質問 : 大変お世話になります。今年から20年間で4500万円のローンを背負って、念願の一戸建てを手に入れます。一つ目の質問ですが、200万円/年の返済スピードでも、まだ年間250万円の貯金が可能です。住宅ローン控除を受けながら、頑張って10年間での繰上げ返済を考えています。この返済方法で損が出るでしょうか?
二つ目の質問ですが、中古マンションを所有しておりますが、売却してローンを繰り上げ返済する手はありますが、その場合、住宅ローン控除を受けれなくなるかと思いますので、賃貸に出してみようと考えております。この考えでも損が出るでしょうか?宜しくお願いします。<50代/女性>
回答 : 読者の方から上記のような質問をいただきました。他に同様のお悩み相談があれば月1回程度の頻度で回答していこうと思いますので、もし質問したいという方はこちらの投稿フォームから送信してください。もちろん個人情報は不要です。
さて質問内容に戻りまして、前半の質問ですが、住宅ローンの通常返済を済ましても余裕資金が手元に残る場合、繰上返済した方が良いか、ということですね。これは住宅ローンの専門家に聞いていただいた方がいいような気がしますが、せっかくなのでお答えしますと以下のように考えれば割と簡単に結論は出ます。
・「住宅ローン控除メリット(1%)+余裕資金運用利回り」より住宅ローン金利の方が高ければ繰上返済した方がよい。逆に住宅ローン金利の方が低ければ繰上返済しない方がよい。
要するに低くない住宅ローン金利をわざわざ払ってまで住宅ローン残高を維持する必要があるのかどうか、ということですね。
現在のように住宅ローンの変動金利が1%を大きく下回る状況では「住宅ローン控除メリット(1%)+余裕資金運用利回り」が住宅ローン金利を上回る可能性が相応にあり、その場合は繰上返済せず、なるべく元本を維持し、住宅ローン控除メリットをフルに活かす方が得となります。
ただし、考慮しないといけない点が3つあります。
1つ目は、住宅ローン控除メリットが本当に住宅ローン残高の1%なのか、という点です。と言うのも控除するためにはそれ以上の税金を払っている必要があるのですが、実際にはそもそもそこまで税金を払っておらず、控除メリットを「使い残してしまう」人が結構おられるようです。
その場合の実際の控除メリットは1%より低くなるわけですから住宅ローン金利との逆転現象が起こる可能性は十分あります。もしそうなればもちろん繰上返済した方がよいですね。
2つ目は、比較すべきは「住宅ローン控除メリット(1%)+余裕資金運用利回り」と述べましたが、その中の「余裕資金の運用利回り」に過度に期待するのは難しいということです。
最近ではマイナス金利によっていよいよ運用が難しくなってきておりますので、実態に即した利回りを想定していただければと思います・・・早い話がこの「余裕資金の運用利回り」についてはゼロと考えておくのが無難ですね。とすると「繰上返済してしまった方がよい」と考えが変わる方もおられるかもしれません。
3つ目は、個人的にはこれが一番気になるところですが、確かに理論的には「住宅ローン控除メリット(1%)+余裕資金運用利回り」の方が住宅ローン金利よりも高ければ繰上返済しない方がよいわけですが、しかしそこで「浮いた資金」をきっちり、住宅ローン控除の効果がなくなる10年後まで定期などに預け、1円も手をつけない忍耐力が求められることになります。
正直・・・これは結構ハードルが高いのではないかと思っています。お金があれば使ってしまうのが人間の性ですね。特に住宅ローン返済期=子育て期ですから、子どものためとなればついつい資金を出したくなるのが親心です。
それが悪いとは言いませんが、当初の目論見が狂ってしまうわけで、それをリスクと捉えるならやはり確実に繰上返済してしまった方がよいですね。
そうしたわけで記者自身の考えとしては、計算上は「住宅ローン控除メリット(1%)+余裕資金運用利回り」の方がメリットが大きそうだとしても、あまり細かな違いに拘泥せず、せっせと繰上返済してしまうことをお勧めしたいと思います。
どんどん住宅ローンの残高が減り、利息が減り、返済期間が短くなっていくのは精神衛生の上でも良いですからね。
次に後半の質問ですが、所有している中古マンションを売ってしまう方がいいのか、それとも賃貸に出す方が良いのかということです。
この質問を一般論で返すのはなかなか難しいですし、そもそも住宅ローン控除を受けたいのであれば賃貸に回す必要もないような気がしますが、それはさておき簡略化するとこういうことでしょうか。
A:物件の現在の売却価格+住宅ローン繰上返済メリット
B:10年間の賃料+10年後の物件の売却価格+住宅ローン控除メリット
AがBより大きければ今すぐ売却した方がよいですし、逆にBがAより大きければ賃貸に回した方がよい、ということになります。
ただ・・・残念ながら、「10年後の物件の売却価格」を正確に把握することは困難です。
賃料についても期待通りの金額になる保証はありません。ずっと入居が続くと考えるのも非現実的ですしね。
そのように考えると・・・こちらもあまり難しいことは考えず、エイヤっと売ってしまって住宅ローンの繰り上げ返済に充てる方がベターな気がします。
特に最近は中古マンションの不動産価格が堅調でしたので売るにはよいタイミングというのもありますね。
そうしたわけで、あくまで個人の一意見ではありますが、相談者の方への回答をまとめると、
「中古マンションを売却してでも住宅ローンをできる限り繰上返済した方がよい」 ということにしておきたいと思います。
その方がリスクが少なく確実だ、ということですね。
参考になさってください。
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