つまり、万が一のことがあった場合に保険金が下りる、ということですね。当たり前ですが。
ただし生命保険だけであればニーズが限られてきますし、生命保険会社の旨味も少ない。そこで単なる生命保険から「生命保険+貯蓄」、「生命保険+投資」と言った、顧客の資金運用ニーズもカバーできる商品が拡充されてきました。
これらの商品は主に以下のような商品性となっています。
1.万が一の時に保険金が出る(保険機能)
2.払込期間が終わった後に解約したり受け取ることで、払込元本+運用益を得ることができる(運用機能)
さらにその受け取り方法として5年や10年といった期間、均等に受け取ることができるのが「個人年金保険」というわけです。
もちろん多くの生命保険会社の経営基盤・財務基盤は盤石ですが、それでも「公的年金」とは全く異なる点には注意が必要です。
ちなみにこの「保険+運用」という点では一石二鳥とも言える「個人年金保険」ですが、問題点があります。それは何かと言うと、「運用益の中から保険料を充てる仕組み」ですね。
以前の高金利の時代には何でもなかった保険料の負担ですが、今のように超低金利の時代では運用益はごくわずかですから、その中から保険料を捻出するのは簡単ではありません。
とすると必然的に「運用利回りを下げる」か「保険機能を縮小する」か、あるいは「外貨などリスクの高い資産で運用する」しかなさそうですね。
では今回、質問いただいたS生命の個人年金保険はどうなっているかと言うと、まず受取額は円建てで確定、ということですので「外貨などリスクの高い資産で運用する」というわけではありません。
つまり商品性を維持するためには「運用利回りを下げる」か「保険機能を縮小する」しかないわけですが、特徴としてこのように記載されています。
「死亡保障を既払込保険料相当額に抑えることで、年金受取額の保険料払い込み期間満了以後の返戻率が高くなる仕組みとしています」
要するに「死亡した場合の保険金は、元本をそのまま返すだけですよ」と言っているわけですね。つまり「保険機能を縮小する」どころか「保険機能はゼロ」ということです!来るところまで来た究極の商品と言うことでしょうか。少なくとも個人年金「保険」と名乗るのは語弊がありそうです。
もちろん厳密に言えば、本来、元本を下回るところを元本を丸ごと返してあげるのだから、その補填部分が保険金だ、ということになるのでしょうけれど。
いずれにしても運用に思いっきり振ったこちらの個人年金保険ですが、試算例を見るとこうなっています。
毎月3万円払い込んで10年間で360万円。
10年後の払い込み期間満了直後に解約すると返戻金は367万円ということですね。
返戻率としては367万円÷360万円=102.1%となります。
つまり10年で+2.1%ということになりますが、実際には10年間預けていた3万円や1ヶ月しか預けていない3万円もあるわけで、平均の預入期間はと言うとそのちょうど真ん中の5年ということになります。
5年で+2.1%ということですから、単純計算で言えば1年あたり+0.42%ということになりますね。とすると乱暴に言えば「平均5年0.42%の運用」と言えるわけで相応に魅力があると言えるかもしれません。
一方で注意点を挙げるとすれば、上記図のオレンジの線が示しているように10年未満で解約するとほとんどの場合で解約返戻金が元本を下回る「元本割れ」の状態となります。最初の数年はどうやら「解約返戻金がゼロ」、つまり1円も返ってこないということですね。
定期預金の場合はそうは言っても元本は戻ってきますのでこの点は要注意です。特に払込期間が10年と言った長期間になりますので慎重な資金計画が必要だと言えそうです。
注意点の2つ目は、預け先はあくまで民間の生命保険会社ですので、一定のリスクがあるということですね。もちろん、大手の生命保険会社の経営がいきなり傾いてしまうことはないとは思いますが。
注意点の3つ目は、おそらくこうした利回りでも生命保険会社からすれば赤字になる可能性があり、今後利回りがさらに低下する可能性があるということですね。上記条件は2016年4月現在のものですが、検討時には必ず最新の条件をご確認ください。
また、多くの生命保険がこうした円建て確定利回りの商品の販売を縮小していると思いますので、買おうと思っても買えない可能性はゼロではありません。買えないなら検討の余地は全くありません。
注意点の4つ目は、こうした利回りは契約時に確定となりますので、今後金利が上昇した場合には金利上昇メリットを得られない、ということになります。今、金利が最も低いのは間違いありませんが、そうした時期に金利を固定化させてしまうことに躊躇される方はおられるかもしれません。
もちろん、「当面、金利は上昇しない」、あるいは「金利はもっと下がる」とお考えの方にはメリットと言えますが。
そうした注意点を許容した上で、長期的な運用ポートフォリオの一部にこうした生命保険を入れておく意義というのはあるのかもしれませんね。
貯蓄系の保険商品にほとんど全く興味がない記者はプレーンな生命保険以外、利用経験はありませんが・・・。
参考になさってください。
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