質問 :新聞で金融緩和の枠組みが変わったということなのですが今一つ意味が分かりません。金利が上がるようなことも上がらないようなことも書いてありました。実際に金利はどうなるのでしょうか?
<40代/女性>
回答 : 読者の方から上記のような質問をいただきました。他に同様のお悩み相談があれば月1回程度の頻度で回答していこうと思いますので、もし質問したいという方はこちらの投稿フォームから送信してください。もちろん個人情報は不要です。
さて質問内容に戻りまして、2016年9月21日に発表された日銀の「金融緩和の枠組み変更」によって金利が今後、どうなるのか?という質問ですね。
確かに今回の変更は複雑だという指摘も目にしますが、預金者にとって最大のポイントは、「今後、金利は日銀によって積極的に操作されていく」という点です。
今までの金融緩和は、日銀が「国債をどれだけ買うか」という「量」を目標にしてきたわけですが、今後は「量」ではなく「金利そのもの」を目標にしていく、ということですね。
だとすれば日銀が「金利をどうしたいのか」という点が気になるわけですが、それをわかりやすく図示したものがこのグラフです。
今の実線の金利カーブが破線のカーブに移行していくわけですが、まず確定しているのが「−0.1%」のマイナス金利は据え置きということですから、短期金利は引き続き「マイナス水準」を維持するものと思われます。
他方で長期金利=10年金利は「0%」が目標となりましたので、今のマイナス水準からは上昇していくことになります。
そしてさらに金利上昇が期待できるのが10年超の20年や30年と言った「超長期」のゾーンですね。こちらは上記グラフの通り、はっきりプラスになっていくものと思います。
つまり今回の枠組み変更によって長期金利=10年金利を境に、
・10年未満はマイナス金利
・10年金利はゼロ金利
・10年超はプラス金利
という形になる可能性が高いということです。
その意味ではご質問のように「金利が上がるとも上がらないとも書いてあった」というのは正しいですね。「長い金利は上昇するけれども、短い金利は上昇しない」ということです。
預金者にとってみればこれまでの「金利低下一辺倒」ではなく、多少なりとも上昇するのであればありがたいことですが、ではこの「10年超はプラス金利」という追い風を利用しようと思えばどうすればいいのでしょうか?
教科書的に言えば20年もの・30年もの国債を購入すればよい、ということになりますが、個人向け国債が最長10年である点を踏まえれば実際にはちょっと難しそうです。国債市場から購入するとなると最低でも100万円や1,000万円が必要になってくるのではないでしょうか。
今後は個人向け国債も20年もの、30年ものが出るのかもしれませんがそれまでは・・・例えば国債ファンドを購入するのはアリかもしれません。このような金利カーブになってくればそうしたファンドも積極的に20年もの・30年もの国債を組みこんでくるのではないでしょうか。
また、生命保険会社などの超長期で資金を運用している会社も運用がラクになりますので、円建て運用タイプの生命保険の販売を再開してくる可能性が高そうです。利回りが良ければそうした保険商品を利用するのも良さそうですね。
さらに銀行も運用がラクになりますし、何もたとえば1年もの定期預金の元本を全て期間1年で運用する必要はないわけで、その一部をそうした超長期の国債で運用できるのであれば、「預金金利上昇の余地」も生まれてきますね!
もちろんそうは言いつつ、日銀が「大幅な金利上昇」を望むことはあり得ませんので過剰な期待は禁物ですが、それでも多少は上昇してくれることを期待したいと思います。
なお、2016年9月9月21日現在の国債金利は1ヶ月前と比較してこのように変化しているようです。
・1年 : −0.216% → −0.259%
・10年 : −0.086% → −0.025%
・20年 : 0.265% → 0.417%
・30年 : 0.325% → 0.514%
早くも、「10年未満は下がり、10年は0%に近づき、10年超は上昇する」という動きになっていますね!
まだ新たな金融緩和の枠組みがそこまで浸透していないとすれば、こうした金利変動はもう少し進んでいきそうです。20年もの・30年もの金利は1%には届かないものの0.6%〜0.8%くらいまでは上昇しますかね?
期待したいと思います。
ただし繰り返しになりますが、問題は、現状ではそう簡単にこうした20年もの・30年もの金利を活用した運用が用意されていないという点ですね。
上記の通りぜひ個人向け国債の20年もの・30年ものを販売してほしいと思います。
なお。
リスクとしてはこうした金利操作が、日銀の思惑ほど上手に進まない可能性があります。国債市場では基本的には自由な取引で金利が決まっていきますので、市場参加者の多くが日銀とは別の相場観から取引すればそちらに引っ張られていくことは十分考えられます。
それこそ日銀より高い値段で国債を購入する投資家が出てくれば、そちらに売買が集中しますので国債価格上昇=金利低下につながっていきます。
実際のところ上記の通り9月21日の長期金利=10年もの国債金利は−0.025%とゼロ%を下回って取引を終えているわけですからね。
中央銀行が金利そのものをコントロールしようとすることは歴史的に見ても、「結構な挑戦」である点は踏まえておいた方がいいかもしれません。
もちろんコントロールに失敗したとしても金利がこれまでの超低金利に戻るだけでしょうから、失うものはなさそうですが・・・。
参考になさってください。
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