当方のサイト上でアヤシイ投資商品の広告が表示されているのを見たのをきっかけに、これまで連続してそうしたグレー商品の危険性について素人なりに分析してきました。
そして今回取り上げるのはvertexという不動産会社の広告です。「サラリーマンの僕が1年5,000万円の資産を実現できました」ということで何とも勇ましいですが、ただ推奨しているのはあくまで「ローンを組んでのマンション投資」ですので、その裏には当然、同額の負債があります。
つまりは「1年間で5,000万円の借金を実現できました!」とほぼ同義であり、何にも羨ましくありません。
問題はそれだけの投資をしながら、ちゃんと儲かるのか?という点ですね。
というわけでページを読み進めるとこういう記述が出てきます。
そもそも最初から「1万円の持ち出し」ということですから、やはり何も羨ましくありませんね。わざわざ生活を苦しくしているようなものです。
また「ローン完済後は5,000万円の資産があなたの手元に」というのも「嘘」です。
なぜなら30年もすればマンションの価値は半値くらいに下がっていてもおかしくないからですね。
毎月1万円の持ち出しをして、30年後には2,500万円の含み損を抱えているかもしれない、ということです。
とは言いつつ、せっかくなのでこの投資をした場合の本当の収支はどれくらいなのか考えてみたいと思います。5,000万円のマンションで年間120万円の家賃収入ということですから、表面利回りは2.4%ですね。
まずローンが完済できる、「30年間」の収支はこのように計算できます。
<収入>
・家賃収入:2,676万円 ※物件価格の2.4%、空室率90%
<費用>
・建物価値の目減り:1,740万円 ※50年後に建物が無価値になるとして算出
・支払い利息:1,653万円 ※金利2%
・固定資産税:300万円 ※年10万円
・修繕費:300万円 ※10年に1回、100万円
・修繕積立金:720万円 ※月2万円
<収支>
−2,037万円の赤字
見事な赤字ですね・・・。
とは言いつつ30年後にはローンが終わりますので、ウハウハな賃貸生活が待っているはずです。という訳で「50年間」の収支を試算してみます。
<収入>
・家賃収入:3,812万円 ※物件価格の2.4%、空室率90%
<費用>
・建物価値の目減り:3,000万円 ※50年後に建物が無価値になるとして算出
・支払い利息:1,653万円 ※金利2%
・固定資産税:500万円 ※年10万円
・修繕費:500万円 ※10年に1回、100万円
・修繕積立金:1,200万円 ※月2万円
<収支>
−3,041万円の赤字
全然ダメでした・・・全くこうした試算をせずに広告を作っているのですかね?
真偽は分かりませんが、トータルリターンを検証しているようには思えないことを勘案すれば、この会社を利用して儲けさせてもらえることはなさそうです。
ちなみにこの赤字の理由はもちろん2.4%という低い表面利回りであって、新築のワンルームマンションの平均利回りは「3%後半〜4%前後」という記述を見つけましたので、「4%」で計算すると「50年間」の収支はこうなります。
<収入>
・家賃収入:6,354万円 ※物件価格の4.0%、空室率90%
<費用>
・建物価値の目減り:3,000万円 ※50年後に建物が無価値になるとして算出
・支払い利息:1,653万円 ※金利2%
・固定資産税:500万円 ※年10万円
・修繕費:500万円 ※10年に1回、100万円
・修繕積立金:1,200万円 ※月2万円
<収支>
−499万円の赤字
んーこれでも黒字転換しませんね・・・。みんながマンション投資で損をするのはこういう理由からなんですね。
というわけで最後に「全額自己資金」で投資するとなるとこうなります。
<収入>
・家賃収入:6,354万円 ※物件価格の4.0%、空室率90%
<費用>
・建物価値の目減り:3,000万円 ※50年後に建物が無価値になるとして算出
・固定資産税:500万円 ※年10万円
・修繕費:500万円 ※10年に1回、100万円
・修繕積立金:1,200万円 ※月2万円
<収支>
+1,154万円の黒字
ようやく黒字になりましたね!結局のところ不動産投資は「借入をしてはいけない」ということなんでしょう。
言い換えればこの場合は5,000万円もの自己資金が必要になるということですが・・・。
ちなみに5,000万円×50年=1,154万円のリターンということは単利で計算すると「年0.46%」ということになります。
単純には言えませんが、J−REITの3年や5年のリターンが5%前後ということを考えれば、REITに投資した方がはるかに良さそうです。
※日本Jリートオープン(毎月分配型)の運用成績。「年率」です。
不動産投資は失敗できないだけに、慎重にも慎重な判断をお勧めします。
では最後に、いつもご案内しているアヤシイ運用を見分けるチェックポイントはこうなっています。
1.リスクとリターンは連動しており、たとえば毎年5%のリターンなら毎年4%といった損失が、毎年10%のリターンなら毎年9%といった損失が発生する可能性があり、そうした損失発生の可能性を隠しているのであれば詐欺の可能性がある。
2.もし本当にローリスク・ハイリターンのビジネスがあるなら銀行が1%〜2%といった低利で喜んでお金を貸してくれるはずであり、それをわざわざ手間暇かけて個人から高金利で資金を集めるというなら詐欺の可能性がある。
3.「マイナス金利」で運用難の今の時代に本当に有利な商品ならみんなが飛びつくはずであり、わざわざ広告しないといけないのは詐欺の可能性がある。
加えてこちらの記事も参考になさってください。
>>><備忘録>怪しいファンド、投資案件の見分け方
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